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思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜  作者: 長岡更紗


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24/80

24.心配

 自分の部屋の前まで来て、アパートの鍵を取り出そうとしていると、唐突に隣の部屋の扉が開いた。


「ミキ!」

「た、拓真くん?」


 その形相にビックリしてしまう。

 だって、なんていうか……必死。それだけを絵に描いたような顔だったから。


「どうしたの?」

「どうしたのって……途中からパッタリ連絡来ねーし、電話しても電源切られてっし」

「あっ」


 私は急いでスマホの電源を入れた。

 拓真くんからの着信とメッセージが、いくつも入ってる。


『とにかくホテル出ろ』

『大丈夫か?』

『迎えいった方がいいなら言って』

『ミキがいいなら問題はないけど』

『マジで泊まり?』

『帰ったら連絡くれ』


 そのメッセージを見ただけでわかる。

 なんか、すごく……心配させちゃったみたい。


「ご、ごめんね! 連絡できなくて……」

「大丈夫だったのか? 三島さんに電話しても、サイレントにしてたのか出ねぇし……なんもされてねぇ? あ、いや、別に合意の上なら、俺が口出せる問題じゃねんだけど」


 ちょ、合意の上って!


「な、なににもなかったよ!? 今回はそんなに飲まないようにしたし、普通にお話してただけだから!」

「本当に?」

「本当!」

「なんか嫌なこともされてねぇ?」

「されてない!」


 そう伝えると、拓真くんは大袈裟にハーッと息を吐き出して、しゃがみ込んでしまった。


「拓真くん? あの……」

「心配した!!!!」


 しゃがみ込んだまま、キッと顔だけを上げて怒られる。

 ビックリしたけど。申し訳なくも思ったけど。

 その一言が、なにより嬉しかった。


「マジで、ミキになんかあったらどうしようかと思った。グランドホテルに乗り込もうかとも思ったけど、ミキが三島さんとそういう関係になりたいなら、俺は邪魔だろうし。でももし、ミキが困ってたらと思うと、いても立ってもいられなくて、本気で悩んだ!」


 うわ……ずっと、私が帰ってくるまでこんな思いをさせちゃってたんだ……。

 ごめんね、拓真くん……。

 拓真くんは言い終えると、スッと立ち上がった。私の視線はいつものように高くなる。


「心配掛けて、本当にごめんなさい! でも三島さんには婚約者もいるし、そういうことにはならないから大丈夫だよ。私の看護師仲間が三島さんの婚約者で……披露宴の打ち合わせをしてただけだから!」


 理由を告げると、今度はホッと息を吐いていた。


「なんだ、俺の取り越し苦労か……でも、よかった」

「そんなに……心配してくれたの?」

「あったり前だろ!! もしミキになにかあったら、俺は──」


 ドキンと胸が高鳴る。

 嬉しさが、ピークを超えてしまいそう。

 もしかして、拓真くんは私のことを……


「母さんとリナに、めちゃくちゃ怒られるからな!!」


 ……え。

 そ、そっちーー!?

 拓真くんはプンプンと頬を膨らませるように怒ってる。

 うん、これは嘘ついてる顔じゃないね……うう。それにしても。


「拓真くんは、三島さんが結婚するってこと、知らなかったの?」


 その質問に、拓真くんはコクンと頷いている。


「ああ、彼女がいるっぽいことはうっすら聞いてたけど。でも男女の関係なんて、彼女がいようがいるまいが、関係なくなっちまうこともあるだろ?」


 ……なに、その発言。

 実は拓真くん……色々経験者?


「た、拓真くんにもそんなことがあったの……?」

「え? まさか。俺、彼女がでできたことすらねーし。今のはただの一般論っつーか、男の本能っつーか……」


 なんかモゴモゴいってたけど、彼女ができたことすらないって言葉に安堵してしまう私がいる。


「と、とにかく、もう心配させんなってこと!」


 ちょっと照れ臭そうに口を尖らせる拓真くん。

 なんかこう言ってもらえることが嬉しいな。


「ふふ、はーい」

「こら。俺は真剣に言ってんだぞ!」

「はい、ごめんなさい! でも本当にありがとう拓真くん。心配してくれて、すごく嬉しかった!」


 最後にニッコリ微笑んで見せると、ようやく拓真くんも笑顔を見せてくれた。


「まぁ、年下の俺じゃあ頼りないかもしれねーけど、なんかあったら頼ってくれよ」

「ううん、すっごく頼りにしてるよ」

「あんまり頼りにされても困るから、ちゃんと自重してくれな」


 うぐっ。

 拓真くんって、引き寄せた後で突き放すんだよねー。

 まぁ、らしいと言えばらしいんだけど。


「っま、ミキが無事でよかったわ!」


 そう言ったかと思うと、拓真くんの大きな手で私の頭はガシガシと撫でられる。やっぱりちょっと子ども扱いされてる?

 拓真くんの背は高くて、私は低いから、ちょうど手が置きやすいんだろうな。

 でも、その手があったかくて優しくて嬉しくて。


「ありがと、拓真くん……」


 ますます、拓真くんへの気持ちが膨らんでしまった。

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