家出少年
その日の夜、私は部屋で先生からいただいた新シリーズ「王宮侍女が覗いた扉」の新刊をかぶりつくように読んでいた。
「ああ…先生この新シリーズも面白いです。最高です!」
そんな至福の一時を過ごしていると、ノックの後、「ジェンナ様、シャーラン様が至急お会いしたいといらっしゃいましたが、いかがいたしましょうか?」とメイドさんが呼びに来てくれた。
シャーラン君がこんな時間に?
「はい、わかりました。すぐに用意します。あっ先生は今お仕事中ですか?」
「はい、執筆中のようですがお呼びしましょうか?」
「お時間が取れるようでしたらお願いします」
「承りました」
私はベッドから起き上がると普段着に着替え下に降りた。
シャーラン君は真っ青な顔をして玄関に立っていた。
「どうしたのシャーラン君?何かあった?」
「俺、家出して来た!このままじゃクゥが運送ギルドに殺される!」
「クゥって、シャーラン君が乗ってる青飛竜の事だよね?」.
そこへ先生が現れた。ただならぬ様子のシャーラン君を見て、先生はメイドさんに温かいお茶を用意するよう命じ、シャーラン君を応接室に招き入れた。
「先生!里の壊れた家を修理するのにお金が足りないから、クゥを運送ギルドに売るって叔父さんが言うんです!だけど前に運送ギルドの仕事をした事があって、あいつら身体の小さなクゥに赤飛竜と同じくらい荷物を載せようとして、クゥがへばって倒れると、殴ったり蹴ったりしたんです!
あんな奴の所に売られたらクゥは死んでしまいます!
俺、クゥを助ける為なら何でもします!クゥを助けてやって下さい!」
シャーラン君は、涙をポタポタ落としながら先生に懇願した。
「そう、叔父さんは運送ギルドと手を組もうとしているのね。自分が男爵になるって言い出したのも、運送ギルドに煽られたのかしら?」
「えっ、運送ギルドと叔父さんが手を組んだ?」
私とシャーラン君は驚いて先生を見つめた。
「ちょうど良かったわ。私も族長と話がしたかったの。族長も交えてお話合いしましょうか。
「そう言えばシャーラン君、こんな真っ暗な中クゥに乗って来たの?」
「あっ…はい、クゥを取られると思ったら何も考えられなくなって…。今晩は満月だから行けるかもって飛び出してきてしまいました。あっ、クゥは発着場の廐舎で預かってもらいましたから大丈夫です」
「飛竜は夜目が効かないんだから、夜飛行するのは危険な事なのよ。今後は絶対に夜飛んてはダメですからね!」
「すみません。これからは絶対にしません!」
「わかったら、今晩はここに泊まりなさい。明日こちらから5人乗せて里の族長の所に行きたいから、赤飛竜を連れて来てくれるかしら?」
「はい、わかりました!」
シャーラン君は、その後メイドさんに連れられて客室に入った。
来た時に真っ青だった顔色も戻っていたので、もう大丈夫だろう。
明日、先生は誰を連れて里に行くのだろう?
私も連れて行って欲しいな…。未成年者はやっぱり蚊帳の外かな?
私は物思いにふけりつつ眠ったのだった。




