第30話 隠れ家顕現
「ここら辺でいいだろ。イリア風魔法で俺たちを運んでくれないか?」
「……できるには出来ますけど、詳しい座標がわからないと難しいですよ?」
「そこら辺は飛んでる最中に言うから大丈夫だ。アルカは俺たちが飛んでいる間に炎魔法で周囲に陽炎を展開して外から見えないようにしてくれ。できるか?」
「わかった。任せておけ」
森を出た俺たちはイリアの魔法で空を飛ぶ。
ここまで来たらルナセリアの魔法探知に引っかかることもないだろう。
万が一に備えてアルカには陽炎で周りからは見えないようにしてもらっているし、そうそう何かが起こるとは考えいにくい。
「それで、どこに向かって飛べばいいのですか?」
「とりあえずは、ハイレス王国の国境付近まで飛んでくれたらそれでいい。国境の手前数キロ地点で降りてくれ」
「わかりました」
エスカの言葉を信じるのであれば、そこら辺に俺が昔使っていた隠れ家が存在しているはずだ。無くなっていたらこれからどうするかを真剣に考えないといけなくなる。
まあ、それは行ってみてから考えればいい話だよな。
俺はそう自己完結をしてイリアの魔法でハイレス王国の国境付近まで一気の飛ぶのであった。
◇
「ここがハイレス王国の国境付近か。初めて来たな」
「僕も初めてだ。こんな感じだったんだな」
「……」
周囲に広がるのは焼け焦げた草木で今となっては草木の形を保っているだけの灰になっている。
ここに来るのは三年ぶり。
前に来た時と全く変わっていないようで、なんだか悲しくなる。
ここだけ時間の流れから切り離されてしまったのではないかと思うほどだ。
「確か、三年前に行われたハイスカイ王国とグランド帝国の戦場もこの草原じゃなかったか? あの時はイリアがハイスカイ王国奪還作戦の指揮をとっていたはずだよな?」
「はい。あの戦場は酷かったですね。とてつもない魔法攻撃の嵐が繰り広げられ、綺麗な緑で溢れていたこの地はご覧の有様です」
イリアは周囲を痛ましそうに見渡しながらアルカに説明をする。
確かにあの時は酷かった。
火炎魔法と風魔法の合わせ技で炎の竜巻が生み出されたりしていた。
「僕でもそんな戦場には行きたくないぞ。命がいくつあっても足りない」
「ですね。あの時は傭兵なんてどれだけ募集しても来ませんでしたし、来なくて正解だと思いますよ」
「俺もそう思う。あんな死体の山が積み重なる場所に嬉々として行ってるやつはイカれてるだろうしな」
俺もあの戦場に居たが、本当に凄惨と言う二文字が合うような地獄絵図だった。
できることならあんな所には二度と行きたくない。
「それより、レイスの隠れ家はどこにあるんだ? 全く見当たらないが?」
深紅の髪を揺らしながらアルカが訪ねてくる。
確かに見渡す限り更地だし、ここら辺に隠れ家があるとはだれも思わないだろう。
だからこそ、隠れ家としても価値があるともいえるんだけどな。
「ここだ。この少し地面が盛り上がってるところ」
「ん? 言われてみれば少しだけ盛り上がって見えるな! でも、ここのどこが隠れ家なんだ?」
「この土に俺の魔力を流すだな」
言いながら盛り上がった土に触れて魔力を流し込む。
少しすると、音を耐立てて地面が動き始める。
「これは!?」
そうして現れたのが、俺の隠れ家だった。




