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第102話 王都の水面下

廃村では、命を繋ぐための材料が揃った。


だが、癒しの薬を作るには“腕”がいる。

そして王都では、別の戦いが始まっていた。


剣と剣の戦いではない。

言葉と証言、そして権力のぶつかり合い。


ダリウスは王の前へ。

ロークは闇の奥へ。


水面下で動き出した歯車は、

やがて一つの家を呑み込むことになる。

王都・謁見の間。


高い天井の下、重い沈黙が落ちていた。


ダリウスは膝をつき、頭を垂れている。


「陛下」


低く、だがはっきりとした声が響く。


「クローディア家の私兵が、王都内外で武器を大量に調達しております」


王の眉がわずかに動いた。


「証拠はあるのか」


「武器屋数件からの証言があります。

加えて、廃村において百名規模の傭兵が投入されました」


ざわ、と貴族達の間に小さな波が立つ。


一人の男が前へ出た。

クローディア家の次男だ。


「根も葉もない言いがかりだ」


声は冷静だが、目は鋭い。


「辺境での小競り合いを、我が家の所業と決めつけるとは。

証拠はあるのか?」


ダリウスは視線を上げる。


「老兵の指揮官が、戦闘前に名を口にした。

クローディア家の名を」


「死人の証言など、証拠にはならぬ」


次男は即座に返す。


「むしろ王都の暗殺未遂に関しても、我が家を疑う声があるが――

それこそ虚偽だ」


謁見の間の空気が冷える。


王は静かに言った。


「……双方、証拠を揃えよ。

軽々に断罪はせぬ」


だが、その目はすでに動いている。


疑念は芽吹いた。


ダリウスは確信する。


(崩れ始めている)


一度入った亀裂は、もう元には戻らない。



その頃、王都の裏路地。


ロークは馬を預け、深くフードを被って歩いていた。


向かった先は、王都の外れにある錬金術師の工房。


表には看板もない。

だが、知る者は知っている。


扉を叩くと、痩せた男が顔を出した。


「……誰だ」


「エリクサーを作れる腕を持つ男を探してる」


男の目が細くなる。


「材料は」


ロークは袋を開き、黒紫の薬草を見せた。


「揃ってる」


さらに、金貨の袋を机に置く。


重い音が響いた。


「前金だ。成功報酬は別だ」


錬金術師は薬草を手に取り、匂いを嗅ぐ。


「本物だな……」


しばらく沈黙。


「完成まで数日かかる」


「構わない」


「失敗すれば材料は戻らん」


「承知だ」


男は頷き、材料を奥へ運んだ。


ロークは背を向ける。


(あとは時間との勝負だ)


工房を出た後、自然と足は別の場所へ向かっていた。


王都の一角。


静まり返った鍛冶屋。


カイの“オヤジ”の店だ。


扉は閉じられたまま。


だが、以前とは違う。


軒先の埃は払われ、窓は板で補強されている。


(誰かが管理している)


ロークは周囲の店に入った。


「なあ、あの鍛冶屋はどうなった?」


パン屋の主人がため息をつく。


「親父さんは亡くなったよ。療養してたがな」


「後継ぎは?」


「いない。……修理屋の若いのがいたらしいが、消えた」


ロークは肩をすくめる。


「中の品は?」


「遺品扱いだろうな。

だが貴族が目をつけてるって噂だ」


「どこの?」


「さあな。だが、質のいい未完成品が残ってるらしい」


ロークの目が細くなる。


(剣とか未完成品があるはずだ。押さえておく事できないか?)


もしクローディア家が動けば、

証拠も、価値ある品も、すべて押さえられる。


それは避けたい。


「遺品の管理は誰が?」


「役所だ。だが金を積めば話は早いだろう」


ロークは軽く笑った。


「金なら、ある」


外に出る。


王都の空は曇っていた。


(カイにとって大事なものだ。

……取れるものは、取っておく)


風が吹く。


どこかで鐘が鳴る。


王都は一見、平穏。


だが、水面下では、

剣より鋭い思惑が交差している。


ロークは再び歩き出した。


廃村に戻る前に、

やるべきことがある。


王都では“言葉の戦い”が始まりました。


ダリウスの進言。

クローディア家の反論。

そして揺らぎ始める権力構造。


一方ロークは、エリクサー生成と並行して

鍛冶屋の遺品にも目を向けました………


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