第三十一話 討伐成功
最終話です。
先程までの激闘が嘘のように辺りが静まりかえった。
「やったの……ね……?」
「勝ったの……か……?」
倒れて動かなくなった魔王の元に冴太が歩み寄り、ゲームでも行っているルーティーン。
魔王の横で剣を振り回し、その剣を地面に刺す。
が、その剣は地面には刺さらず、根本から剣が折れてしまった。
それはそうだ。冴太の剣はただのプラスチック製の剣なのだから。
沈黙の中、シャーリーは折れた剣を拾って驚愕した。
「えっ!? あんた、この剣なんなの? これで戦えるわけ…………」
シャーリーは思った。だからなのだ。だから冴太は前に出て戦わなかったのだと。こんな剣では魔王に傷すら与えることが出来ない。
「あんた! 剣が無いなら言いなさいよ! バカなの?」
「まぁーいいじゃないか。無事勝ったんだから」
冴太が辺りを見回し、全員の無事を確認した。
「もう……もう大丈夫なの?」
戦闘中、柱の影から冴太に言われた通り、一歩も動かず頭を抱え震えていた涼花がようやく頭を上げた。
「あんた! 何で来たのよ! 待ってなさいって言ったでしょ!」
シャーリーが涼花に怒りを見せた。
「だって……みんなが……こんなことになるなんて……」
涼花が親に怒られた子供の様にしょんぼりした。
「まぁ、無事なら良かったわ! 涼花、あんたの回りにはこんなに凄い人が居るんだから一人で抱えず、頼ったら良いのよ」
シャーリーの言葉は、涼花の奥底に刺さる物があった。
幼馴染みの冴太と悠都には、子供の時のあの事件以来、悲しい表情を見せまいと、喜怒哀楽の哀を見せなかった。
私のせいで歯車が狂ってしまったと思っていたのだ。
それは悠都も同じく、もっと強ければと。
冴太も、逃げなければ、強ければと。
しかし、そんな心配はもういらない。
辺りを見渡すと、これ程頼りになる人達が居るのだ。
全員の視線を受けた涼花は、隠すことはせず、大声で泣いた。
「ごわがったょ――――――」
涼花の頭をシャーリーが撫でた。
「歩実、最高の防御魔法だったの。これからずっとその子と付き合って行くの。歩実なら出来るの」
「クルルちゃん……最初こんなことになるって思わなかったけど……これからも……そばに居てくれるよ……ね?」
歩実の言葉にクルルは沈黙した。
魔王を討伐した今、あっちの世界に居る理由が無くなった。しかし、あっちで過ごした一週間はクルルにとって、忘れられない一週間になったのは間違いない。
「生きてる限り、いつでも会えるの。今度は遊びでそっちに行くの。その時は歩実、よろしくなの」
歩実はクルルに勢いよく抱きついた。
言葉などいらない。それだけで歩実の心は満たされたのであった。
「速水、最後の剣捌き良かったぞ」
「何を今さら。今ならルベルトに勝てる気がするよ。どうだ、一戦してみないか?」
そんな冗談を挟みながら二人はゆっくり剣を重ね合わせた。
「今日は止めておこう。また今度再戦しようじゃないか」
ルベルトの言葉に速水は真剣な表情で再戦を申し込んだ。
「わかった。勝ち逃げされるのは尺だが仕方ない。今度は必ず勝ってみせる」
速水は、戦闘前に借りた剣をルベルトに手渡そうとしたが、ルベルトは剣を受け取らなかった。
「その剣は預けておく。次の模擬戦で俺に一太刀でも与えることが出来たら受け取ってやるよ」
ルベルトは挑発するつもりで言ったが、逆に速水に挑発を受けることになった。
「そうか、向こうに戻ったら同じ剣を探さないといけないな。一太刀以上与えてしまいそうだ」
それ以上の言葉を交わすことなく、二人は背中を向け歩いた。
速水、歩実、涼花が、冴太の元に集まった。
「冴太、中々いい指示だったわよ!」
「冴太、感謝する」
「ありがとうなの」
三人が最後、冴太に感謝を伝えた。
「何を今さら……俺を誰だと思ってる」
「そんなの最初に聞いたわよ! 勇者でしょ!」
最後にルベルト、シャーリー、クルルと握手を交わし、クルルが転移門を出現させた。
「そうだ! 俺は勇者だ!」
冴太の捨て台詞と共に、四人が転移門の中へと消えていった。
こうして、一週間と短い期間だったが、異世界勇者とキャラ名勇者のおかしな日常に幕を閉じた。
短い間でしたが読んでいただきありがとうございました。
この小説で色々な経験が出来ましたので、
次回作はこの経験をいかして、もっと面白いのを書けるようにがんばります。
次回作はハイファンタジーの一人称視点で書こうと思います。




