プロローグ
異常に発達した積乱雲の中、1機の飛空船が雲をかき分けていた。
ドワーフの船長が、その身長に似合わない太い腕で、総舵輪を回す。
暴風と雷に逆らう船体はギシギシと悲鳴を上げていた。
「ぼうず!もうこれ以上は近づけん!船が持たんぞ!!」
「おっちゃん、ありがとう。ここからはこっちでやるよ」
スキルで作り出したカメラを準備しながら、俺は船長に伝える。
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インカムを模した魔道具にチームの状況を確認する。
「魔導クルー準備はどうだ?」
「こちら魔導クルー、飛行魔法及び耐電耐衝撃魔法準備完了」
俺の体を薄い膜のようなものが覆っていく。
「探知クルー、状況を」
「探知針、カメラとの同期問題ない。スクリーンの方も正常だ」
これでカメラで得た情報を直接狩猟班に送れる。
「狩猟クルー、ステュー、行けるか?」
「こちらステューリア・グラン、行けるよ!バッチし撮ってよね!」
「了解。言われなくとも」
手の震えを押さえ込みながら、カメラを構える。
再度カメラの調子を確認し、俺は大荒れの雲海へと飛び込む。
「『雷雲龍を討伐してみた。』配信開始します!!」
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ひどい嵐で視界も不良だが、なんとか飛行魔法は機能している。
龍が隠れる嵐の中心までこのまま進めるはずだ。
「飛行魔法問題なし、今のところ手足もくっついてる」
「…ザザッ…飛行魔…ザッ残り時間に気をつ…ザッ」
魔力を持った雷に囲まれているせいかノイズが強くなってきた。
作戦時間内にドラゴンを捕捉しなけりゃいけない。
中心に近づくにつれ雷はその密度を増し、視界の中で光ってない部分を探す方が難しい。
それでも嵐をかき分け進むうちに、暴風と雷の爆音に混じり、獣の唸り声のような音が聞こえ始めた。
稲光の最も濃い場所に目を凝らすと、どこか爬虫類のような針のように細長い瞳孔がギョロリとこちらを睨みつける。
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「目標捕捉。接近撮影に移行する」
カメラを構え、敵影に向かって雲海を泳ぐ。
さっきは完全に捕捉されたかとビビったが、どうやらおおよその方向だけ検知されていたようだ。
真横に雷が走るが直撃コースからは外れている。
「眼はそこまで良くないようだ。逆鱗の位置が把握できる距離まで近づきます」
さらに近づくと全容が見えてきた。
荒れ狂う嵐と雷の中、それは驚くほど優雅に嵐を泳いでいた。
深い緑色の鱗をうねらせ、雲海を滑る姿はドラゴンというより、まんが日本昔話のアレだ。
頭にある2本の角から、魔力の渦が肉眼で確認できるレベルで発生している。
どうやらあれが雷の発生源のようだ。
対象の生態を観察しながら、その弱点を探す。
「逆鱗の位置確認、探査針起動!…ッ流石に気付かれるか!」
こちらに気付いた雲海の主が、雷を操り攻撃を仕掛けてくる。
オゾン臭が鼻をつく。
ギリギリで避けられているがこのままでは、黒焦げになるのは時間の問題だ。
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「ステュー、そろそろ探知できると思うんだけど出れそう?」
「ステューリア、もう出ている!!」
「は?」
龍のさらに上空から雲と雷を切り裂き、その身体よりもでかい大剣を構え女の子が落ちてくる。
その神秘的な光景をカメラで捉えながらも、どこか見惚れている自分がいた。
大剣の質量と自由落下のエネルギーを味方につけ、ステューは寸分違わず逆鱗の位置にその剣を突き立てる。
甲高い断末魔とともに龍は墜落を始めた。
それと同時に、嵐が止み、さっきまでの天候とは打って変わった笑えるほどの晴天が顔を出す。
『ステューちゃんキター』
『天使』
『神回!!』
『スキルいくつか組み合わせたら、案外再現できそう?』
『入信します』
『雷雲龍狩れるのなら、飛空船の航路めちゃくちゃ広がるぞこれ!』
『これ、ギルドが黙ってないだろ……』
戦っているときは邪魔だから切っていたけど、視聴者からのコメントも大盛況だ。
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「これは、撮れ高申し分ないぞ…!」
この後の配信について考えていたら、ステューが龍から飛び降りこちらに向かって落ちてくる。
「えへへ、カッコ良く撮れた!?」
嵐から顔を出した太陽よりも、眩しい笑顔でステューが抱きついてくる。
頭に付いた三角の猫耳もピョコピョコ喜んでいる。
『天使』
『可愛すぎる』
『入信しました』
「ああ!最高の討伐シーンになったよ」
俺は、最高の演者に最大の賛辞を贈る。
『嵐の影響か画質微妙だったよ』
『事前準備とかも教えてほしい!』
「みんなも観てくれありがとう。
準備情報含めて高画質版を攻略チャンネルのほうに流すんで、そっちもよろしく!」
じゃあいつもの言っときますか。
「「皆さんのご視聴が、観測の女神ルミア様の力になります!
お気に入り登録とご入信、よろしくお願いします!」」
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「ステュー、配信終わったよ。そろそろ飛行魔法が切れるから、魔導パラシュートの準備をしないと」
「……忘れた」
「え?」
「忘れてきたから何とかして!」
「はぁーー???!!!」
積載量ギリギリの中、一人分の魔導パラシュートで降下する。
パラシュートが悲鳴をあげるのを聞き、俺は何でこんなことやってるんだっけと、現実逃避をする。
俺の名前は、水川 透、日本生まれ日本育ちの底辺動画投稿者だった。
これは、そんな俺が異世界でバズを目指して奮闘する物語だ。
読んでいただきありがとうございます。
この作品は「異世界で攻略動画を作る話」です。
書き溜め分までしばらくは投げ続けるので、
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