↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
In floreー無彩色の君へ  作者: ちょこまる。
幼少期編・王都での出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/28

27.何気ない一言(アキレア視点)

「アキレアは、幸せね。」


 俺の服の裾をギュッとしたまま、アリスが言葉を続ける。


「みんな笑顔だもの。アキレアのこともお兄ちゃんって呼んでいて…大好きなのが伝わってくるわ。」


 空色の瞳を和らげながら言葉を紡ぐ彼女から、目が離せない。


「それに、アキレアも。みんなやこのお家のことが大好きなんでしょう?」


 嬉しかった。今まで誰にも分かってもらえなかった俺の気持ちを、分かってくれたことが…。その気持ちと、感謝を伝えるのがやっとで、なぜか目を合わせられなかった。


 ◇◇◇


「「…ぃちゃん。アキレア兄ちゃん!」」

「うわぁ…!?」


 心地良い夢見の中、突然の大声に、慌てて身を起こす。声の先を見れば、弟妹が俺の横にいた。


「おはよう!もう朝だよ!早くご飯食べないと!」

「そうだよ!僕たちが全部食べちゃうよ!」

「ははっ、おはよう。起こしてくれて、ありがとな!」


 俺の言葉に頷いた二人は、笑顔で駆け出す。そうして「アキレア兄ちゃん、今起きた!」「ねぼすけ〜!」と大声で、院のみんなに言いふらしている。朝から元気な姿を見て、思わず笑みが溢れる。


「…にしても、最近は同じ夢ばっかだなぁ。何でだろ?」


 身支度を整えながら思い浮かべるのは、今朝の夢。


「…よく分かんないけど…まぁ、いっか!」


 ──“考えても分からないなら、行動が一番”だよな!今日の手伝いが終わったら、会いに行こう!


 身支度を終えて食卓に向かうと、みんなが待ってくれていた。「早く早く」と急かされて、早足で席に着き、一緒に食べ始める──いつも通りの明るい一日が始まった。


 ◇◇◇


「ふぅ…少し休憩しようぜ!」


 犬達の散歩の手伝い中、俺は広場に立ち寄った。


 ──散歩は楽しいけど、この前みたいになったら大変だもんな…。


 広場のベンチに座りつつ、追いかけっこのような散歩をし続けた末に、犬達とグッタリとしてしまった日のことを思い出す。隣の犬達は勢いよくガブガブと水を飲んでいる。口周りの毛が濡れてもお構いなしだ。その様子に笑いつつ、もふもふの毛を撫でていると、パタパタとこちらへ駆け寄る足音が聞こえた。


「アキレア、おはよう!」

「アリス!ララさん!おはよう!」

「おはようございます、アキレアさん。」


 挨拶を終えると、アリスは俺の隣にストンと座り、顔を覗き込んでくる。


「今日も朝からお手伝いしてるの?」

「あぁ。食堂(タヴェルナ)のおばちゃんから、頼まれたんだ。うちの犬達は元気いっぱいだから、たくさん散歩してほしいんだってさ!」

「わぁ、いいなぁ!…その、もしよかったら、ワンちゃん達…なでなでしてもいいかしら?こんなに大きなワンちゃん、触ったことがなくて…。」


 そう口にするアリスは、キラキラした瞳を犬達に向けていた。無意識なのか「もふもふ…。」と呟き、触るのを我慢するように、胸元で手をいじいじしている。俺は、思わず吹き出す。


「ハハッ。そ、そんなに触りたいのか?…いや、そっか、アリスは動物が好きだもんな!みんな良い子だから、大丈夫だぞ。」

「ほ、本当?やったー!!」


 俺の言葉を聞いた途端、アリスが花開くような笑みになった。犬達に手を伸ばすと、撫でられると思ったのか、犬達から彼女の手に鼻を擦り付けている。


「わわっ、か、可愛い…!」

「こいつら人懐っこいからさ。たくさん撫でてやってくれ。きっと喜ぶよ。」

「ふふ、アリス良かったですね。」

「う、うん!」


 アリスがニコニコ笑顔で犬達を撫でる。犬達も構ってもらえるのが嬉しいのか、尻尾をブンブンと振って懐いている。その様子を見守りつつ、ララさんに尋ねた。


「今日も、リリーの所に?」

「ええ、そうなんです。アリスはリリーさんが大好きですから。それに、パン作りの練習もしないといけませんからね。」

「パン作り…。そういえば、あの日余ったアリスのパン、家族みんなで食べたよ。」

「ええ!?」


 何気なく口にした言葉に、犬達を撫でていたアリスが目を丸くして、バッと俺に近寄る。俺を見上げる瞳が不安気に揺れている。


「あ、あんなに固かったのに、みんな、大丈夫だったの?」

「ぁ、ああ。スープに浸して食べたから、大丈夫だよ。みんな美味しいって言ってたよ。ありがとな。」

「そ、そうなのね。良かったぁ。」


 ホッとしたアリスが、空色の瞳を和らげて微笑む。途端、顔が熱くなった。


 ──まただ。最近、すぐ顔が熱くなるんだよな。…熱かな?元気なのになぁ。


 そう思いつつ、ふと、今朝見た夢を思い出した。


「そういえばさ。今日、アリスが夢に出てきたんだ!」

「え、そうなの?」

「あぁ!最近よく夢に出てくるんだよ。今日も会いたいと思ってから、会えて嬉しいぜ!」

「わぁ、そうなのね。私も、アキレアに会えて嬉しいわ!それに、パンも美味しく食べてくれたなんて…嬉しい。アキレアや弟さん達のためにも、もっと美味しいパンを作れるように頑張るわ。」


 “アキレアや弟さん達のために” ──俺や弟達を大切に想ってくれている言葉に、胸が温かくなる。


 ──アリスは、いつも嬉しい言葉を言ってくれる。


 自然と笑みが溢れる。初対面の時やアキレアの花を渡した時、何より、俺の家に来た時の会話を思い返す。

 アリスが俺の家に来ることになった時、俺は内心焦っていた。折角仲良くなれたアリスも、他のみんなと同じように、可哀想なものを見るような目で、俺達を見るようになるんじゃないか…そんな思いが過ったからだ。けれどアリスは、そんな不安を晴らしてくれた。笑顔で「アキレアは、幸せね。」と言ってくれた。その何気ない一言が、この上なく嬉しかった。


 ──俺もアリスみたいに、誰かの不安を晴らすような、そんな言葉を伝えたい。


 目の前の妹分を、まっすぐに見つめ返す。胸にドンと手を当てて、満面の笑顔で口を開く。


「失敗しても安心してくれ!俺と弟達みんなで、美味しく食べるからさ。」


 アリスは目をパチクリさせてから、小さく笑った。


「ふふ、それなら失敗しても安心ね。ありがとう、アキレア。」

「おう!」


 ララさんに見守られる中、俺達は笑い合った。そうして、リリーの家までの道中、一緒に犬達の散歩をした。二人と別れてからは、不思議といつも以上にやる気が漲って、手伝いが捗った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。