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390000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす  作者: 大森天呑
第八部:遺跡と遺産
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ジャン=ジャック氏の案


もし遠距離から支配の魔法を放てる魔道具が創られていたとすれば、パルレアが一緒でなかったらアプレイスもマジで危なかったのかもしれない。

当然ながら支配の魔法はドラゴンの結界を貫通するはずだし、それ自体は『攻撃』とは認識しづらいだろうから、防護結界メダルが反応するようなモノでも無さそうだもんな。


となると・・・やっぱりワイバーンを手勢として利用するのはリスクがありそうに思える。

例えば支配しているワイバーンを、コッソリ一匹だけ群に紛れ込ませておくとか・・・味方と思い込んでいて、背中から襲いかかられたりしたら堪らないぞ?

仮に支配の魔法がまた掛けられてもエスメトリスが解呪出来るだろうけど、事前に『支配されること』自体を防いでおくのは難しそうだ。


「エスメトリス、あのワイバーン達を元の住処...東の果ての土地に追い返すことは出来るかな?」

「我が命じれば、それ自体は造作なかろうな。ただ、元の住処に戻したところで、再びエルスカインに集められて利用されぬとも限らんぞ?」


「多分、大丈夫じゃ無いかな?」

「ほう? なにゆえに、そう思うのだクライスよ?」


「エルスカインの手下に人族は少ないんだよ。恐らくワイバーンの支配を実行した魔法使いはアプレイスの炎でアーブルの海に落とされてるし、もう一度、東の果てまで別の魔法使いを派遣してワイバーン達を探し出して支配させてって言うのは、奴にとっても手間が掛かりすぎると思う」

「なるほどの」

「それに今度はこっちも警戒してるからね。また東方のワイバーン達に不穏な動きがあったらエスメトリスも気が付いてくれるだろうし、エルスカインもそれは分かるハズだ。奴は無駄なことはしないよ」


「ふむ。無駄なことはせぬ、か...」


これは『希望的観測』ってヤツじゃ無くて、エルスカインの思考をなぞって見てこそ思うことだ。

エルスカインは勝率を左右しないことは一切気にしないって感じだからな。


「なんて言うか、エルスカインは勝率だけで動いている感じなんだよエスメトリス。勝率が四割九分だったら手を出さないけど、それが五割一分になった途端に躊躇せず実行する、そんな感じかな?」


「ふむ。まことエルスカインとは不愉快かつ奇妙な奴よのう...」


エスメトリスの寸評が的確だ。

確かにエルスカインがやることなすこと尽く『不愉快』だけど、同時に『奇妙』でもある。


エルスカイン一味が、どうやって計画や意志を継承しているのかは分からないままだけど、一つのことに何年、何十年、場合によっては大結界みたいに百年単位で時間を掛けて遠大な計画を進めたりするくせに、咄嗟の行いは驚くほど稚拙だったりもするからな。

奇妙というのは言い得てるだろう。


「ま、その『確実に勝てる』はずのプランを片っ端からライノに打ち破られてるから、急に焦り始めたんだろうけどな?」


「うーん、俺にしてみるとアプレイスが言うような『焦り』っていう情動的なモノよりも、単純に『急ぎはじめた』とか『加速してきた』って感じなんだけどな」

「ソレって焦った結果だろ?」

「まあそうか」

「アプレイスよ、なにかに気が付いておるのか?」


「姉上、俺はライノと一緒に戦うようになってまだ日が浅い。でも、この数ヶ月の間だけでも、エルスカインの打つ手がどんどん稚拙になってきてる気はするんです。それは本来よりも急いだ結果じゃ無いかって思いますね」


「あい分かった。ならばアプレイスの言うように今が攻め時であろう。加えて、我らドラゴンの眷属たるワイバーンどもを身勝手な魔法で隷従させるとは許せぬ」


「...姉上がそれ言う?...」


ほとんど聞こえるかどうかって声で、ボソッとアプレイスが呟いた。

声が小さいよ!


もっとも、エスメトリスが種族的な優位性でワイバーン達の上位に位置しているのは、他者を自分の道具扱いするエルスカインの悪逆さとは全く異なる事だとは思うけどね。


「この先しばらくは、我もクライスと共に過ごしてエルスカインと戦う事にしよう。それで構わぬなクライス?」

「ああ、ぜひ頼むよ」

「えっ!?」


エスメトリスの宣言に、アプレイスが思わず声を出す。


うん、まあ気持ちは分かるんだけど・・・エルスカインが沢山のワイバーンを一気に操れるほどの魔法を持っていると分かった今は、少しでも戦力が欲しいのも事実だ・・・

アプレイスには飲み込んで貰おう・・・色々と。


「パトリック王も、我がこの国に滞在することを認めてくださるかの?」


「言うまでもありませんなエスメトリス殿。むしろ貴殿を客人として迎えることはサラサス王国にとって光栄なことですぞ」

「ならば御言葉に甘えよう...ところで、そこな道化師姿の...ジャン=ジャック殿と申されたかの」

「えぇ、えぇ」

「何か思うところがあるのならば、遠慮せず口にされた方が良いぞ?」


いきなりエスメトリスから話を振られたジャン=ジャック氏の顔にサッと緊張が走った。

って言うか、なにか言いたいことがあるのをエスメトリスの前で言いづらくて我慢してたんだな・・・俺は気が付かなかったよ。


「その...気分を害さないで頂けると、とっても有り難かったりするんですけどね?」

「心配ないよジャン=ジャック殿。姉上はとても優しいドラゴンだ」


そう言うアプレイスが、口の中で最後に『俺以外には』とモゴモゴ付け加えたのを俺は聞き逃さなかったけど。


「でしたらまぁ...攻め時と言っても攻める先がハッキリしてないなら、結局は守勢になっちゃうワケでしょ? ドラゴン殿はどちらを攻めるおつもりで?」

「そこは問題であるな」

「ぶっちゃけ、さっきまでコッチは攻められてた側でしたからね。攻めに転じるなら出来るだけ急がないと機を逸するワケでして...一介の宮廷道化師としては、グズグズしてる暇は無いんじゃないかな? って思ったりしますねぇ」


自分で『一介の宮廷道化師』と言いつつ、実際に言ってることは『軍師』のソレだろう。

エスメトリスの迫力に飲まれていたジャン=ジャック氏も、ようやく調子を取り戻してきたかな?


「えっとジャン=ジャック殿。フェリクスの居室に隠されていた転移門の繋がっていた先には、奴らが魔獣を保管していた拠点があるはずなんです。いま、そこにはシンシアの造った魔道具から膨大な量の海水がなだれ込んで壊滅的な状況になってるハズなんですけど、そこに踏み込んで次の拠点への繋がりを探すっていうのが一案ですね」

「ホホゥ」

「もう一つは、アヴァンテュリエ号の貴賓室に隠されていた転移門です。そこには偵察用の魔道具を仕掛けてあるんですけど、それを上手く使うためには向こうから転移門が開かれるのを待つ必要があります」


「うーん、こういちゃあなんですけど勇者さま、どっちも『即座に反転攻勢』するって感じにはならなさそうですねぇ...ヘタをすれば攻めてるつもりが籠城戦になってたりして?」

「まあ確かに」

「ならばジャン=ジャックよ。お主に案はあるのか? 遠慮せずに申してみよ」


「ワタクシは陛下に遠慮なんかしませんよ」

「知っておるわ」

「なら結構ですけどね。遠慮じゃなくて迷いですよ。果たしてこれを提案して良いモノかどうかって」

「お前らしくないな。言うだけ言ってみれば良かろう?」


「じゃあ言いますけどね。試しにフェリクスを逃がしてみたら?」

「は?」

「なんと言ったジャン=ジャック! あの無法者を放逐せよと申すか!」


「だーかーらー、逃がすとは言ったケド自由にしろとは言ってないでしょ! 人の話は最後まで聞けって先王から言われなかったんですか陛下?」


うん、だいぶジャン=ジャック氏の調子が戻ってきてる感じがするね。


「フェリクスのバカが逃げ込む先が...後を追えば別の拠点に行くか、少なくともエルスカインの手下の誰か...フェリクスとワイバーンをセットにしてココに送り込んできたヤツに会おうとはするでしょ?」

「うぅぅむ...」

「ジャン=ジャック殿、それはそうですがリスクが大きすぎませんかな?」


「オブラン殿、だからワタクシも提案を迷った訳で」

「もっともですな」

「それに、いくらフェリクスがバカとは言っても、どうやって疑わせずに逃がすかは難問ですけどねぇ...」


「あからさまに放免されたら、いくらフェリクスでも尾行を疑うでしょうね。放免されるはずが無いコトは本人も分かってるし、さっきの俺との会話からしても、彼の希望はエルスカインが自分を助けに来てくれることだけですよ」


フェリクスの口ぶりでは、必ず自分はエルスカインに救援されると確信していた。

ただ、その『救援』の内容が物理的な解放なのか、魂の複製の事なのかは微妙だけど・・・


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