第4話 箱の中の手紙
◯孤児院 デアリスの部屋 昼間(1902年4月)
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デアリスはベッドの下を覗き
ベッドの下で光る宝石に
手を伸ばしている
マルスはその苦戦する姿を見て、
ベッドに手を掛けた
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しゃがみこみ、ベッドの下を覗く青年、奥にキラキラとした輝く石を見つけ手を伸ばすデアリス
中々届かず困っていたところを、マルスが軽々とベッドを持ち上げた。
デアリスはその怪力に驚く。
「え、あ、えっと……あ、ありがとうな、マルス」
マルスの手助けにより、無事に石を回収し、デアリスは安堵の息を吐く
「ふぅ……やっと、取れた!」
マルスは持ち上げていたベッドを、音がならないようにゆっくりと降ろした。
この重量のモノを軽々と持ったりゆっくり降ろしたり出来る、筋力にデアリスは目を丸くする。
「最初から持ち上げればもっと早かったな、悪いな、兄弟」
「いや、普通は出来ることじゃないから……助かったよ、うん」
正直、石を見つけ出す事には時間は殆どかからなかった。
ベッドの下、奥の方にライラックピンクの石とラズベリーカラーの石がまとめて落ちていたのが見えた。
ただ、腕が届かなくて難儀していた――結局、マルスがベッドを持ち上げてくれた事で、万事解決したのだ。
『あー、焦ったぁー。このまんまひとり、ホコリまみれのベッドの下で誰にも気付いてもらえず忘れ去られるかと思ったよぉ……ありがとう相棒』
心底安堵した少年の声を聞いて、デアリスもほっとする。
すこしやかましかったが、探している間にその声にも慣れ、次第に恐怖は薄らいでいった。
また失くしてまわない様に、デアリスはビロードの箱の中に石達を入れた。
「あれ、これ」
見ると、箱の中に小さな紙片が折りたたまれている。手紙だった。
◇ ◇ ◇
――デアリス殿
この石は あらゆる役割に成り代わる 夢を叶える機械 意思のある宝石 宝石少年
鋳造心臓を使い彼らを受肉させ、彼らを《磨いて》ください。
◇ ◇ ◇
「彼らを、《磨く》―――?」
(この石を磨けってことか――?)
デアリスは箱をあけて、石をまじまじと見た。
――ラズベリージャムのように、赤い石。
――半透明で、薄桃色の石。
確かに、貴婦人たちが持っていた宝石にくらべると輝きが鈍い。
透けていない部分があったり、中に黒い粒が入っていたりもした。もっと磨く必要がある宝石なのかもしれない
だけれども。彼ら、という言葉に引っかかった
(でも、モノに対して彼ら、とか、言わねぇよな?人の姿になるから、《彼ら》なのか?)
デアリスは石をつまみあげ、じーっと眺めている。綺麗な石だ。でも、ただの石だ。
「磨くっていったって、どうしたらいいんだ?」
石磨きの方法なんて知らない。そういう職人に弟子入りしたほうがいいんだろうか。
マルスは悩んでいるデアリスをじっと見ているばかりだった。
どうやら、マルスも「磨く」ことの答えを持ってはいないようだ。
『本当に、焦れったいなぁ……』
再び、ため息交じりの声が耳の奥から聴こえる。流石にもう、恐怖はなかった。
「これって石が話してる、んだよな」
「そうだ。こっちの、赤いほう」
「石が話すとか――いまだに信じられねえけど……」
デアリスが笑い飛ばすように言うと、《石》が答える
『だからホントだって』
「嘘だァ」
『ホント!』
「いやいや」
『ほら、今も、会話が成立してる』
「………」
――そのとおりだった。
黙るデアリスの背中を叩きながらマルスがガッハッハ、と豪快に笑っている。
「こりゃあ、一本取られたな兄弟!」
「今のは、しょうがないだろうが!」
『……とりあえずさぁ、もう一枚の手紙読んでくれない?』
《声》のすすめに従って、もう一枚の紙を手に取る。
◇ ◇ ◇
――少年挿入の方法について
宝石少年を鋳造心臓に挿入して
自分の元に現れよと念じ、少年挿入と唱える。
また、宝石少年は無生物や意識の薄弱な動物に挿入することが出来る。
その場合、人の姿を象ることは無い。石に戻す時は取り外しと唱えながら彼らに触れること。
少年挿入を繰り返す行うことで、彼らの星幽心核は輝きを増す。
◇ ◇ ◇
「兄弟、理解できそうか?」
どうにも読み方がたどたどしいデアリスを心配するように、マルスが声をかける。
「あー、なんか星幽心核がなんちゃらとか言われても、よくわかんなくってさ。
結局、磨けって具体的にどうすればいいんだ?」
馴染みの無い言葉ばかりで、まったくピンと来ない。
簡単な読み書きは孤児院で教わっているが、慣れない言葉が出てくるとお手上げだ。
教典や子供向けの物語なら読めても、知らない単語を理解するのにはどうしても時間が掛かる。
そもそも、世間的にも読み書きが完璧に出来るのは貴族階級や貴族相手に商売をする商家くらい。
町人はごく簡単な読み書きが出来る程度なのだ。この文章は長くはなかったが、わからない言葉が多すぎる。
街で使われていない馴染みの無い言葉は異国の言葉の様で頭に入らない。
頭にハテナがうかんでいるようなデアリスの様子を見て、マルスも頭をかかえた。
「兄弟には感覚的に伝えた方が早いかもしれないな。ふむ、どうしたもんか」
『ああ、もう!マルス、オイラに代わって!』
痺れを切らして叫ぶ声の主。本当にイライラしている様子だ。
デアリスは思わず謝った。
「――ごめん」
赤い石の声はため息をふぅと吐き、さっきより落ち着きのある声で仕方がないなぁと呟く。
『相棒、マルスを取り外ししてオイラを嵌めて』
「え、わ、わかった……えーと?えじぇくと、っていうのは……」
「焦らなくて良い、兄弟。」
マルスが優しく、デアリスの手をとった。
「俺に触れながら取り外しと唱えるだけだ。なに、怖いことはないさ、やってみてくれ」
マルスに促され、言われた通りにするとマルスは光につつまれ、石の姿へと戻った。
デアリスの手のひらには、黒い金属光沢を放つ石と、石座――彼らが鋳造心臓と呼んでいる金具だけがのこった。
『ほら、出来た!さぁ、次はオイラを挿れて!はやくはやくぅー!』
声に急かされながら、鋳造心臓に赤い石を嵌める、ぐっと力を込めると、カチッと言う音が聞こえた。
『そうそう、さあ、言って。少年挿入って!』
呼吸を整え、手紙に書かれた言葉をデアリスは呟いた
「少年挿入」
――次の瞬間。赤い光が、乱反射して、屋根裏部屋を包み込んだ
『ディスポーザブル・キャスト-夢を見せる宝石少年-』
原案:神田明子
作:西瓜すいか・差異等たかひ子
企画・制作:Hisshigumi Project
※本作は複数の小説投稿サイト・媒体にて同時掲載しています。
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