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第104話 商人の刃は見えない

王都ではクローディア家の軍備凍結が命じられた。

だが、貴族を本当に追い詰めるのは剣ではない。


それは――金と流通。


ロークは剣を振るわない。

だが、彼の一手は確実に相手の喉を締め上げていく。


王都の朝は、いつも通り賑わっている。


市場は開き、商人は声を張り上げ、

貴族の馬車は行き交う。


だが――空気は違った。


ロークは露店で果物を選ぶふりをしながら、

周囲の会話を拾っていた。


「クローディア家の支払いが遅れてるらしいぞ」

「武器の追加注文が止まった」

「調査が入るとか入らないとか」


口元がわずかに上がる。


(効いてるな)


ロークは懇意にしている武器商の裏口へ入る。


「よぉ」


「お前か。例の件、聞いたぞ」


店主は小声になる。


「クローディアの注文、止まった。

王命だそうだ」


「困るか?」


「短期的にはな。だが――」


店主は肩をすくめた。


「代わりの買い手はいくらでもいる」


ロークは静かに言う。


「その代わりの買い手に、

蒼月亭経由の武器を混ぜろ」


店主の目が細くなる。


「例の修理屋か」


「ああ。品質は保証する」


「クローディアに知られたら面倒だぞ」


「だからこそ、今だ」


ロークは机に金貨を置く。


「流れを作れ。

クローディア抜きで回る市場をな」


店主はしばらく考え――笑った。


「面白い。やってみるか」


その日から、王都の数店が

“別ルート”の武器を扱い始めた。


品質は高い。

値段は適正。


噂は早い。


「最近、いい武器が出回ってる」

「クローディア製より安いぞ」


小さな変化が、

静かに広がる。



一方。


クローディア家の屋敷。


「売上が落ちています」


家臣の報告に、当主は黙ったままだ。


「武器商が別の流通を…」


「締め上げろ」


低い声。


「だが王命で動員が…」


当主の指が机を叩く。


「商人は金で動く。

王ではない」


しかし――


その金の流れが

すでに別の方向へ向かっていることに、

彼はまだ気づいていなかった。



その夜。


ロークは役人と酒を飲んでいた。


「例の鍛冶屋の件だが」


「書類は整えた。差し押さえにはならん」


「助かる」


「お前も危ない橋を渡るな」


ロークは笑う。


「橋は渡るもんだろ」


役人はため息をついた。


「王都は荒れるぞ」


「だから儲かる」


だが、ロークの目は笑っていない。


(カイが治るまで持たせる)


それだけが目的だ。



数日後。


エリクサー完成の報せが届く。


瓶に満ちた淡い光。


「完成だ」


錬金術師は無機質に言う。


「代金は受け取った」


ロークは瓶を慎重に受け取る。


(あとは間に合うかだ)


王都の空は、

嵐の前の色をしていた。


流通で締め上げる。


ロークの役割はここです。


クローディア家はまだ倒れていません。

だが、血を流さずに弱らせる工程が始まりました。

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