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成り行きまかせの人形使い  作者: リオングレオ
10/19

10 新情報

ドライアドことリーラと花ちゃん達は、僕の寝ぐらの遺跡にそのまま居着いてしまった。

 だが彼女達は、異世界に頼る者のいない僕にとって、とても心強い存在だった。なにしろ、遺跡の周囲にリーラや花ちゃん達に(かな)う魔物も動物もいなかったのだ。

 リーラ達がやって来て数日たったある日、転移初日に遭遇したサーベルタイガーが現れた。前回と違って明らかに僕を補食対象として襲ってきたのだ。けれど、僕に襲い掛かった瞬間に花ちゃん達の触手に捕らえられ、あっという間に絞め殺されてしまった。まさに瞬殺。僕は驚くヒマもなかった。食糧の肉はキングレッドボアがまだ沢山あったので、花ちゃん達に進呈して、僕は毛皮をもらった。

 

 花ちゃん達のスゴイところは、倒した獲物の処理能力にもあった。獲物の身体に傷をつけることなく、鼻や口のわずかな隙間から根を差し入れ、毛皮を残して肉や内蔵だけ取り除くことができるのだ。さすがに、骨は残るから結局腹の部分を割いて取り出さなくてはならないが、それ以外は血も肉も臭いも一切残さないのだ。

 そうやって処理してもらったサーベルタイガーの毛皮は、今は僕の寝床をゴージャスに彩っている。


 花を咲かせたリーラの木の内部には今、その花の蜜を餌にする蜂が住み着いている。

 遺跡に移っ来て3日ほど経ったある日、金色をした(てのひら)サイズの蜂を僕に会わせてくれた。木のウロに巣をつくる蜜蜂の女王蜂だった。この蜂、女王と巣を守る戦闘蜂以外の働き蜂は蜜蜂ほどのサイズだが、その毒針は強力で、働き蜂ですらオーガを数匹で倒すほどなんだそうだ。

 蜂は蜜をもらい、リーラは身を護ってもらう為に自身の木の中に住まわせる。つまりは共生だ。キングレッドボアのような、リーラの力と花ちゃん達では太刀打ち出来ない魔物が現れた時の対策らしい。実はゴブリン程の知能があるそうで、女王を頂点に、蜜採集の働き蜂、幼虫の世話をする育児蜂、そしてそれを守る戦闘蜂といった独自の社会を作って生きている魔物なんだそうだ。

 リーラから、女王に名を与えて欲しいと頼まれ、ラピスラズリのような青い複眼から取ってラピスと名付けた。すると、リーラと同じく劇的変化が起きた。ラピスは、目は元のままだったが上半身は人間の女性で下半身は蜂、背から生えた透明な羽根が美しい妖精のような姿になった。驚いたことに、リーラよりも流暢に会話ができるようにもなったのだ。ただ、リーラと同じく思念のみの会話で、言葉を発することはできないそうだ。

 どうやら魔物の中には名を得ると上位種に進化する者がいるようだ。もともと持ってる知能の高さが関係してるのだろうか。

 

 ラピスはたくさんのタマゴを産み蜂はどんどん増え、わずか数日ほどでみるみる大きな群れになった。けれど、僕には決して攻撃することはなく、ハチミツのおすそ分けまで貰っている。

 虫避けに使っていた蚊取り線香は、リュックサックの底に封印されることになった。


 埴輪ことセバスは、名前のせいなのか、ますます執事っぽくなった気がする。

 毎朝火を起こして僕が起きるのを待っている。朝夕の食事の準備をし、顔を洗えばタオルを差し出す。

 そして何故か、あのゴブリンの落とし物の名剣(?)と相性がいいらしく、いつの間にか剣技を磨き、敵意を向けて来る魔物をアッサリ撃退できるほどの腕前になった。


 遺跡周辺のセキュリティは、地上は花ちゃん、空中は蜂達のおかげで万全だ。

 食糧事情もだいぶ良くなった。キングレッドボアの肉に、いつか森で遭遇したウズラに似た鳥の肉とタマゴ。水場の池にいた魚も花ちゃんが捕ってくれた。森の中で食える植物もリーラとセバスのおかげでたくさん採取できた。ハチミツもある。リーラの木に保存してもらえばいつでも新鮮な物が食える。


 「あれ?僕って何もしてなくないか?」


 焼く以外の調理方がなく、調味料がないので素材の味だけの食事と、風呂が無いのが不満なくらいで、それ以外はわりと快適な異世界生活なのだが、全て他力本願な気が…。

 こういった異世界モノでは、主人公はたいていチート能力使って俺サマTUEEEEになるんじゃないのか?だが、この場にいる僕には魔力はあるらしいけど、セバスを作れたくらいで定番魔法は全く使えない。TUEEEEどころか、最弱だ。なのにお気楽異世界生活を送っているありさまだ。

 これではイカンと思い、毎日魔法の訓練をやっている。その甲斐あって、かなりの量の魔力を身体に巡らせることができるようになった、と思う。けれど、どうやっても火や風といった魔法は発動しないのだ。

 ただ、魔石に魔力を通すとわずかに反応するので、もう少し頑張って研鑚してみるつもりだ。


 森の探索も、寝ぐらから往復徒歩6~8時間くらいの範囲はかなり進んだと思う。

 狼や熊といった猛獣や、ゴブリンやレッドボア、オークのような魔物にも何度か遭遇した。結局は、お供に付いてきてくれてるセバスや花ちゃん達、蜂に護られているため、僕が戦う場面はなかったが。

 それより奥の森には大型で狂暴な魔物が多く棲息してる上に、夜の森は花ちゃんや蜂達にとっても危険らしいので、日帰り出来る範囲しか探索できないのだが。


 「このまま死ぬまでここで過ごすしかないのか?」

 

 夜空を見ながら考える。リーラの話しでは、今僕がいるこの島?大陸?一応大陸だと思うことにする。ここの人間は全て数千年前に去ったらしい。ならば他の大陸にはいるのかと聞いたら、わからないとの返事だった。

 地球に帰る方法を探すなら人間を探さなければならない。それにはこの大陸を出なくては。なのに、この森すら抜けることができない。

 万事休す。

 

 「他の大陸のことを知ってるヤツってこの森にはいないのか?」


 打開策がまるで思い浮かばず、ボヤキ半分でつぶやいた。他に大陸のことは、リーラや、会話が出来るようになったラピスにしつこいほど尋ねた。彼女達は、この地で生まれいつかこの地で朽ちる自分達が知る必要のないことは分からないと答えるだけだった。日に日に落ち込む気分のまま期待せずにボンヤリと口に出した僕に、リーラが爆弾を落とした。


 『他の地のこと、西の森の奥、山の麓に住む魔女に聞けばいい』

 

 「は?」


 なんだとっ!魔女!?この大陸に人間は居ないんじゃなかったのか!?

 異世界生活3週間目の驚愕の情報だった。


 

 

 


 

 

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