表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/109

3 - 2.『Aumeria - II』

3-2.『アウメリア 2』

 モリスさんは僕の方を一度も振り返らずに家まで来た。


「モリスさん、どうしたんですか?」

「見つかりたくない奴がいるからね。」

「見つかりたくない奴?」

「モリス・ファイリア!」

「ほら、来たよ。」


 遠くから走ってくる男が見える。あれは誰だ?


「誰ですか?」

「この都市で最も偉い奴だね。」

都主(マークィス)?」

「そうさ。私の〈紋章式魔法〉に関する研究、書籍の権利を全て奪い取ろうとしている男さ。」

「うわ……ひどい」

「全くだよ。」


 やはり迷い人(ストレイシープ)は大半がこのような性格が歪んだ人なのだろうか。僕が出会ってきた中で一部の人は良い人だった。サグルや街主(ロード)、モリスさんだ。だが、違う人の方が多いような気がする。


「おい、何故お前から来ないんだ!」

「はあ?」

「私は都主(マークィス)だぞ!?」

「親の金で就任した奴に言われたかないね。」

「なんだと!!」


 モリスさんの胸倉を掴もうとする都主。モリスさんに手を叩かれ、あえなく距離を離された。


「暴力だ!」

「……うるさいねぇ。なんで私に突っかかるんだい?」

「それは、お前の権利が不正で手に入れたものだからだ!」

「どんないちゃもんつけなんだい……」


 流石に不正で魔法の研究結果を偽造すれば、すぐに気付かれるだろう。だが、誰も何も言わないのは、間違いがないからだ。言い掛かりにも程がある。


「御父様は私の考えに賛成している!」

「親バカも良いところだよ。」

「私の御父様をバカにするな!」

「ああ、面倒臭いねえ! そんなに言うなら、逮捕状の1つや2つ用意してから来るんだね!いくら都主(マークィス)でも根拠なくあれこれ言うのは、いただけないと思うけどね!」


 モリスさんは家に入る。僕も急いで中に入った。そこで扉が勢いよく閉められる。しかも丁寧に扉には魔方陣が描かれている。


「この魔方陣……」

「あんたの想像通りだよ。あいつ避けさ。」


 ここまでやるか……。まあでも今回は治癒院に付き合わせた僕が原因だ。本当ならこの家の中に直接来れば良かった話だ。僕が人探しをする為、不法侵入にならないように、わざわざアウメリアの外に転移する必要があった。


「すみません、僕のせいで。」

「いや、良いのさ。悪いのは全部あいつなんだから。それより用事だ。用事。ついてきて。」


 モリスさんは階段から家の地下に降りる。そこには混凝土(コンクリート)で固められた丈夫な研究施設があった。


「ここで〈紋章式魔法〉の色々な研究をしているんだ。今はあんまりしてないけどね。用があるのはあの子さ。リーリア!」

「はい!」


 20代半ばの女性が元気よく返事をする。


「彼女は?」

「私の弟子さ。まあ、(めい)だね。」

「叔母さん、どうしたの?」

「この子に〈紋章式魔法〉を教えておくれ。」

「私が!? 無理だよ! 私、叔母さんみたいに魔法全然上手くないし。」

「何を言ってるんだい。この世界で最も優秀な〈紋章式魔法〉の魔道士はあんただよ、リーリア。」

「そんな自覚ないんだけどね……」

「私が言うんだから間違いないよ。それにもう私はあんまり魔力が残ってないんだ。教えるのは難しいんだよ。」

「それもそうだけど……」


 魔力が残ってない、とはどういう事だろう。老化によって魔力が減少する事は無いはずだ。


「魔力が残ってないって?」

「ああ、まだ言ってなかったね。私は魔力漏洩症っていう病気なんだ。常に魔力が外に流れ出るのさ。」

「治らないんですか?」

「色々試してるんだけどね……まだ特効薬は見つかってないね。」

「叔母さんがそう言うなら分かった。私やるよ。」


 リーリアは僕の方を見る。


「お名前は?」

「ロムスです。」

「ロムスさん……若輩者ですが、よろしくお願いしますね。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「よし、挨拶を終えたら早速指導開始とするかね。」


 こうして僕の紋章式魔法の鍛錬は始まった。







高評価、ブックマーク登録お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ