3 - 3.『Three years later……』
3-3.『3年が経過して……』
「ふぅ……」
「ロムス、お疲れ様!」
「ありがとうございます。」
僕は受け取ったタオルで汗を拭く。僕の目の前には大きな穴が空いている。犯人は勿論僕である。
「ロムスがここに来てから3年ですね。」
「はい。リーリアさんにはお世話になりました。」
「ふふ。礼には及びません。ロムスは飲み込みが早いので、見ている私も楽しかったです。今では私を超えちゃいましたし。」
「そんな事はないと思いますよ。念入りに鍛錬をしましたが、今でもリーリアさんを倒す方法は見つかりません。」
傍から見て……隙がないのだ。いつも笑顔だが、油断していると同等では無いのだ。鍛錬の中盤、僕はリーリアさんに一撃を加える、というモリスさんからのミッションに苦戦させられたものだ。
「準備は済ませたのかい?」
「はい、最初から身体一つで来たので、すぐに支度は終わりました。」
「それにしても3年で紋章式魔法を習得するなんてねぇ」
こう言うのはモリスさん。モリスさんは教えないとは言っていたが、行き詰まる事がある度に僕の相談に乗ってくれていた。モリスさんが居ないと、僕は途中で放り出していただろう。
「中央都市にそのまま行くのかい?」
「はい、そのつもりです。」
僕は一度シャワーを浴びて、服を着替えた。そして、僕がモリスさんの家から去ろうとした時、扉を叩く音が聞こえた。
「誰でしょうね。」
「ちょっと待ってくれるかい……はいはい、どなたですか?」
モリスさんが扉を開くと、見覚えのある男がいた。
「ああ……あんたかい、都主。」
「あんたとはなんだ!私はこのアウメリアで最も偉いのだ!」
「はい、そうだね。で何の用だい?」
「全ての支度は整った!逮捕状も罪状も全て決まった状態だ!」
「……はあ?」
都主の急な訪問に誰もが首を傾げたが、その要件を聞いてさらに首を傾げる事になる。
「まさかあんた3年間もちょこまか何かをしてたのかい?」
「ちょこまかとはなんだ!これを見ろ!〈紋章式魔法〉の権利は全て私のモノだ!」
僕は無言で魔方陣を空中に描く。難易度の高い技術だが、魔力を流体状に変化させて行うものだ。リーリアさんもモリスさんも驚いた様子は無い。これは2人にも出来る技術なのだ。しかし、それを都主は知らない。
「ああ!権利書が!」
「まあ、燃やしてもどうせ複製してるんだと思いますけど……」
「これ1枚だったのに……!」
「ええ……」
3年も用意周到に準備したのに、まさか権利書を複製してないなんてあるものなのか? これはこれで可哀想ではあるが、自業自得である事に変わりは無い。
「じゃあ、帰ってもらおうか。」
「……」
都主はとぼとぼと帰路に着いた。
「また来ますよ?」
「そん時はそん時さ。あんたはもう行きな。仲間が待ってるんだろう?」
「はい。」
3年間も連絡を取っていない為、本当にシーナとサグルが中央都市にいるかは分からないが、僕は2人を信用している。きっと居るはずだ。
「また機会があったらアウメリアに来な。領主はあれだが、存外いい街なんだ。」
「分かってます。機会があれば、必ず。」
「叔母さんが生きてると良いけど……。」
「リーリアさん……。」
「何だい、リーリア。一人前のつもりかい? あんたはまだまだ半人前だよ。私が居ないとどうにもならないんだから、私はまだ死ねないね。」
「……だそうです。」
「ハハハ……まあ、安心しました。それではまた会いましょう。」
僕は床に魔方陣を描く。先程よりも何倍も複雑な魔方陣。それが完成すると、僕は上に乗る。魔力を込めると、光が灯る。気付けば、2人の姿は無くなっていた。その代わりに懐かしい風景が広がる。
「久しぶりだ……中央都市。3年も居ないと色々変わってるんだな……。」
3年前と今では目線も変わっていた。もう10歳である。かなり身長が伸びた。さて、シーナとサグルを探しに行かないと。
僕は記憶を辿って、人狼局の方へ歩いた。途中の道には見た事のない新しい店もある。移り変わりは早いものだ。
「本当に……懐かしいな。」
何か込み上げてくるものがある。でもそれに構う時間は無い。早速、人狼局の中に入る。入ると同時に剣呑な視線が僕に突き刺さる。
「いつも通り」
1人だけただならぬ視線をぶつける者がいたので、頭上に【氷塊】を発動する。急に暗くなって天井を見て、腰を抜かしているようだ。
「うーん……居ないのかな。」
人狼局の中を一通りみたが、シーナとサグルが居るようには見えない。
「じゃあ宿屋かな……」
僕が反対を向いて人狼局から出る時に2人組とすれ違う。男1人に女1人。
「ロムス?」
女が言う。……間違いない、シーナだ。
「シーナか?」
「おかえり、ロムス!」
「ただいま。サグルさんもお久しぶりです。」
「ああ、久しぶり。元気にしてた?」
「はい、お陰様で。2人は?」
「私もサグルも色々あったけど、元気だったよ。それより宿に言って話そ?」
「そうだね。積もる話もあるだろうし。」
「宿って?」
「あの宿だよ。3年前から変わってない。」
「ああ、そうなんだ……」
2人は身長は伸びたが、これまでと何も変わらず接してくれた。意外と何も変わっていないのかもしれない。僕が3年という年月に気持ちで負けていただけなのだろう。
僕達3人はそれぞれの3年間の事を話しながら宿に戻った。
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