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11. くまさんとカイトくん

くまさんはカイトに協力を頼みました


「今日だけでいいから、助けて」


 頭を下げる。カイトくんの顔は見ていない。


「いいよ」


 思いの外あっさり言って、カイトくんは僕の頭をくしゃくしゃ撫でた。


「え、いいの!?」


「うん。喋って動くぬいぐるみなんてどんなものかと思ったけど、意外と話通じそうで安心だわー」


 そう言うと僕をひょいと持ち上げた。


「さぁて、そうと決まれば明月を助けるぞー!」


「おー!」


 こうしてカイトくんがみぃちゃんのために協力してくれることになった。


              ※※※


「なあくまさん」


「なに?」


 学校の廊下を歩きながらカイトくんが声をかけてきた。僕は今、カイトくんの腕の中にいる。これ、絶対目立ってる。


「本当に今日、明月が事故に遭うのか?」


「今さら疑うわけ?」


「いや、念のためにな…」


 カイトくんはもじもじする。


「それより、目立ってるよ」


「え?そう?」


 明らかに女子の視線が集まっている。きゃー、なんて黄色い悲鳴もあちこちから聞こえる。


「別に普段とかわりないけどなぁ」


「…じゃあカイトくん、モテ男なんだね」


「へ?おだてたって何も出ないぞ」


 これは…天然だな。気付いてないうちにモテてるのか。僕を抱えていることで、「かわいー」と言う声も聞こえる。


「ていうか、明月に言えばいいじゃん?今日一日気を付けろーって」


 はっ、俺天才か…?とかなんとかつぶやくカイトくんを呆れながら見た。


「僕、みぃちゃんにはただのぬいぐるみだから。人間と話したのなんて、カイトくんがはじめてだよ」


「そりゃあ光栄なこった」


 でもそれじゃ面倒くさくね?というつぶやきを僕は聞き逃さなかった。


「じゃあ訊くけど、いきなりぬいぐるみが話し出したらどう思う?」


 普通に怪奇現象だ。みぃちゃんのお母さんが気味悪がるのもわかる。


「そりゃあ驚くだろうけど、まあ夢ではあるかな」


「ゆめ?」


「子供の頃とか、一度は夢見るもんだよ。自分の絶対的な見方であり、常に友だちであるぬいぐるみとかと実際に話したい、ってね。俺の場合恐竜の人形だったけど。あ、アレックスって名前付けてたなあ」


 ふうん。そんなものなのか。


 そういえばみぃちゃんも、前に、


『あーあ…くまさんも喋れたらなぁ』


って言ってた。まあ、叶うとは思っていないんだろうけどね。


「僕、人前で目立ったら消されちゃうかもしれないんだ」


「何それ」


「おんなじ付喪神仲間のコンって子がね、怖い神さまもいるから気を付けろって言ってたの」


「こえー」


 カイトくんは話しやすい人だった。話していて、この人といるのは快適だな、と思う。いや、みぃちゃんが一番だけど。


「じゃあ俺は今日明月を命懸けでボディーガードすれば良いってことだね?」


「そうそう。よろしくね、ほんとに。」


 また眠気が襲う。


「だめだ、眠い…」


「お?どした?」


「前もそうだったの。しばらく動くと眠くなっちゃって…」


「おまえ、食事は?」


「見てわかるでしょ。無理だよ、しない。」


「じゃあエネルギーの代償かもな。きっと明月は学校にいる間は大丈夫。学校終わったら起こしてやるから、それまで寝とけよ」


 カイトくんは優しく僕をなでた。優しく笑いかけている。それが心地よくて、僕はまたまぶたを閉じた。


 みぃちゃんを頼んだよ、カイトくん…僕は心からそう思った。

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