第7話 食堂にて
◯孤児院 食堂 (1902年 4月)
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食堂には素朴な木の机が八つある
各机には六つずつ椅子がある。
孤児達は食べたい気持ちを抑え、
食前の祈りの合図を待っている。
そこにデアリスとマルスが入ってきた。
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食堂からは食欲を誘う香りと食事を心待ちにする子どもたちの賑やかな声が聞こえて来る。
いつもと変わらない気持ちでデアリスが食堂の扉を開くと、一瞬の沈黙が空間を支配した。
そして先程とは違うざわつきが、拡がっていく……。
(あれ、この感じ……)
子ども達の視線の先にはデアリスよりも頭一つ背が高く、逞しい褐色の青年、マルスが立っている。
孤児達は、デアリスと一緒に居る彼に興味を持ちざわついている
デアリスは、そんな子どもたちを見なかった事にして、トレーに食事を乗せる。
空いてる席を見付け、座り。マルスはその向いに腰掛けた。
暫くするとシスターの合図で食前の祈りを皆で捧げる。祈りが終わり皆食事を楽しみはじめる。教会の日常だ。
今日の献立は根菜のスープと丸い黒パンがふたつだ。スープを口に運ぼうとした時、デアリスは違和感を覚えた。
先ほどより、子ども達の視線を感じるのだ。身体を横にずらし、向いに座るマルスの後ろを見る。
そこには、オレアと複数の孤児達がマルスの背後から興味深そうにマルスの事を見ては小声ではしゃいでいた。
(しまった、想定すらしていなかった……)
考えれば当たり前の事だ、孤児院に見知らぬ人物が居たならば大人は問題視するし子どもは何かしらの興味を持つ。
孤児院の皆が納得出来る理由くらい部屋を出る前に考えるべきだったと、後悔するが後の祭り。
さっきまでの空腹が嘘のようにデアリスは食事が進まなくなった。
「ねぇ!デアリスあんちゃん!」
興味を押さえられなくなったのか、デアリスの隣に自分のトレーを置き、オレアが話しかけて来た
「このおじさん、あんちゃんの知り合い?」
「えっと……知り合いだけど、なんていうか、あははは」
まだ誤魔化せるような設定を思いついていない為、言葉に詰る
「……兄弟、困っているなら、俺が対応するかい?」
小声でマルスが提案をしてくれた。
自分よりも経験が豊富であろうマルスに任せた方が丸く収まるかもしれない。
デアリスは「頼む」と拝むように視線を送り、「承知した」と視線でマルスが応えた。
「お前さんのあんちゃんが俺が困っていた時に助けてくれてな、それで知り合ったんだ」
「そうなの?!」
「ああ。それで話してたらそろそろ仕事をはじめたいと、相談されてな。」
「あんちゃん仕事はじめるの?!」
「おお。折角だから一緒に商売を始める事にしたんだよ。それでその話をしにここに来たんだ」
オレアはマルスの話に目を輝かせ、頷いている
「あんちゃん!すごいな!仕事なんて大人みたいだ」
「お、おう」
オレアの真っ直ぐな目に、何故か罪悪感を覚えながら、デアリスは食事を進めた。
すると、オレアがデアリスとマルスを交互に見詰めているのに気がついた
「オレア、どうしたんだ?……キョロキョロして」
「あんちゃん……おじさんは食べなくっていいのか?」
「え、あぁ……」
確かに、マルスの前には、食事がない。
そもそも、宝石少年が食事をする事が出来るかもわからない。
デアリスが困ったのを察してか、マルスはオレアの髪を撫で、会話を続けてくれる。
「お前さん優しいなぁ、おじさんはさっき腹いっぱい食べたから大丈夫だ。ありがとな」
褒められたのが嬉しかったのか、オレアは彼に懐いたようだった。
(よし、この感じなら子どもたちは宝石少年達を受け入れてくれそうだな)
デアリスは胸を撫で下ろす。
マルスの活躍で難を逃れ、無事に食事を終えたデアリスは、マルスと共に食堂から出る事に成功した。
子どもたちはマルスに手を振って見送くってくれる。それを断ち切るように、デアリスは食堂の扉を閉ざした。
「……俺は役に立てたかい?兄弟」
廊下に出ると、マルスはニカッと爽やかに笑いながら、デアリスに問いかける。
デアリスは頷きながら「助かったよ」と、力なく笑うしか出来なかった。
(だけどこのままじゃまたボロが出るな)
マルスのお陰でどうにかなったけれど……。
一度、部屋に戻って宝石少年達がこの孤児院に居てもおかしくない設定を、彼らと練り直そう。
デアリスは、そう心に決め、屋根裏部屋へ続く階段へ向かった。
『ディスポーザブル・キャスト-夢を見せる宝石少年-』
原案:神田明子
作:西瓜すいか・差異等たかひ子
企画・制作:Hisshigumi Project
※本作は複数の小説投稿サイト・媒体にて同時掲載しています。
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