表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/47

042 ドラゴンアイランド

 ドラゴンアイランド――。

 遠く離れた海の向こうにポツンと佇む小さな島。

 周囲は険しい外輪山(がいりんざん)に覆われており、その内側は盆地になっている。


 そこに棲息しているのが、B級の大ボスことアースドラゴンだ。

 岩のような皮膚をした全長10メートル級の大型ドラゴンである。

 単体でも大ボス扱いの強敵だが、島には約50体が棲息していた。


 アースドラゴンだけでも十分に厄介で危険だ。

 しかし、この島にはさらに強い魔物が棲息していた。


 アースドラゴンの王――アースドラゴンキングだ。

 A級の大ボスである。

 アースドラゴンをさらに巨大化したような見た目だ。


 キングは盆地の中央にある小さな火山で眠っている。

 目を覚ますことは数年に一度しかない。


 だが、ひとたび目を覚ますとこの上なく厄介だ。

 大量のアースドラゴンを引き連れて海を渡り、人の世界に襲いかかる。


 そうならないよう事前に掃除するのが今回の特殊クエストだ。

 仮にキングが目覚めても、単体であればいくらでも対応できる。

 故にクリア条件はアースドラゴンの殲滅かキングの討伐だ。

 もちろん、その両方をこなしても問題ない。


 アースドラゴンは1体倒すごとにクエスト攻略3回分として扱われる。

 キングは30回分だ。


 クエストには複数のPTが参加する。

 今回は約20のPTが参加しており、総勢はちょうど100人だ。


 だが、PT間での奪い合いは発生しない。

 他所のPTが倒した分もカウントされるからだ。

 そのため、このクエストでは皆が仲間である。


「今から不安ですよ、私!」


「ああ、俺もだ」


 ルシアスたちはドラゴンアイランドへ向かうための船に乗っていた。

 船は大きな帆船で、特殊クエストに参加する全ての冒険者が乗っている。

 一様に30代半ばから40代のベテランばかりだ。


「えらい若いPTだなぁ。そこの二人、ハルカちゃんより若いんじゃないか?」


 スキンヘッドの大男が近づいてきた。

 男の言葉に対し、ハルカが「そうよ」と笑みを浮かべる。


「チーム名は〈命知らずトリオ〉ってところかしらね」


「本当にその通りだぜ! で、ランクは?」


「「Fです……」」


 ルシアスとミオはビクビクしながら答える。


「Fだってぇ!?」


 大男が周囲に聞こえる程の声で驚く。


「何がFなんだ?」


「好きなおっぱいの大きさか? 俺はGだぜ」


「俺はDだが?」


 他の冒険者が反応する。


「ハルカちゃんが引っかけてきた若い子らだよ。この二人、F級だとさ」


「おいおい、Fはまずいだろ。自殺志願者なのか?」


 周囲の人間が「大丈夫かよ」「無謀だ」などとざわついている。

 純粋に二人のことを心配しての発言だ。


「えっと、その……」


「俺たちは……」


 しどろもどろの二人。

 一方、ハルカは自信に満ちた表情で「大丈夫よ」と言い放つ。


「この子らはただのF級じゃない。私が見込んだ“スペシャル”なんだから」


「そいつぁ楽しみだ」


 スキンヘッドの男はルシアスに近づくと、彼の肩をポンポンと叩いた。


「ハルカちゃんのお墨付きといえども所詮はF級だ。俺を含めてこの場にいる連中の中にお前さんらの活躍を期待している者などいない。だからまずは死なないことを最優先に考えろ。寄生上等だ。無事に生還したらメシを奢ってやるからな」


 他の冒険者が頷いて同意する。


「いい人ばかりですね、皆さん……!」


 ミオが目をウルウルさせる。


「邪魔にならないよう頑張らないとな」


「はい!」


 二人はやる気を高めた。


 ◇


 船がドラゴンアイランドに到着した。

 冒険者が続々と船を下りていく。


 海岸のすぐ向こうに外輪山があるけれど、それを登る必要はない。

 先人たちのこしらえたトンネルが用意されているからだ。

 そこを通れば外輪山を抜けて盆地へ行くことができる。


「いいか? 念のために確認しておくぞ?」


 トンネルの中から盆地を睨みつつ、A級冒険者のロイドが言う。

 この中でもっとも知名度が高く、実績の豊富な冒険者だ。

 誰もがこの場のリーダーとして認めていた。


「最初の作戦はアースドラゴンの殲滅だ。殲滅が終わった時点でキングが起きていなかったらそのまま帰還する。キングが途中で起きた場合は、俺のPTがキングを引き付けるから、その間に他のPTでアースドラゴンを殲滅してくれ。そして、最後にみんなでキングを倒す」


「異論なし」「同じく」「問題ない」「いいぜ」


 続々と同意の言葉が飛び出す。

 ルシアスは小さな声で「すげぇ」と呟いた。


(これが上位の冒険者か……。ロイドさんも凄いけど、他の人もカッコイイな。俺もいつかこんな人たちみたいになりたいぜ)


 幼少期に抱いた冒険者に対する憧れ。

 その時の気持ちを思いだしていた。


「ハルカ、お前のPTもそれで問題ないか?」


「ありません!」


 そう叫んだのはルシアスだ。

 無意識に返事をしてしまった。

 ハルカとミオは驚いた様子で目をぱちくりさせる。


「落ち着け、新米」


 ロイドが呆れ笑いを浮かべる。

 他の冒険者も笑いながら温かい言葉をかけた。

 ルシアスは恥ずかしさから顔を真っ赤にする。


「ルシアスの言った通り、私たちもそれで問題ないわ」


 ロイドは「決まりだな」と頷く。


「船で決めた組み合わせに従って10組に分かれて戦うぞ。者共、武器を取れ。大金を稼ぐ時間だ!」


 皆が各々の武器を持つ。

 ハルカは剣を、ルシアスとミオはアサルトライフルを構えた。


「戦闘開始!」


「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」


 冒険者たちはトンネルを出て、一斉に盆地へ駆けだした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ