エピローグ
「ふう、色んな悩みがあるものだなぁ、あと何人くらい待ってるのかな」
部屋に残った道師さまは、会員が去ったあとの椅子や机の位置を直しながら、ラメの紫服男に話しかけた。
「今待っているのは10人位じゃないかな、会員も徐々に戻ってきてるな」
「ああ、そんな感じだなぁ、しかし、あの時はびっくりしたよな。あのクリスタルのビンに麻薬を塗って配ってるなんてな」
「ひどい話だよ、だからあんなに繁盛したんだよ。麻薬の力は恐ろしいよな。おかげでウチもとばっちりを食って、家宅捜査されたしな。まあ、ウチの壷もちょっとは細工してたから、どきどきだったよなぁ」
「だからそれに懲りて、妙な小細工はやめてまともな陰陽説の人生相談に戻したんだよな。やっぱりまじめにやるのが一番なんだよ」
「そういうことだ、じゃあ次の会員さんに入ってもらうよ」
そう言うと、ラメの紫服男は壁のボタンを押し、外にいる女性スタッフに合図を送った。
数秒後、女性スタッフが新しい会員を引き連れて入ってきた。
あちゃー、本当にこの電柱の位置は良くない。
今回もカラスに特別な感情を持っているらしい女性スタッフとばっちり視線が合ってしまった。
「か・からすがこっちを見てるぅ~!」
お決まりのすっとんきょうな声をあげてオイラを指差し、それに釣られて道師さまとラメの紫服男もオイラの方を振り返った。
さて、今回はぼちぼち退散するか。
オイラは、最後に壁にかかっている妖しく輝いている丸いプレートをチラッと見て電柱を思いっきり蹴って飛び立った。
この辺りの風は、本当に心地よい。
穏やかな上昇気流に乗ってぐんぐん高度を上げた。
街はどんどん小さくなり、はるかかなたには太平洋の水平線も見えてきた。
ニンゲンもこんな風に空を飛べたら、何もあんな変な部屋でごちゃごちゃしなくていいのになぁ、と思いながら、オイラはお気に入りの鉄塔のねぐらに進路を取った。
END




