第一話 追放、白魔道士の少女!
今晩は。
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オリオン・ドリオンの塔、それは地上321階と言われている巨大な塔だ。
この塔は170階で二つに分かれ、高い方がオリオン、低い方がドリオンと呼ばれている。
ドリオンは198階でどちらの塔も、今だ人類は攻略していない。
ドリオンの最上階には最高の武器が、オリオンには世界を統べる力が眠っていると言われている。
誰が作ったのか、いつから存在しているのか、まったく不明の超古代遺跡。
それがオリオン・ドリオンの塔だ。
そしてこの世界にはもう一つ有名な塔がある。
それは、最上階は星の世界に繋がっていると言われる伝説の塔、ラインハトルの塔だ。
こちらは伝説で、塔の存在自体が確認されていない。
記録の中にしかない塔なのだ。
ある学者は、実はラインハトルの塔は、オリオン・ドリオンの塔のことで、ラインハトルの塔は実在しない、と言い、またある賢者はオリオンの最上階には、ラインハトルの塔の鍵が眠っていると言う。
諸説あるが、このラインハトルの塔はどこにも見当たらない。
長寿のエルフも、大地に詳しいドワーフも、森のオークも知らないのだ。
いや、そもそも妖精族は塔に感心を持たないのだ。
そう、塔に挑んでいるのは人類ばかり。
ちょっとそこのドワーフさん、あんた何故攻略に参加しないんだい?
「え?世界を統べる力があるって?統べてどうすんだよ、面倒くね?」
「そうそう、それより日々の暮らしだよ」
そう答えるドワーフの夫婦。
そこのエルフさんは?
「塔の攻略?」
あ、軽蔑の視線?
「知っているのか?あの塔は呪いの塔だぞ」
え?
「あの塔は罠だ、いったい、幾人の戦士達があの塔で命を落とした?」
命?なかりの人達が命を落としたのでは?
「あの塔は欲に塗れた者を喰う、巨大な魔物だよ」
魔物ですか?
「そうさ、塔内の魔物は倒しても、ある程度時間が経過すると復活し続ける、この意味分かるか?素材を無限に手に入れることができるんだぜ、見ろよ欲深い人族がまた塔に挑んでいる」
そう、今日もその塔に挑む無数のパーティーが!
「さて、何組生還出来るか。俺達エルフは塔の攻略よりも、森での狩りや木の実の採取を優先させるね」
ラインハトルの塔についてはどう思います?
「……意味が無いね、では失礼するよ」
森に消えていくエルフ。
森には静かなエルフの村があるのだ。
そしてこちらは騒がしいオリオン・ドリオンの塔。
塔の周囲には数万人の人々が暮らしている。
あらゆるモノが揃って、混沌としている塔の周囲。
人々はその街を欲望の街、ブンドルと名付けた。
このお話しは、ブンドルの街から始まる。
ずるずる、トボトボと白魔道士が歩いている。
唇が切れ、目の周囲は青い。
服もボロボロでスタスタと鼻血が溢れている。
「……うっく……ひっく……」
身長は150センチほど、その身長より大きな木の杖を大地に刺しながら歩いている。
黒い髪は酷く痛み、埃まみれだ。
どう見ても暴行された後。
しかし誰も声を掛けないし、すれ違う人々は気にもしないようだ。
それどころか、避けて通っている。
……あいつだぜ……
……ああ、例の白魔道士……
……ひでぇヤツだよなぁ……
「……うっ……」
……最悪じゃねぇか……
……もう誰もパーティーに誘わないだろうなぁ……
白魔道士は隠れるように大通りから裏路地に入り、小さな水場に辿り着く。
ここ、ブンドルの街は湧き水が多いのだ。
エルフの話しによると、これも罠なのだそうだ。
良質の飲み水。
人々を集め、塔に挑ませている、とのことだ。
しかし、一体、誰が何のために?
勿論、エルフは知らないし、知ろうともしないだろう。
白魔道士が水場に訪れると、そこにいた数人の人々はサッ、と水場から消えた。
(……頑張った……つもりだけど……うっく……もう、ダメかなぁ……)
そう彼女は先程パーティーをクビになったのだ。
それどころかパーティーのリーダーからボコボコにされ、メンバーから殴られ、蹴られ、ツバを吐きかけられ、叩き出されたのだ。
(は……はやく……回復……MP……MP……)
振るえる血だらけの手で、水をすくい口元に持ってくる。
しかし折れた指は上手く動かず、水を飲むことが出来ない。
「……う……う……痛いよう……」
白魔道士ユトラン、15歳の女の子。
両親は塔の攻略で死んでしまい、孤児である。
回復魔法と弓を得意とするクライマーズだ。
クライマーズとはオリオン・ドリオンの塔に挑む冒険家の総称。
冒険家達は攻略した階数をその総称の後に付け、自己紹介する。
例えばこの白魔道士ユトランだったら、クライマーズ・48・白魔道士ユトラン。
48階まで攻略した、となる。
現在のブンドル騎士団攻略階数が70階までであり、この49階は強者の階数と言っていいだろう。
遙か昔、ブンドル騎士団が280階まで到達したと記録にあるが、今現在のブンドル騎士団は70階までだ。
そしてこの70階のスコアは、現在の最高スコアである。
普通は20階まで行ければ一財産あるのだ。
ただし、生還出来れば、の話しだ。
彼女は49階の攻略戦に失敗し、パーティーは総崩れになった。
そして地上帰還と共に、白魔道士としての責任を問われたのだ。
結果は、この現状である。
折れた指を見つめ、涙を流す白魔道士ユトラン。
(の……飲めない……な、ならば……)
湧き水に手を付け、呪文を唱える。
魔力に満たされた湧き水は、ユトランの呪文に反応し、その指を再生し始める。
そう、彼女はMPゼロの状態なのだ。
魔力であるMPは自然回復するのだが、白魔道士や魔法使いはその消費量が激しいのだ。
そしてこの湧き水は良質の水であり、MPを回復させる唯一の水でもある。
次回サブタイトルは 第二話 49階で です。
週一回か二回の投稿になると思います。
今回は第一回目なので連続投稿です。
第二話は30分後くらいに投稿予定です。
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