27 ナヴィと影の槍 その1
「にしても…おっきいわね、この魔石」
「あぁ、かなり大型のロッドグリズリーだったからな」
「ん?普通のサイズだと小さいの?」
「さっきのよりは少しだけな。メリア、回収できたか?」
「ん…ばっちり」
「よし、帰るぞ」
メリアに魔石とドロップアイテムの回収をしてもらい、俺達はデュートライゼルへと帰還することにした。
道中も何度かモンスターと対峙したが、全てナヴィが瞬殺していた。
やはり、奇襲戦法はよいものだ。
倒したモンスターの魔石は俺とナヴィの方で回収しながら一日夜営をした後、デュートライゼルへと帰還した。
「お、戻ってきたのか?どうだ?討伐はできたのか?」
「あぁ、バッチリだ。」
「流石はBランクといったところか!」
「ぃいっ!?…っぁー…いきなり背中を叩かないでくれ…」
「おぉ、わりぃわりぃ」
外出許可証を返すために出てきた門の場所へ戻ってきた俺達を、行きの時に見送ってくれた門番が迎えてくれ、そのまま受付で許可証を返した俺達は、そのままギルドに向かう前に、一つの店に入った。
スキルロールの販売店だ。
さっき町に入る際、あらかじめ門番に聞いていたのだ。
「らっしゃい…ん?お前さん、見かけない顔だね?」
「あぁ、昨日到着したばかりだからな」
「なるほどねぇ。にしても、討伐依頼の帰りかい?」
「そうだけど、どうして分かったのかしら?」
「簡単だぜ嬢ちゃん。俺も昔は冒険者やってたからだよ。まぁ、嫁さんを庇って片腕失っちまったから、今はここで商売に勤しんでるけどな」
店主の左腕を見ると、確かに肘から後が無かった。
悪いことを聞いてしまったのだろうか。
ナヴィもしまった、という顔をしかけている。
「おっと、気にするのはやめてくれよ?後悔はしてないんだからよ」
「でも…」
「ナヴィ、彼がいいと言っているんだ。気にすることはない」
「そーゆーことだぜ。それで?ここに来たってことは、何か探してるスキルでもあるのか?」
「特にこれといった目的はないが…しいていえば、今後のためになりそうなスキルが無いかと思ってね」
今回の目的は主にナヴィのためだ。
スキルロールは普通のものでもそこそこ値段はするのであまり買いすぎるのも良くないが、だからといって惜しむ理由にはならない。
昨日のロッドグリズリー戦。
ナヴィは遠距離からスキルを使っていたが、その殆どをかわされていた。
それもその筈、ナヴィは近接戦闘に向いているスキルを持っていないからだ。
ナヴィはこれまで使ってきていない「闇」というスキルも持ってはいるが、闇を生み出すスキルなので、これも近接戦闘向きではない。
それに加え、闇自体かなり扱いが難しいスキルであり、用途もさほどない。
だが、それを生かすスキルがあるはすだと考え、店の中を探していた。
その時、ふと目に止まった物があった。
「≪影の槍チャレンジ≫…店主、これは?」
「あぁ、それ?そろそろ辞めようかと思ってたやつなんだが…」
「そこを詳しく」
「分かった。そいつは名前の通り「影の槍」というスキルを得られることができるものだ。ただし…」
「ただし?」
「この影の槍というスキル自体、かなり特殊なスキルでね。製造もほぼ不可能とまで言われるうえに、使える者も限られているときた」
「製造不可?どうしてそんなものがここに?」
「そりゃあ、コレ自体は俺が作った、適正を確認するための物だからな」
「作った?…あぁ、継承できるか確認するための物なのか。それは」
「そういうことだ」
スキルの継承。
一般的では無いが、王家等では良くあることだ。
スキルの所持者が、別の者にスキルを継承する。
継承する側はそのスキルを使えなくなるかわりに、継承した側は継承時のスキルレベルを引き継いで使うことができる。
「それじゃあ、店主は…」
「あぁ、影の槍を使える。それも、血の滲むような努力の末に、な。だが、今となっちゃあ宝の持ち腐れよ」
「だから継承者を探している、と」
「あぁ、俺の思いを受け継いで欲しいという思いで始めたのさ。まぁ、これまで幾人か挑戦してきたが、誰も適正が無かったようだがな」
影の槍…確か昔見た文献によれば、彼の言う通り適正が無いと使えないスキルだ。
適正が無い者が使おうとすれば、暴走して己を傷つけるとまで言われる代物。
確か、闇属性に適正が無いと使えなかったような…
…ん?闇?
「…なぁ、店主」
「なんだい?」
「恐らくだが、ナヴィなら行けると思うぞ」
「…なに?」




