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どう転んでも  作者: 桧斐 六子
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3.結論として

「・・というわけで」


シミュレーションモニターを見つめていた2つの人影。その輪郭ははっきりせず、強い光に包まれている。


ここは、まだ生まれる前の魂たちがその準備をするための場所だ。2人のうち、男性の方が話している。


「今のシミュレーションでわかったでしょう?どう転んでも僕たちは結ばれる。だから、心配しなくても大丈夫。あなたの方が少し先に生まれても何の問題もないってこと、わかってくれましたか?」


「・・全てはこの通りにうまくいけば、の話です。・・地球では、女性の方が年上だとかなりハンデになることは、あなたも知っているでしょう?そのせいでたくさんの魂が予定していた出会いを成就できずに終わっていることも。だから、もしかして私たちも・・って思うとなんだか心もとなくて落ち着かないの」


女性はまだ納得しきれずに食い下がる。


「でも、あなたはそのタイミングで生まれると、自分の課題に一番効率的に取り組む人生を生きられるからそう決めた。僕もそうです。僕たちは出会う前に、まず自分1人で片付けておくべきことがいくつかある。だから、これがベストなのだと、それはあなたもよくわかっているはずだね」


男性は諭すような口調で優しく言った。


「・・わかっています。全部よくわかっているの。ごめんなさい。地球に生まれるってかなりのチャレンジなんだって、何度か経験して身に染みているから、つい・・。魂の記憶をリセットして生まれて、予定通りに人生を生きられるって本当に難しいことだから・・。あなたと出会って一緒に生きる人生を、今度こそ実現させたくて・・」


女性は胸の内を吐き出した。


「気持ちは僕も全く同じです。でもこれが地球のルールだ。ここに生まれる以上、従うしかないし、これまで自分たちが創り出してきた課題は自分たちで解決していくしかない。誰のせいでもない・・」


男性は冷静に言う。しかし女性を優しく見つめて続けた。


「確かに僕らはお互いのことも、ここで計画、約束していることも全て忘れて生まれる。でも、この想いの欠片はきっとどこかに残ると僕は信じています。そして必ず僕たちは出会って惹きあうと。忘れることを怖がらないで、2人の愛の絆を信じよう。僕たちはきっと思い出せるのだから」


男性は女性を優しく抱きしめた。


「心配するよりも僕は楽しみにしているんです。又一から出会ってあなたを好きになれることをね。少し時間がかかったとしても、その甲斐はあったと感じられる人生にしていきたい。いや、必ずそうしていこう。2人で」


「・・わかったわ。私もあなたに会えるワクワクする気持ちだけを持っていきます。その想いを私の人生の羅針盤にして。だから、お願いです。私を必ず見つけて。待っています」


「ええ。必ず。あなたを見つけます。どうか、僕を信じて待っていて。たとえ時間がかかっても、必ずあなたの元にたどり着くから」


男性は彼女に優しく口づけをした。


「そろそろあなたの生まれる時だね・・。しばらくお別れだけど、大丈夫。すぐに会えるから。僕も5年ほど後に行く予定ですからね」


固く抱き合っていた腕が離れる。そして女性は微笑んだ。


「・・ありがとう。全部わかってはいたけれど、最後にもう一度あなたの口から出る言葉を確かめたかったの。私のわがままに付き合ってくれてありがとう。これで私は何があっても、あなたと出会うことを信じていく覚悟ができました。それじゃあ行きます・・」


生まれるためのゲートに向かうため、シミュレーションルームから出ようとする女性の腕を捕まえ、もう一度男性は彼女を自分の腕の中に閉じ込めた。そして、万感の思いを込めて告げる。


「愛している。必ず、必ず、あなたを見つけると約束します」


「私も、愛しています。地球で再会して、又こうしてあなたに抱きしめてもらえる日を楽しみに生きているわ」


そして、女性は男性の腕からすり抜け、1人で部屋を出て行った。


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