表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
390000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす  作者: 大森天呑
第八部:遺跡と遺産
687/934

ホムンクルスのいる気配


「で...上手く動いたから次に使うまでそのままにしてたと。スライ殿が言ってた『バカ王子の叛逆』が上手く行ってれば、エルスカインは十年前に『獅子の咆哮』を回収してたと思わねえかライノ?」


「きっとそうだろうな。他の準備が整ってきたから『獅子の咆哮』を回収しようとフェリクス王子を動かして王位を簒奪させようとしたら、予想外の伏兵がいたせいで失敗したわけだな」


「伏兵って?」


「ああ、バダンテール子爵とかってアンスロープの貴族だよ。破邪ぐらいはともかく、そっちは予想外だったろうさ」

「確かにな」

「そしてルリオンでヒュドラ毒の回収に手間取ったから、慌ててパーキンス船長を雇ってヴィオデボラ探索を始めたと」


「まあ、押さえの手を打ったってところだろ。どっちが予備かは分からねえけどな...」


エルスカインは、バシュラール家以外の手元に保管されていたヒュドラの毒の存在を探し当て、それで『獅子の咆哮』を作った。

そして作った兵器の効果を確認するために、戦争の真っ最中だったサラサスのマディアルグ家に貸し与えて使わせた訳だ。


マディアルグ家の方は手に入れた兵器がそれほど凄まじいものとは思わずにルリオンの地で使い、敵も味方も市民も見境無く大勢を殺してしまった。

そして、その力に恐怖したマディアルグ家は、建国後に『獅子の咆哮』の周りをぐるりと城壁で囲んで慰霊碑を建てた、とか?


アプレイスの考えをまとめると、そんなところかな?


長大な城壁を立てるほどの国力があったなら、そんな恐ろしい兵器なんか捨ててしまえば良かっただろうに・・・

やはり王家ってモノは一度手に入れた武力は手放せないものか?

それとも単に『捨て方』が分からなかったのか?

捨てることを禁じられていたのか?

ともかく、メシアン家による王位簒奪で、そういった経緯も歴史の闇に葬られたわけだ。

ついでに使い方も葬られていたなら幸いだけどね。


「だけさアプレイス、姫様のホムンクルスを作るためにグリフォンを三匹も送り込んできたり、俺とシンシアを殺すためだけに数百匹も魔獣を送り込んできたエルスカインにしちゃあ、ちょっとのんびりしてるよな?」


「そりゃあライノ、去年までは『勇者』なんてのはポルミサリアにいなかったんだからな? ガルシリス城でお前が現れてからエルスカインも焦りだしたんだと思うぞ?」


「ごもっとも...」


俺の動きがエルスカインを活発化させてるのだとしたら忸怩たるモノがあるけど、こればかりは如何ともし難いよな・・・


++++++++++


事の良し悪しは別として、バシュラール家以外にもヒュドラ毒の入手ルートがあったかも知れないという推測が成り立ったので、今日の相談はそこまでにして部屋に戻るとスライが中に座っていた。


スライには高純度魔石入りの転移メダルを持たせているから、俺が借りてた部屋の転移門を使えば自力でも跳べるんだったな。


「よ、お疲れライノ!」

「もう来たのか? なにか分かったのかい?」


「大したことじゃねぇけど、とりあえず分かった範囲のことだけでも先に伝えとこうと思ってな」

「いや助かるよ」

「まず王位簒奪の方だけどよ。当時は宰相だったメシアン家の当主は、主要な家臣たちを揃って味方に付けてからコトに及んだそうだ。それも白昼堂々、なんかの式典の場で王と王子を糾弾して捕縛したって話だぜ」


「他の家臣達も味方に付いたってことは、マディアルグ家の王様も相当エグい人物だったのか?」


「らしいねぇ。建国の祖じゃあったけどよ、その後の例の城壁の建築で民に重税を課したり、強制労働の賦役(ふえき)がキツかったりで、実は民からも憎まれてたってところだな」

「酷い話だ」

「その宰相も古くからのサラサス人の血筋だったそうで、王位簒奪でも正当性に文句が付かなかったってよ。妃や王女とかってマディアルグ家の面々も捕らえられて一網打尽」

「みんな処刑されたのか?」

「いんや。処刑されたのは傍若無人だった王と王子だけだってよ」

「そうか...」


ちょっと安心した。

四百年前の事をどうこう言うつもりはないけど、その『血筋』だって言うだけで罪のない女子供が殺されたりした話は聞きたくないからね。


「問題は処刑された王と王子だ。その王子の墓は王家の谷の中にあるそうだけど、王様の方は墓がねえ」

「は?」

「墓がねえんだよ。最初に聞いた時は嫌がらせで墓に埋葬せずに遺体を放置したか、どっかで晒し刑にでもしたのかと思ったけど違うらしい。どうやら処刑した時に王様の『遺体そのもの』が消えて、埋葬が出来なかったそうだぜ?」


「おいスライ、それって...」

「アレだろ?」

「ああ、間違いなくホムンクルスだろう」


「建国の祖は、いつの間にかエルスカインの手でホムンクルスにされてたってワケだな。ま、いまとなってはいつからホムンクルスだったのか分からねえけどよ」

「王子は普通だったのか?」

「その話の流れじゃあ普通の遺体を埋葬したっぽいな。王様の方は『呪い』で死体が消えたってコトでケリがついたらしいけど」


ソブリンの離宮地下で見た光景が脳裏にフラッシュバックする。

ガラスの筒に入った若いホムンクルスの体・・・

ルースランド王家と同じ流れか?


俺はスライに、ソブリンの地下で見た光景とルースランド王家の『代替わり』に関する仕組みを説明した。


++++++++++


「吐き気がするな!」


「同意するよスライ。実際、俺もソブリンで見た時っていうか、その仕組みに気が付いた時には吐きそうな気分だったからね」

「息子を殺して入れ替わって、何食わぬ顔で息子の嫁に自分の子供を産ませるってか...それも次の予備として!」

「おぞましいだろ? それがエルスカインとホムンクルス達のやってる事さ」


「ちょっと言葉がでねぇ」


スライが、これまで見た事もないほど苦々しく顔をしかめている。

まともな神経の持ち主なら、こういう反応をするものだろう。


「そりゃあ処刑されて良かったぜ! いまでもソイツが生き延びててサラサスを牛耳ってるとしたら寝てられねぇからな!」


「もういないんだから、文句を言いに王宮へ突っ込んだりするなよ?」

「しねぇよ!」

「なら、いいけど」

「まったく兄上もライノも、俺をなんだと思ってやがる...あっ、いや待てよ...」

「なんだ?」

「フェリクスのバカだよ。アイツは元からホムンクルスの事を知ってやがったんだぞ?」


「暗殺未遂の時にタチアナ嬢について言ってた事からしても、そこは間違いないだろうね」

「だったら、まずは自分をホムンクルスにして貰おうって思うんじゃねえのか? バカだからな!」


「確かに馬鹿だったら、エルスカインに吹き込まれた事を鵜呑みにしてた可能性は高いな。『永遠の命』とか『元の人間と変わらない』とかの妄言をね。少なくとも、ホムンクルスにも寿命があるって事はエルスカインから知らされてなかったんじゃ無いか?」


「それもそうだけどよ。アイツ本人が何度でも生き返られるって思い込んでたら、暗殺現場で平然としてたのも納得出来るじゃねえか。魔獣に殺されないのは勿論だけど、もし何かあっても生き返られるって信じてりゃ、態度も大胆っつーかデカくなると思うぜ?」


「それもそうだな...」


「何度か際どい戦況を生き延びて、『自分は運が強い』なんて信じ込んだ兵隊は、無謀に突っ込んでいってアッサリ死ぬもんさ。それと同じだよ」

「分かる気がする」

「で、だ。フェリクスが処刑されたって記録はねぇんだよ。アロイス兄さんも言ってただろ、『王城に幽閉されているとも、どこかへ島流しにされたとも噂されているが、恐らく彼は処刑されていると思う』ってな。実際はどれも噂だ」


「死んだ証拠も、所在の確証もない訳か...」


「仮にヤツが直後に処刑されたとしても、その後にエルスカインの手でホムンクルスにされてる可能性はあると思うね。ま、あんなバカにも使い道があるとすればだけどよ」

「スライ、もしもエルスカインがフェリクス王子をホムンクルスにしてるとすれば、どういう使い道があると思う?」


「腐っても王子だからな...」

「フェリクス王子はマディアルグ家の血を引いてるんだったか?」

「一応そうらしい」


とは言え、もし『獅子の咆哮』がエルスカインの手によって作られたものであったとするならば、いずれは自分たち自身で使うつもりの兵器に、わざわざマディアルグ家の血やオーラが必要な起動鍵を仕込んだりするとは思えない。


だったら単純に、王位簒奪の再チャレンジ用に『正当なマディアルグ家の継承者』って肩書きを使うためだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ