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応援


「────お待たせしました。」


「ジーク!!!」


 突然現れたジークは、ハルビンの前に立ち、剣を振るい、突進してきたグリフォンを横薙ぎに払う。

 グリフォンはその剣に、片翼に切り傷を作られていた。


「キエエエエエエエエエ!!!」


(なんちゅー馬鹿力……)


 驚愕しつつも、ハルビンはジークの出現に安堵する。待ち望んでいた戦局の変化がもたらされたのだ。


「状況は。」


「成体のグリフォン2体、幼体のグリフォンを1体発見した。成体の1匹は2時の方向にいる。まもなくこちらに到着するだろう。幼体は反対方向の奥にいる。」


「了解。」


 ジークは淡々と応じた。いつもと変わらないジークの様子にハルビンは安心感を覚えた。


「にっしても、よくこの場所が分かったな!」


「彼女が教えてくれたので」


「彼女?」


 ハルビンは流し目でジークが飛び出してきた方向を確認する。そこにはサファイアの少女が立っていた。そしてその奥には走りよってくる、アリアを捜索した4人の姿が見えた。


「応援にキャニー、オリビア、カーター、アイザック、ライアンもいます。」


「あぁ、そのようだな。……だが、応援にしちゃあ、少なくねぇか?」


「グリフォンがいることはさすがに予想外だったので。」


「だよなぁ……まぁ、何とかなるだろ!」


 カーターは声を上げて4人達に現状を知らせる。

 それを聞いたオリビアとキャニーは伝達に行き、カーター、アイザック、ライアンはジーク達の中に加わった。


「クェェエエエエエ!!!!」


 そして、グリフォンの威嚇を皮切りに、戦闘が始まった。






(────間に合って良かった!)


 あの後、ジークさん達を起こした私は、元いた場所へとジークさん達を誘導していた。


 だが、途中で音魔法で木々に何かぶつかるような音を聞き取り、森の中へ方向を転換した。すると、ハルビンさんが大きな獣に飛びかかられていたのだ。


 それを見たジークさんは、一気に加速し、ハルビンさんと獣の間に入り込み、剣で大なぎに獣を振り払った。


 私はギリギリ間に合ったことに歓喜する。

 だが、危機は去ったわけではない。気を引き締めつつ、私は状況をよく観察した。


 獣の姿はワシのような上半身に、ライオンのような下半身。初めて見た。

 それが、ハルビンさんから上がった声で、グリフォンだと分かった。


 馬車の中で魔物の危険性は聞いたが、なるほど、人々が恐れるだけはある。その個体からは大きな魔力をビンビンと感じた。


「あなたもこっちに来て!」


 観察していると、オリビアさんに声をかけられる。私はそれに対してかぶりを振った。


「魔法で、補助する……手伝う……」


 こんな状況の中、魔法という力があるのに、なにもしないというのは私には我慢できない。

 情報伝達を手伝うとしても、まだ信頼が確立していない私では、騎士たちに取り合ってもらえないかもしれない。

 なら、ここに残って補助に徹した方がためになると思った。


「けど……」


「オリビア!早く行くわよ!」


「キャニー!だけど!」


「時間がないの!」


 オリビアさんはキャニーに怒鳴られ、しぶしぶといった様子で引き返して行った。


「あなたは案外頑固者だからね。怪我だけはしないでよ!」


 キャニーさんはそう言ってオリビアさんの後を追いかけた。


(キャニーさん…ありがとうございます)


 その姿を見届ける前に視線を前に戻し、戦闘の様子を見る。


 どうやらアイザックさん達は二手に分かれて各個撃破に臨むようだ。ハルビンさんとジークさん。アイザックさん、カーターさん、ライアンと言ったぐあいだ。


 確かに、2匹で連携を取られるよりかは、こちらの方が数的に多いいし、良いのかもしれない。


 私は無闇やたらと魔法を打ち込むわけにはいかないし、風魔法で相手が動きにくいよう、逆にジークさん達が動きやすいように補助をする事にした。


「クェェエエエエエ!!」


「カーター!」


 そう思ったとき、1匹のグリフォンが爪を振り下ろす。カーターさんはちょうど剣を振り下ろした体制で、完全に避けれそうもない。


(させるかっ!)


 私はグリフォンを吹き飛ばす勢いで風魔法を使った。だが、


(────にぶいっ!)


 風がグリフォンに当たる瞬間、勢いを落とす。操作している空中に発した魔力も、いつものように動かせない。


 今まで経験したことの無い魔力の乱れに、私は驚いた。


「クェェエ!!」


 だが、攻撃の軌道はずらせたようだ。

 爪はカーターさんに当たることもなく、空を切る。


「なんだ今の!?」


「援護……します!」


「じょうちゃん!?ここは危ないぞ!」


 アイザックさんのその声に頭を振る。


「………助かるぜ。」


 アイザックさんを睨むように見つめる。

 するとアイザックさんは折れてくれたようでそう一言言うと、戦闘へと戻って行った。


 自分の我儘で困らせてしまった。だが、迷惑はかけないように気をつけよう。そう、私は心に刻んだ。


 しかし、先ほどの魔法の不具合はどうしたものか。放つ瞬間はいつもと変わらないのだが。


 もう一度魔法を放つ。だがやはり、グリフォンに当たる瞬間に風の威力は激減した。


(────そうか、私に不具合があるんじゃない、あっちがレジストしてきているんだ!)


 魔物は魔力を多く保有している。その影響でこちらからの魔法が上手く働いていないのだろう。


 しかし、ここでどうするかと言えば、ジークさん達への強化魔法などは使えない。ずっと森では1人だったからそういう魔法を使ったことはないのだ。


 だから私は基本方針は変えず、援護に徹した。


 魔法主体の私には、魔物は天敵かもしれない。

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