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390000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす  作者: 大森天呑
第八部:遺跡と遺産
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顔検分に向けて


夜の闇に紛れて・・・実際は不可視結界があるから紛れる必要は無いんだけど、気分的に・・・静かに王宮に降り立った俺たちが部屋に戻ると、間髪入れずにオブラン宰相が訪ねてきた。

この人は普通に人間族だと思うのだけど、見た目の年齢の割には本当にエネルギッシュだな。


「ブリュエットの様子は如何でございましたか勇者さま?」


「えっと、断言しちゃうのは憚られるんですけどクロですね。直接エルスカインの息が掛かっているかどうかまでは分かりませんけど、フェリクスが生きていると確信してる」

「やはり...」

「何よりも、シエラ...シンシアのワイバーンを見ても驚かなかったってコトにこっちが驚きましたよ。つまり、王宮を襲ったワイバーンは自分と同じ側にいると信じ切ってる訳でしょうから」


「いやはや...計画が上手く行ったと喜んで良いのか、やはりあの性悪はサラサスの敵だったと憤るべきか、悩ましいところでございますな」


「まあ気持ちは分かります。彼女はこっちの指示をフェリクスの味方によるモノと信じ込んだみたいですから」

「では、シンシアさまの魔道具もすんなり受け入れましたか?」


「驚くほどすんなりでしたよ。明日は間違いなく罠の転移門を持って顔検分にやって来るでしょう。くれぐれも誰かに邪魔させないようにして下さい」

「承知いたしました」

「王宮警備隊の隊長の方は?」

「彼には、『ブリュエット嬢と危険人物との面通しを行うが、私がその場にいるとブリュエット嬢が警戒して本当のことを言わない可能性がある。だから私の代わりに立ち会って、不穏な様子があれば知らせて欲しい』と言い含めてあります」


「そりゃいい。いかにもな理由付けですね!」


「私や陛下の側近が側で見張っていないならば、彼がブリュエットの邪魔をする事は無いでしょう。どの道、彼の報告内容は当てにしておりませんが」


そう言ってオブラン宰相は部屋を辞していった。

もしも俺が彼の立場だったら、ブリュエット嬢やルフォール侯爵家関係の動きは色々と腹立たしい事ばかりだろうな・・・


++++++++++


翌朝、銀ジョッキからの信号で早起きしたシンシアは、予想通りにブリュエット嬢を起こしに来たメイドさんが、部屋の窓を開け放つタイミングに合わせて無事に銀ジョッキを外に出すことに成功した。


って言うか、この季節でも朝は窓を開け放つんだな。

さすがは南国だ。


今日、ブリュエット嬢が王宮を訪れるのは午後からの予定なので、みんなで一緒にのんびり朝食を・・・と考えていると、その間合いを計ったかのようにエスメトリスが起きてきた。

実は昨夜、俺たちが王宮に戻った時にはエスメトリスはもう自分用に用意されてた部屋で休んでいて、そのまま今まで寝ていたのだ。

そういうところはアプレイスと同じようで、さすが姉弟?


いや、いかにもドラゴンらしいって感じだな。


「クライスよ、昨夜の首尾はどうであった?」

「上出来だな」

「ならば予定通り、そやつが此処に参るという訳か」

「昨夜の様子からして多分大丈夫だろうね。疑ってる様子は無かったというか、これでフェリクスを助けられると、やる気満々って感じだったから」

「それも母と言うものかのう...」

「かもしれないけど、フェリクスの中身がマディアルグ王の魂だってコトからして普通じゃ無いし、ブリュエット嬢の行いも正気とは思えないところがあるからね。正直なんとも言えない」

「ふむ...まあ尋常では無い相手ゆえ、尋常な行いは期待できまいて」


昨夜シンシアと話したように、大抵の人が『我が子のためならなりふり構わなくなる』ってことはあると思うし、それが例え姫様・・・あの『知性と品性と判断力』がドレスを着て歩いているかのようなレティシア・リンスワルド伯爵でもだ。


ただ、昨夜は俺も否定というか判断を保留したんだけど、シンシアが『まるで操り人形みたいだ』という違和感を感じたように、ブリュエット嬢に不可解なところは多い。

ホムンクルスでは無いとしても、どうしてあんなに迷い無く行動できるのか・・・


もちろんコチラの狙い通りではあったのだけど、ワイバーンを前にしてカケラも恐れを見せずに、あれほど的確に行動できるって言うのは予想を超えていた。


強力な宣誓魔法を掛けたとしても行動や発言を制約できるだけで、考え方や意志その物までは規制できないだろう。 

あれは・・・むしろ『洗脳』された人の挙動だよな?


「してクライスよ、脱獄に見せ掛けてフェリクスを泳がせることに成功したとすれば、その後はどのように動くつもりかの?」


「シンシアの探知魔法次第だけど、フェリクスが長く留まるところが拠点の可能性が高いだろうし、万が一探知魔法を見破られたとしても、反応の消えた場所が拠点への転移門だって可能性もある。まあ国外にまで出られたら追えないだろうけど、実際はそれほど遠くないような気がしてるんだ」


「つまり、そこを攻めると」


「まあ攻めると言っても、いきなりアプレイスやエスメトリスの手を借りて全面物理攻撃ってのもなぁ...ただ敵の...エルスカインの拠点を潰せばいいってもんでもないからね」

「それは何ゆえに?」

「親玉のエルスカインが何処にいてどんなヤツか、どうして『獅子の咆哮』がこんなところにあるのか、なんでマディアルグ王やフェリクスは好き放題出来てたのか、そういうことが一切不明なままだからさ」


「親玉の正体を暴かぬ事には決着を付けられぬと?」


「ああ、ヒュドラに例えて言えばフェリクスとかマディアルグ王とかは『周りの首』なんだよ」

「なるほど。エルスカインという『中央の首』を完全に潰さねば、いつの日か、またヒュドラが蘇るという訳であるな?」


「そうだと思う。だから拠点を潰すのも大事だけど、それと同時にエルスカインへの繋がりをたぐり寄せたい。今回は偶然の成り行きからサラサスに来て、ここで色々と腑に落ちないって言うか、間尺の合わないことにぶち当たった。でもなエスメトリス、だからこそ、これまで以上にエルスカインに近づいてるような気もするんだ。まぁ直感だけどさ」


「帳尻が合わないからこそ敵に近いとな? その考え方は面白いが、難しい読みよのう...」

「まあね。ただ、エスメトリスがここに来てすぐに言ってただろ? ワイバーン達の移動には気付いてたけど、奔流の『大結界』から離れているから大事だと思わなかったってさ」

「うむ」

「俺も最初はそう思ってた。ここにある昔年(せきねん)の遺物、『獅子の咆哮』っていうヒュドラの毒が大問題で、そんな危険物がエルスカインの手に渡らないように阻止しなきゃってね」


「それは間違いなかろう?」


「そうなんだけど...調べれば調べるほど『獅子の咆哮』は元々エルスカインの所有物で、ただ此処に保管していただけだって思えてきたし、推測だけど、四百年前に死んだはずの初代サラサス王であるマディアルグ王が、今でも魂だけの状態でホムンクルスの中に生き続けていて、しかもそいつが現王家の乗っ取りを謀ってたわけだ」


「長生きなことよのう。マディアルグ王では無くエルスカインという輩が、という意味であるがな。人族ならばエルフと言えども二百か、三百年がせいぜいではないか?」

「まあ、持ってる魔力が多い人でも、頑張って三百年ってところじゃないかな? 俺もシンシアもハーフエルフだから、事故や病気が無ければその程度は生きると思うけど」

「だが四百年は規格外であろう?」

「そうだな」

「我らドラゴン族までは行かぬとも、結構な長生きではある。エルスカインとは本当に人族なのかクライス?」


「そこはなぁ...何度もみんなで議論してるんだけど結論は出てないな。古代の世界戦争時代の魔法や技術を受け継いでるようだし、何らかの魔法でずっと眠っていて、数十年とか数百年ごとに起きて少しずつ行動する事で寿命を延ばしてるんじゃ無いかって推測してるんだけど」


「ふむ...そう考えれば帳尻は合うか?」


「ヴィオデボラ島の事とか考えると荒唐無稽とは言えないと思う。それと四百年前ってのは大精霊アスワンの調べによれば、エルスカインの手で大結界を生み出すための奔流への干渉が始まった頃でも有るんだ。なぜ、それまで寝てたのかは分からないけどね」

「四百年前か。マディアルグ王による、このサラサスの建国もその頃だという話であったな?」


「そうだ。そもそも四百年前ってのはポルミサリア全体を巻き込んだ大戦争が始まった頃合いだ。それから五十年近くの間、アチラコチラで沢山の国が生まれたり消えたりしてたんだよ」


「偶然とは思えぬな...」


「何がだい?」

「エルスカインが大結界作りに手を染め始めたのと、大戦争が起きたのが同じ時期だという事にだ」

「ああ...それは確かにな...」


そうだった・・・何度もパルレアやシンシアとも話したことだったけど、ルースランド絡みの戦を引き起こした事に限らず、あの時代の大戦争はどこもかしこも、エルスカインの計略が引き金となっていてもおかしくは無いのだ。


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