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澱界宮の探索者  作者: 赤上紫下
第 07 章

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02:何もない時間

 ゴブリンの集団を狩った後、道路に留まったままでは迷惑かということでまた近くの公園を探してみたら、発見した公園らしき場所にはテントを張っている利用者が居ることも分かった。

 人が居る所は避けた方が無難かなーということで探しているうちに川を発見。河原にもテントを張っている利用者は居たものの、距離は取りやすそうだしまぁ良いかな、ということで箱型アクリルゴーレムをそちらに飛ばして着陸。出入口になるように今回も左側の面を開いて、探知した結果を表示するための板を改めて中央付近に配置しておく。

 しっかり世界が広がっていた頃ならまだしも、車があれば余裕で届く距離までしか世界がない現状、天候はほぼ変化しない。崩壊直前の状況が再現されるようになっているのか何かは知らないけど、空気がドンドン抜けていって真空状態になったりはしないし、外気がひたすら加熱されて蒸し焼きになることもない。空気には酸素もしっかり含まれているし、天候の変化はともかく昼夜はある。

 運、というより何らかの悪い要因があったりするとそういう環境になることもあるらしいけど、ここの環境はそういう形で安定している。要するに、川の増水を心配する必要はないということなので、何時間か留まるくらいなら丁度良いかなと。

 河川敷の管理されてない土地でなら、テント等の撤去しようと思えばすぐに撤去できるものを設置したりだとか、近隣住人に迷惑がかからない程度のバーベキューをするくらいは問題なかったはずだしね。あんまりしっかりとは覚えてないけど、河川法だかなんだかでそんなのが規定されてたはずだし、実際今現在も川の近くに張られたテントの中に人が居るわけだし。うん。


「えー……ランス博士、とりあえず移動前と同じような環境は整えましたが、このまま付近を探しておけば良いですかね?」

「そうだね……人目が少ない夜間はモンスターが活発に動きやすいだろうが、これだけ警戒しておけば十分……というよりこれ以上にできることがあるのかね?」

「それが特に思い当たらなかったから聞いてみたんですが、まぁ、そういうことなら、俺はこのままそれっぽい反応を調べていきます」

「うむ」


 ある程度大きな魔力を持ってる反応はピックアップできてるけど、ちょっと反応が多すぎてチェックが大変なのが難点だ。

 判断をある程度生成AIに任せたりだとかってのは、俺がこの世界に居た頃にもやたらと流行させようとしてる流れは感じてたけど、プログラミングを多少かじってる身としては怖いんだよなぁ。プログラムってのはどうしてもバグるものだし、蓄積されたデータに問題があればプログラム上バグがなくても誤りはあり得る。

 何かの生成AIで無毒だという結果が出ていたキノコが実際には有毒で、食べたら入院することになった、なんて話もあったはずだし……特に今回の場合、ゴーレムの判断基準を決めるのは俺だから、重要な反応を見逃してしまう可能性は十分に考えられる。

 まぁ、魔力を持たない反応をスルーしてる時点で人間の犯罪者とかをほぼ見逃してるようなもんだけど、その辺は対策本部に頑張ってもらいたいところ。


「……ところで、アキミチ君」

「はい、何でしょう?」

「この地図だが、平面ではなく、もう少し立体的な表示はできるかね?」

「あー……できる、とは思いますが、空中を光らせるのはコストが高そうなんですよねぇ」

「ふむ?」


 現在、魔力持ちの反応を表示している板はゴーレム自身を光らせているだけだからかかなり低コストなんだけど、空気中に点や図形を光で描くとコストが跳ね上がるのは間違いない……と思う。ホログラフィ的な技法を使うにしても見る方向がかなり限られる……と思うし?

 思うだけってのはよろしくないから、ちょっと試してみるかな。ホログラフィの方は技法をよく知らないから空中を実際に光らせてみる感じで…………あ、やっぱりこれゴーレムにやらせようとすると高コストっぽい。

 空気をゴーレムの延長のように扱うのは難しい。ゴーレムを変形させてジオラマのようなものを作らせる……? 単純な形を作るのならともかく、反応の動きに合わせてゴーレムを変形させるのも、発光より変形の方が高コストだから避けたい。

 水槽のようにしてしまうのも一つの手だけど、水はまだ対流を起こすから巨大アクリルブロックのようなものにしてしまうのが理想的か。まぁ、重いし屈折率も高いけど、重さは現在着地してるわけだからあまり気にしなくても、何なら『浮遊』でも付与しておけば……屈折率が割と致命的か。

 いや、ゴーレムはカメラ代わりにもなるから、ブロック内の一部をカメラ代わりにして……視点の操作は前後左右に上下と回転? キーボードやマウスを再現するのはちょっと手間だし、Lvを考えると強度が不安。かといって俺以外の【操作】を受け付けるようにするのはセキュリティ的にちょっと問題がある気がするから、実装するならやっぱり物理入力装置?


「んんん……」


 考えてはみたけど、やっぱり一望できるのが理想的だとも思うから……屈折率の問題も考えると、極薄のフィルムを重ねる方式が良いかな? 表面を滑らかに、光が変な方向に屈折しないように精度を高めておけば枚数を重ねても拡散しにくい……はず。……あぁ、要求精度が高すぎるのかコストエグいなコレ。何百枚も重ねてようやく表示がメートル単位の精度になる程度だから、これなら中までみっちり詰まったブロックの方がマシかな。

 とりあえず、ブロックが最有力案として、空気を光らせる案の方ももう少し実験……箱状の容器を作ってから密閉、流れにくくした中の空気をゴーレムの制御下に置いて、光るための魔力が満ちた状態を維持しておいてから光らせてみる。

 ……フィルムを重ねる案より高解像度、完全に密閉された空間内の空気だからかコストもそこまで高くはない。


「意外といけました」

「意外とって……透明な塊になるかと思っていたのだが、気体のゴーレム化とはよくやるものだね……いや、この方が見やすいのは確かなのだがね?」

「まぁ、ゴーレムで完全に囲ったこの中の空気だけですけどね」

「それでも十分なのだよ。この精度を維持できるのなら、探知技能を持たずとも警戒を維持できる。イノリ君もそうだが君も少々気を張りすぎているようだし、何かあれば呼ぶから少し休んでおきたまえ」

「そうですか?」

「うむ。イノリ君もね」

「は、はい」


 ちょっと頑張ってみたら織宮さんともども暇を取らされてしまった。辞職的な意味じゃなくて単純に休憩って感じだけど、俺までそんなに張り詰めてるように見られてた……? ……実際多少気疲れのようなものを感じる気もしないでもないし、休めるうちに休んでおくべきか。

 自己診断もしてみて、確かにそうかもと納得できたから、ランス博士(エマ)に「それじゃそこでちょっと横になっておきます」と一言断ってから、箱型ゴーレムの先頭の方にベッドというには簡素な長椅子のようなものを取り出し、追加で取り出した寝袋を敷いてもそもそと潜り込む。


「……織宮さん?」

「え、えっと、その、あまり、横になって本格的に休もうという気にはなれないのですが……」

「まぁ……わからないでもないけど、公民館が開くまでまだまだ結構時間があるからねぇ」

「気持ちを上手く切り替えられないのなら、私と少し話してみますか?」

「っ!」


 俺の言葉を引き継ぐようにウィッシュが出てきて、織宮さんに話しかけていた。巨体のオークと遭遇する前に話していた身体かな。見えている背中の高さから考えると、床に正座しているような状態の模様。


「ここで休んでおいたほうが良いように見えるのは確かですし、貴女も聞いてみたいことはあるでしょう?」

「それは、その、その通りだという思いもなくはないですし、只野さんのことをご主人様と呼んでいることとか、色々ありますが……」

「では、寝床を用意して横になりましょう。話はそれからです。もしそうしないというのであれば……」

「あれば……な、何ですか?」


 二人とも同じ声で、ウィッシュの方は普段よりちょっとクールっぽい声音なせいかどっちがどっちかちょっと混乱しそうになるな。

 とりあえず、ウィッシュの方が溜めを作って、織宮さんが従いたくなるようなことを言おうとしてる感じ。さて、何を言うつもりなのか――


「服を脱いでご主人様の寝袋に潜り込みます」

「……ちょっ、ま、待ってください?!」

「ええ、待っているところですよ。このまま話を続けるつもりであれば実行しますし、実行後は貴女が寝床を用意しても私はご主人様の寝袋からは出ませんが」

「わかりました、すぐ用意しますからっ!」


 双子かと思うぐらい似た顔と声だからこその脅迫……のような何か。効果はばつぐんだったようで、織宮さんは焦った様子を見せながら寝る用意を始めている。あまり明るくはしていないけど、顔が赤くなっているのが見て取れる。


「えー……と、ウィッシュ? そういう脅迫めいたのは……」

「わかってます。今回だけですよ。あちらも多少は免疫を持っていた方が今後のためになりそうなので、いっそ実行した方が良いような気もしますが……今やることではありませんね」

「あぁ、それは確かに」


 織宮さんとウィッシュとの関係は、並行世界の同一人物に近いとはいえ、あくまでよく似ているだけの他人のようなもの。簡単にそんな相手の言いなりになってしまっている現状はよろしくない。

ウィッシュの現在の服装

 巫女風の着物、緋袴(足首丈の行燈袴)、襦袢、ニーソ足袋、草鞋(草履ではない)、髪留め。以上。

 長距離を歩くための服装に見えはする、が……

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