はじまり
「この世界は1つしかないと思いがちでしょう。勿論、生きていられるのは1つの世界だけです。しかし、もう1つの世界線があります。全く同じではない似た世界。」
この時間は大学体験授業解いて近隣の大学教授が高校に出向いて授業をしてくれるのだが、特に興味もない長い話を聞いている人は片手で数えられるほどしかいない。
勿論、僕、早苗奏斗もその1人だ。
運良く窓側1番後ろというサボりに適した席になったので、校庭でやってる体育をボーッと眺めている。
先生の話は右から左に流れていくので頭に残るものは何も無い。
どれだけわかりやすい授業展開をしても理解出来ない。
まさに、馬の耳に念仏とはこのことだと例文にも出せそうだ。
「パラレルワールド」
先生がこの言葉を発した瞬間、一瞬で意識が校庭から黒板に移動した。
「パラレルワールドって何?」
そう発した瞬間、頭に衝撃が走った。
「は?10秒前に先生が話してたでしょ。全く話聞いてないからだよ」
どうやら前の席のやつに教科書で殴られたらしい。
クラスの笑い声も同時に起こった。
「また、早苗は聞いてなかったのか。これは赤点確定だぞ」
担任の先生はため息越しに話す。
「えっ、先生。ここの範囲もテストに出るんですか?」
前の席のやつは本気で驚いたのか真剣なトーンで先生に聞いていた。
どうせ赤点というのは先生の冗談だろう。
「出るわけないだろ」
と心の中でつっこんだ。
その途端、また頭に衝撃が走った。
心の声が外に漏れたらしい。
「加藤は真面目だな。ここの範囲は高校でやることでは無いのでテストでは出ません。この時間は大学の授業を体験してみようという名目だからね。」
「そうですよね。ありがとうございます。」
「早苗には加藤の爪の垢を煎じて飲ませたいよ」
「すいやせん」
適当に謝ったが、まさにその通りだと思う。
幼なじみの加藤 梨々奈は賢いのだ。それに比べて僕は下位から数えた方が早い。
本当に小さい時から同じ教育をされてきたのかという疑問は残るが。
僕の親も頭いいほうではないから遺伝だな。
梨々奈の親事情は知らないが、多分天才家系なんだろうな。
気がついたら小鳥遊が目の前にたっていた。
「なんだよ」
「もう授業終わってること気づいてなかったろ?」
「あ、確かに。もう帰宅か?」
「そうだよ。今日は大学体験授業のおかげで帰りのHRがないって」
「そーいやそんなことも言ってたかもな」
「そんなにボーッとして梨々奈ちゃんのこと考えてたんじゃないの?」
にやにやしながら問い詰めてくる。
小鳥遊と早苗はサッカー部なんだが、その部活の中で変な噂が広まったのだ。
『早苗は加藤のことが好き』
間違ってはない。僕は梨々奈が好きなのだ。だけどこれは誰にも言えない。めんどくさい事になるからな。
「あれ、今日部活は?」
「ないよ。奏斗本当に大丈夫か?なんか悩みあるなら言えよ」
「ねーよ」
終始ニヤニヤしてるから睨みつけて返事した。
教室の真ん中では加藤の笑い声が響く。
クラスの中心人物という言葉が似合う。
360度友達に囲まれ、引き笑いよりの独特な笑い声を響かせている。
頭も良くて先生の信頼も厚くて友達関係も完璧とかあいつに悩みなんてないんだろうな。
「やっぱり梨々奈ちゃんが気になってるじゃん」
小鳥遊が僕の視線を辿るようにして梨々奈の方を見る。
「そんなんじゃねーよ。今日は一緒に帰るのかなと」
「デートですか?」
「んな訳ねーだろ」
幼稚園の頃から一緒に育ってきた僕と加藤はもはや兄弟のようになっている。だからか僕の親は梨々奈の親みたいな言動を時々しだすのだ。
同じ高校への進学が決まった時、一緒に登下校しろと言ったのも親。
「梨々奈ちゃーん」
小鳥遊がいきなり女子の輪に入っていく。
あいつコミュ力高すぎ。
小鳥遊と加藤で少し話したあと、加藤は僕の方を見て「かえろ」と口パクで言った。
こういうところも可愛いんだよな。
僕は誰が見てもわかるくらい大げさに頷いた。
これから早苗が動いていきます。短いスパンで連載していくのでよろしくお願いします。




