探られる残酷。
ダークトーンで纏められた真昼さんの住むお部屋には何度か来たことがあるけど、
私が両親と住む家とはまるで違って、
つい目が泳ぐのを押さえられない。
お友達の家に頻繁に遊びに行く人なら、こんな恥知らずな態度は取らないんだろうけど、
私には年の近い仲良しが皆無で、そんな経験がまるでなく
…両親やお爺様にくっ付いて"客人"として足を踏み入れる他人様の家(主に純日本家屋か、洋館風)とは趣が全く違う、
独り暮らしの大人の女性のマンションの一室に、興味津々だった。
インテリアにも拘りがあるらしく、飾り棚の中身や壁に掛けられた絵も来る度変わっていて、
そういうのも気になってしまう。
しかも好きな人の家、キョロキョロしてしまうのは当然よ。
私は何とか一点に集中しようと、ソファの上で丸まる白猫の長い毛に指を埋める。
「夜子ちゃん、楽にして」
そう言われて私は広いリビングをぐるりと囲む、水族館の水槽の様に大きな窓から外を眺める。
高層マンション上階から見降ろす夜景は、まるで自分が星空に浮いているかのような感覚に陥らせた。
「あ、東京タワー。」
私が感激して声を漏らすと
一段上がってステージ状になっているフロアに位置するアイランドキッチンで、お茶を淹れている真昼さんが笑って言った。
「夜子ちゃんは、ここに来たの初めてじゃないのに。」
「夜に来たのは初めてだよ、それにこんな綺麗な景色、何度見ても感動する。」
「ふふ……わたしはもう慣れてしまったみたい。」
真昼さんは、ティーポットとカップ、お菓子をトレイに乗せて運んできてくれた。
「そんなに感動するなら、今度もっと素敵な場所に連れていってあげたいな。」
私はその言葉で既に感動したけど、あんまり調子に乗ると痛い目を見そうな気がして少し怖かった。
手を上げて喜びたいのを誤魔化すために、ちょっと作法がなってないけどカップの中の熱いお茶を何口も飲む。
「――真昼さんは色んな場所に行ってるもんね、でも私って全然知らないから。
海外も行った事ないし。」
「そう、でも何処へ行くかより、誰と行くかがほんとうは大切だと思うよ。
ねえ、もしかしたら、夜子ちゃんは、
もっとお友達と一緒にいる時間を大事にした方が良いのかもしれない。」
わたしよりも。
真昼さんはそう言って一旦言葉を止めた。
「今日の撮影のこと、本当に楽しそうにお話してくれて、夜子ちゃんが幸せなのが伝わった、けど
夜子ちゃん、わたしといると苦しいでしょう。」
真昼さんは長い睫を伏せて、頬に影を作った。
ああ、やっぱりそうなんだ、と思う。
ブルーノを忙しなく追っ払って私を部屋に呼んでくれたのは、こういう話をする為だったんだ。
ぬか喜びさせるくらいなら、タクシーに乗って帰ればよかったんだ、なんてどうでも良いことが頭をよぎる。
「苦しいのは、そんなの、決まってるよ。」
私は呟いていた。
「真昼さん、本当は解ってるんだよね?
私がどう思っているか、解ってるよね?」
真昼さんを見据えると、彼女はうっすら微笑んで言った。
「本気?」
私はもう、どうにでもなれ!!と晴ちゃんばりの勢いの良さで
「本気。」
と口走っていた。
途端に足元がぐにゃりと歪んで、立っていられなくなった。
張り詰めた神経が麻痺して、身体に影響を及ぼしたのかもしれない。
こんな時に……
…………でも、大丈夫だよね………
真昼さんは、助けてくれる。




