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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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25/80

25.不注意

ブクマ20件、ありがとうございます!

 部屋で出かける準備をしていると、コンコンとノックの音が聞こえた。


「ミキ、行くぞー」

「あ、うん、すぐ行く!」


 今日は水曜日。市立の体育館で練習の日だ。

 扉を開けると、拓真くんが迎えてくれる。


「お待たせ!」

「おうっ」


 急いで鍵を締めると、拓真くんの隣に立って歩き始める。七月に入ってかなり日は長くなっていて、七時前だというのに外はまだまだ明るかった。

 こうやって歩くの、最初はすごく緊張したけど、最近はようやく慣れてきたかな。


 体育館に着くと、いつも一番に晴臣くんが来ていて、準備をしてくれている。私も荷物を置くと晴臣くんに駆け寄った。


「あ、ミキさん!」

「ネットつけるんでしょ? 手伝うね」

「助かるっす!」


 晴臣くんと一緒にネットを出し、両側に分かれてネットを取り付ける。

 付け終えると晴臣くんがボールを用意しに行っている間、私は二階に上がって真ん中に仕切られる緑のネットを下ろす。今日の体育館は、バドミントンと半分ずつだ。


「ミキ、手伝うよ」


 準備を終えた拓真くんが上がってきて、一緒にネットを下ろすのを手伝ってくれる。下では結衣ちゃんが待機していて、下ろしたネットを引っ張って仕切ってくれた。

 こういうことは慣れてきたし、球拾いはそんなに好きじゃないけど、ボール出しは結構好き。

 それに結衣ちゃんに教えてもらって、バレーのルールやポジションの役割もやっと覚えてきた。流れ弾は怖いけど、それさえ気を付ければバレーの練習に付き合うのはすごく楽しい。拓真くんもいるしね。


 この日もいつものように練習が開始された。それから大体一時間経つと、全体休憩が入る。


「十分きゅうけーい!」


 一緒に練習してるおじさま〜ずのキャプテンの指示が飛んできた。

 休憩の後は、いつもオカシ対おじさま〜ずの試合が一セットだけ行われて、次の試合はオカシとおじさま〜ず混合のチームで試合がされたりする。

 一旦コートを出て給水を済ませた晴臣くんが、三島さんに向かって声を掛けている。


「すんません、三島さん。試合始まる前にちょっとAクイックの練習させてもらっていっすか? 今日は大和さん休みだから、俺がスパイカーだし」

「ああ、もちろん。ごめん結衣ちゃん、ちょっと球出ししてもらえる?」

「いいですよー!」


 三人はコートに戻って練習を始めた。

 あれだけ動いた後で、晴臣くんは元気だなぁ。

 私はみんなと話しながら休憩をしていると、バドミントンのシャトルがバレー側に飛び込んでくるのが見えた。

 真ん中を仕切っている緑のネットの幅が広くて、たまーに合間を潜って入ってきちゃうんだよね。

 バドミントンの人は遠慮しちゃって、どうしようかとこっちを見てる。

 私はそのシャトルを取ってあげようと立ち上がって、バドミントン側へと小走りに近付こうとした。


「ミキッ!」

「危な──」


 そんな拓真くんとヒロヤくんの声の直後。


 ドガガガンッ!!


 ものすっごい音がして、私は吹っ飛ばされた。

 肩をしたたかに床に打ち付けて、すぐに立ち上がれずに頭をゴロンと転がした。

 うわぁ……目の前が真っ暗……

 な、なにが起こったの?


「きゃーーーー、ミキさん!!」

「すんません!! 大丈夫っすか!?」

「ミキッ!」

「ミキさん!」

「ミキちゃん!」


 い、痛い……。

 あ、バカだ、私……晴臣くんがスパイクの練習してたのに、ついコートを横切っちゃったんだ。

 頭にボールが当たって、思いっきり吹っ飛ばされちゃった。すごいんだなぁ、バレーのスパイクって。


「ミキさん……」


 そっと目を開けると、つらそうな晴臣くんの顔が飛び込んでくる。


「ご、ごめんね、私の不注意だった」


 起き上がろうとするのを、結衣ちゃんが助けてくれる。

 わわ、しかも鼻血出てるじゃない、私!


「ミキ、これ使って」


 差し出されたのは、拓真くんのタオル。


「え、いいよ、汚れちゃう……」

「いいから!」


 結局タオルをグイッと押し付けられて、仕方なくそれを使わせてもらった。


「頭にまとも入ってたな……」

「すんません、ミキさんっ!!」

「いや、だから私が悪かったんだから……気にしないでね、晴臣くん。床には頭ぶつけてないし、鼻血が止まれば大丈夫だよ。ホントごめんね」


 そう言っても、まだ晴臣くんは肩を落としてたけど。

 私はこれ以上みんなに心配かけちゃいけないと、自力で立ち上がる。見ると、一ノ瀬くんがバドミントンのシャトルを拾って返してくれていた。

 体育館の端っこに行って座ると、鼻の根元をギュッと押さえて鼻血が止まるのを待つ。晴臣くんがすごく気にしてくれていたけど、休憩時間も終わったから、練習に戻ってもらった。

 私のせいで、みんなに気を遣わせて申し訳ないことしちゃった……。

 仕事じゃこんなミスはしないのに……浮かれて、調子に乗ってたのかな、私。


 罪悪感に駆られながら、一セットマッチの練習試合を見守る。

 さっきのことが影響したのか、晴臣くんの動きにキレはなかった。

 オカシな国チームが負ける頃には鼻血は止まっていて、私はお手洗いに向かった。


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