1-11話 祭祀剣
第一部 継承編
夕刻となり。
やがて、最後の書類が閉じられる。
室内へ静かな間が落ちた。
その時だった。
「――神殿側より、
継承儀についての最終確認を承っております。」
控えていた官僚が、
一歩前へ出る。
「祭祀剣の確認をと、祭祀長様がいらしております。」
Lunariaは、
ゆっくりと顔を上げた。
「通して。」
ほどなくして、
白装束の神官達が静かに入室する。
先頭の祭祀長が、
細長い箱を恭しく捧げ持っていた。
室内の空気が、
ほんの僅かに変わる。
静かに卓上へ置かれた箱が開かれる。
そこに収められていたのは、
細身の銀の剣だった。
淡く光を返す刀身。
繊細な意匠。
柄へ嵌め込まれた、
濃紫色の石。
まるで夜の底を閉じ込めたような、
深い色だった。
「……いかがでしょう。」
祭祀長が静かに問う。
Lunariaは、
しばらく何も言わなかった。
ただ、
その剣を見つめる。
細かい銀の細工。
透ける光に、煌めく硝子。
昔から、
そういうものが好きだった。
兄は時折、
地方から小さな硝子細工を持ち帰ってきた。
『可愛いだろ』
細工を眺めるLunariaを見て、
嬉しそうに笑いながら。
ふ、と。
微かに口元が緩む。
「気に入ったわ。」
その言葉に、
神官達は静かに頭を下げた。
その瞬間。
ずん、と。
また、
頭の奥が重く沈む。
――どこか遠い場所で。
巨大なものが、
ゆっくりとこちらを向いたようだった。




