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 ガラガラと車輪が回る音がする。

 その車輪が時折何かに引っ掛かるように不協和音を奏で、その度にガタンと馬車が揺れた。


 馬車が進んでいる場所は想像以上に悪路だ。

 あまり整備のされていない道を進む馬車の行き先に思いを馳せ、エリシアはそっと視線を落とす。


 その横顔はあまりに静謐で、これから輿入れをするという花嫁には見えない。

 馬車の不規則な車輪の音を耳にしながら、エリシアが思い返すのは父親の言葉だった。


『お前しかいない』


 苛立ちを吐き捨てるように言葉を投げてよこした父親の顔を思い出すたびに奥歯に力がこもってギリリと音が鳴る。


『お前ならわかってくれるな』


 それは問いかけというよりは命令だった。


 その時、エリシアは肩を掴む父親の手のひらに体が強張って、必死に体が震えないように両手を組み合わせて力を込めた。


 今、その時と同じようにエリシアは手のひらを合わせるように組んで、力を込める。

 祈るようなその姿は花嫁というより、死地に向かう贄のような悲壮さが滲んでいた。

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