(物理的に)炎上しちゃったときには謝罪動画だぜ
ベルクハイムを離れた俺は、ここ冒険者都市で冒険者として生活している。
攻略動画の配信が案外評判がよく、色々なパーティーに誘ってもらえるようになってきていた。
まあ生活に困らないのは俺の撮影スキルのおかげではある。
薬草だとか鉱石だとかの採集クエは爆効率で実施できる。
そうして生まれた余裕で動画撮影に精を出している。
いいサイクルができているんじゃないかと思う。
観測神ルミアの信者も動画から入信してくれる口ができたため、まずまず調子がいい。
もうそろそろ50人を超えそうな勢いで、ルミアもますます調子に乗っている。
そろそろ、動画撮影のため、本当の仲間「撮影クルー」が欲しくなってきた。
撮りためた動画を編集しながらそんなことを思うのであった。
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「……やっぱおかしい」
沼地の映像を見返しながら、俺は呟いた。
《観測》で撮影した映像。
空中へ半透明で浮かぶ沼地の光景。
泥。
毒沼。
巨大蚊。
飛び跳ねるカエル。
そして。
バチバチッ!!
雷魔法が沼へ着弾した瞬間。
ぼこぼこと大量の泡が吹き出していた。
『トールさん、もう五回くらい同じところ見返してますよ?』
「だって気になるだろこれ」
俺は映像を停止する。
雷着弾地点。
泡。
しかも。
端っこの草が、微妙に燃えている。
「……これ、ガスだよな?」
『ガス?』
「前の世界で見たことある」
湿地。
腐敗。
可燃性ガス。
雷魔法を受けて分解されたかなんかか?
名前まではうろ覚えだけど。
とにかく。
「燃える気がする」
『また始まった』
ルミアが遠い目をした。
失礼な。
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数時間後。
俺たちは実際に沼地へ来ていた。
同行メンバーは、前回と同じ新人混じりのパーティーだ。
槍使い。
盾役。
回復役。
火魔法使いの少女。
そして。
雷魔法が得意な魔法使いの青年。
「いやまあ、別にいいけどさ……」
魔法使いが胡乱な目を向けてくる。
「本当に検証だけなんだよな?」
「もちろん」
「前もそう言って毒沼のカエル集めまくってたよな?」
「必要な調査だった」
『今回はもっと嫌な予感します』
「ルミアまで言う?」
パーティーメンバーがため息を吐く。
でも。
付き合ってくれる。
なんだかんだ。
最近は一緒に組むことも増えた。
最初は、
“変な攻略オタク”
扱いだったのに。
今では、
“まあ死なない程度には考えてる奴”
くらいには認識が改善されていた。
多分。
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「で、何するんだ?」
雷魔法使いが杖を担ぐ。
俺は沼を指差した。
「まず電撃流して」
「うん」
「そのあと火をつける」
「うん?」
「爆発するか見る」
「うん???」
全員が変な顔をした。
当然だ。
俺もちょっと変なこと言ってる自覚はある。
でも。
「前回、雷効かなかっただろ?」
「ああ、カエルの皮が絶縁っぽかったな」
「でも沼が反応してた」
ぼこぼこ泡立ってた。
つまり。
「沼そのものが燃える可能性がある」
沈黙。
魔法使いが真顔で言った。
「トール、お前さ」
「うん」
「たまに頭良いのか馬鹿なのか分からなくなる」
「よく言われる」
『私はずっと馬鹿寄りだと思ってます』
ひどい。
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準備は始まった。
まず周辺の安全確認、そして退避ルート。
更に盾役と回復役が待機。
一応かなり慎重だ。
「じゃ、いくぞ」
雷魔法使いが杖を沼に突っ込む。
俺は動画の撮影を始める。
青白い光。
バチバチと音が鳴る。
《雷撃》。
放電。
電流が沼の中を縦横に走る。
バチィィィィッ!!
次の瞬間。
ぼこぼこぼこぼこぼこっ!!
大量の泡。
泡。
泡。
泡。
『うわっ!?』
「やっぱ出てる!!」
沼全体が異様に泡立つ。
しかも、臭い。
なんか臭い、硫黄っぽい。
「あーこれいけるんじゃない?」
「おい急に怖くなってきたんだけど」
魔法使いが後退る。
でも俺は興奮していた。
このフィールドのギミックを解いた嬉しさ。
「もうちょい流してくれ!」
「マジかよ……」
追加放電。
さらに泡立つ沼。
ぼこぼこぼこぼこっ!!
なんかもう沸騰してるみたいだ。
『トールさん表情が研究者なんですよ』
「男の子は爆発が好きなんだよな」
『最低』
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そして、期は訪れた。
準備完了。
俺たちは十分距離を取った。
「……じゃあ、いくか」
火属性担当の少女が、小さな火球を作る。
ぽわり、と小さい火。
本当に小規模。
着火用、それだけ。
「せーの」
火球が飛ぶ。
ぽちゃん、と沼へ落ちた。
一瞬、何も起きなかった。
「……あれ?」
次の瞬間。
ドゴォォォォォォォンッ!!!!
世界が吹き飛んだ。
「「「うおおおおおおっ!?」」」
火柱。
爆炎。
衝撃波。
沼が、爆発した。
いや、沼地の“全部”が爆発した。
ドゴン!!
ドゴォン!!
離れた毒沼。
底なし沼。
泥地。
各地から次々爆炎が噴き上がる。
『ぎゃあああああああ!?』
「えっちょっ待っ」
火柱が空へ伸びる。
木が吹き飛ぶ。
泥が降る。
カエル型魔物が空中を回転して飛んでいった。
巨大蚊がまとめて燃え落ちる。
遠くの方で王冠被ったカエルがぶっ飛んでる。ボスかなアレ……
地獄だった。
控えめに言って。
地獄だった。
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数分後。
そこに沼地はなかった。
焼野原だった。
「…………」
全員無言。いや火魔法使いの女の子はシクシクと泣いている。
近くの草むらは黒焦げだ。もともとジメジメしていたところだ森へ延焼せず良かった。
煙。
ところどころはまだ燃えてる。
沼特有のジメジメ感すら消えている。
『トールさん』
「はい」
『やりましたね?』
「やっちゃったなぁ……」
パーティーメンバーも呆然としていた。
でも。
《経験値取得》
《レベル上昇》
頭の中へ流れ込む感覚。
魔物が、大量に、死んだ。
「……レベルめっちゃ上がってない?」
「上がってる……」
「いや笑えねぇってこれ」
「沼地消えてるんだけど!?」
完全にやらかし案件だった。
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そんな中。
ルミアが静かに呟いた。
『……これは』
「うん」
『謝罪動画ですね』
「だよなぁ……」
俺は遠い目で、燃え続ける沼地を見た。
そして。
そっと魔導カメラを構えた。
「……みなさん」
撮影開始。
「この度は誠に申し訳ございませんでした」
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ルミア『ご入信もお待ちしております』




