表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一般人は冒険などしたくない  作者: ゆーらん
8/22

生成をしよう

 朝寝ていた客室へ帰ってきて、マリアにお茶を入れてもらって一息つく。

 一人で考えたいことがある、と伝えると、軽いお菓子類を置いていってくれるマリアは本当に出来たメイドだ。ありがたく思いながらクッキーを一つつまむ。

 それにしても、と落ち着いた頭は考えた。違う世界であることが確定してしまったがゆえに考えてしまったというべきか。


(トラック転移とかじゃなくてマジでよかった……)


 話の頭によくある「トラックに轢かれて云々」という展開だが、伊織としては読むたびに運転手の安否こそが心配になっていた。

 転生モノならば当然そこで死んだ主人公がいるわけで、運転手には過失致死がついてしまう。そうなれば免許は取り消しだろうし、それどころか欠格期間も付くのではなかったか。それに刑事責任による前科もつけば民事責任による慰謝料も発生するだろう。

 運転手がこれにより社会的に完全に殺されるか否かは分からないが、その後の人生は明るいものではあるまい。

 危険運転が原因ならば主人公に同情するが、大体の場合はぼんやりしていて轢かれているのだから感情移入がしにくい。そんなことが引っかかる面倒くさいタイプなのだ。


 話を戻そう。


 アレクシスに身の振り方を考えるとは言ったものの、大まかな方針は実は決まっている。先ほどの感じから判断すると、あれは信用してもいいタイプであろうと伊織は思っていた。

 クリフォードに対しては苦手意識しかないが、あれはあれで嘘はつけないタイプだろうという評価をした。もしあれが演技であるというのならお手上げだ。

 どちらにせよ、この世界では身寄りもなければ味方もいないのだ。リスクは承知でもここを拠点にするための対価を考えるべきだろう。


 とりあえずは朝中断していた自分のスキル確認だ。

 確か剛力だけ作成、セットして画面を閉じたのだったか。


(ひとまずは全種類作ってみるか)


 作成画面を開いてみると、生成可能なスキルがずらりと並ぶ。朝生成した剛力だけは『Lv.2』と表示されている。

 上限が5か10か、はたまたもっと上なのかは知らないが、先に種類を確認しようと後回しにすることにした。


【剛力】【金剛】【疾風】【叡智】

 このあたりは同じカテゴリにあるので基礎ステータス強化であろう。自分のステータス項目で照らし合わせると、【剛力】が力であるから、残りの【金剛】が体力、【疾風】が素早さ、【叡智】が知力であろう。


【金剛】Lv.1をMP:50で生成

【疾風】Lv.1をMP:50で生成

【叡智】Lv.1をMP:50で生成


 全てをLv.1にしたことで【基礎能力の統括をします】という自動メッセージが小窓で現れ、新たに【基礎能力】というスキルが現れる。これによりスキルセットの枠ひとつで四つの基礎ステータスが上げられるらしい。

 統括されたスキルだけあって、セットするのは合計MP量と同等らしいのだが。

 とりあえず200MP払ってセットする。


 基礎ステータスには運の項目があるが、これだけは本人の天性のものなのだろう。ちなみに伊織はこれもレベルと同じく中途半端に高い。

 さっくりと全種を生成したところで他に目を向ける。


【魔術耐性】カテゴリに【地耐性】【水耐性】【火耐性】【風耐性】

【物理耐性】カテゴリには【物理耐性】のみが。

【状態異常耐性】カテゴリには【毒耐性】【麻痺耐性】【混乱耐性】があった。


 魔術耐性とか物理耐性とか、低コストで実現できるならば喉から手が出るほど欲しいスキルであるのだが、状態異常耐性の項目を見たところで我に返ってしまった。

 別に伊織は前線で戦おうなどとは思っていない。どこか雇われ支援で食っていければいいかな程度の考えである。

 前線に出ないということが危険を完全に回避できることかと問われれば、それはそれでリスクがあるだろう。

 この国の性格が分からないので断言はできないが、あらゆる手で斎に迫った前科もあるので何を盛られるか分かったものではない。


(さすがにそんなことで色々と散らしたくないし、退路確保からだな)


 色々と、というよりも命以外の何かであるのは必至であろうな、と苦い顔をする。

 MPなど気にするべくもない。基礎ステータス上昇と比べると倍ほどのコストがかかるが、これは最初に限界まで上げてしまうべきだ。


【毒耐性】Lv.1をMP:100で生成

【毒耐性】Lv.2をMP:200で生成

【毒耐性】Lv.3をMP:300で生成

【毒耐性】Lv.4をMP:400で生成

【毒耐性】Lv.MAXをMP:500で生成


【麻痺耐性】Lv.1をMP:150で生成

【麻痺耐性】Lv.2をMP:300で生成

【麻痺耐性】Lv.3をMP:450で生成

【麻痺耐性】Lv.4をMP:600で生成

【麻痺耐性】Lv.MAXをMP:750で生成


【混乱耐性】Lv.1をMP:200で生成

【混乱耐性】Lv.2をMP:400で生成

【混乱耐性】Lv.3をMP:600で生成

【混乱耐性】Lv.4をMP:800で生成

【混乱耐性】Lv.MAXをMP:1000で生成


 レベルが上がるごとに倍々で消費MPが上がっていくのは少し誤算であったが、MP量の暴力でさくさく生成していく。

 ここまでの生成でMPのほぼ半分である7100を消費してしまったが、背に腹は代えられない。

 それぞれLv.MAX生成時と同じMPを払って自分にセットする。これで残りMPは4227になった。


 更に全てのレベルをMAXまで上げたせいか、新たに【魅了耐性】というものが現れた。これも食らいたくないので即上げてしまいたいところだが、Lv.1で300消費するらしいので少し計算をする。

 結果、Lv.4生成で3000消費ということなので、セット分のMPを考えると今日のところはそこで妥協するべきだろう。


【魅了耐性】Lv.1をMP:300で生成

【魅了耐性】Lv.2をMP:600で生成

【魅了耐性】Lv.3をMP:900で生成

【魅了耐性】Lv.4をMP:1200で生成


 生成してすぐにMP1200を払ってセットすると残りMPは27になる。HPでいえば瀕死の状態だろう。

 そしてそれはMPでも同じだったようで。


「あれ……?」


 急な眩暈がして目の前のテーブルに手をつくが、思うように力が入らない。魔法陣の上で倒れていたあの時のような。

 駄目だと思った瞬間に身体が傾く。せめてテーブルはひっくり返さないようにしようと咄嗟に手を引いたが、椅子ごと倒れてしまったために大きな音が立ってしまった。


「イオリ様!?」


 その音に、マリアが慌てた様子で部屋へ踏み込んできた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ