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異世界で新たな人生を  作者: ミト
幼少期
7/45

実験開始

 基本はわかった。次は実践。どこでやろうか……裏庭かな、結局。あんまり奥に行きすぎなければ、危険もないだろうし。

 思い立ったが吉日! というわけで、早速部屋を出ようとしたら、裾を誰かに引っ張られた。

「……何? クレス」

「…………」

 どこ行くの? って、こういうときばっか鋭いなあ、もう。

「……お手洗い」

「…………」

 =それ(本)持ったまま?

 目ざとい。どうしよう、クレス簡単に手放してくれそうにない。ここは大人しくついてきてもらった方が無難かな。どうせ何見てもクレスは誰にも言わないだろうし。

「……一緒に来る?」

「……(コクン)」

 いや、そんな力一杯頷かなくても……。


 そーっと、裏庭を覗き込む。よし、誰もいない。

「……」

「……」

クレスの手を引っ張って日陰の中に入る。日向に立ち続けるなんてしたら倒れる。確実に。

「クレス、今からやること内緒。いい?」

「………………」

 =なにやるの?

「危ないことでないのは確か」

「…………(コクン)」

 クレスは木の根元に座り込んで、ジッと見つめてくる。まあクレスなら邪魔になることはないだろうし、気にしないでおこう。

「まずは……」

 『魔術の基礎知識』という何のひねりも工夫もない題名の本を開く。題名の通り、中身も本当に基礎知識しか書いてない。

 最初は、体内の魔力を使って、陣を展開する。

 ……………いきなりアバウト。わかるけどさ。

 これは何だろう。本能でわかるようになってるから、説明のしようがないんだろうね。

 この体になってから感じる、前世の体にはなかった違和感と感覚。これが魔力かな。

 魔力を体外に出してみる。意識的にやるので全身から出すのは難しいというかむずがゆい。何となく出しやすそうな手のひらから出してみた。

 手のひらから溢れた魔力は、私の眼の色と同じ、薄紫色に見えた。若干透明で見づらいけど、割と綺麗。

 溢れ出た魔力は、いくらかはあらぬ方向に流れて溶けたけど、大部分は空中に残って、模様を創り出した。同時に、体の中から何かが抜ける感覚。この程度ならまだ違和感程度。

 円を描く模様に集中すると、漏れていた魔力も集中して、『陣』を描いた。

 私の『陣』は植物の蔦のように縦横無尽に描かれてるかと思えば、真ん中を境に鏡合わせのように左右揃った幾何学模様をしていた。本によれば、模様はひとりひとり違うけれど、皆基本は左右対称か上下対称らしい。

 次は……『陣』に描かれている設定を変える。…………この本、説明する気あるのかな。

「う――ん…………」

 設定、設定……。あ、よく見たら、『陣』にいくつか左右対称じゃない部分がある。ここが変更できる部分?

 えーと、無、球、透、特記無し、特記無し、特記無し…………。

 途中から特記無しばっかりだったのは置いとくとして、なんでただの模様を見て書いてあることがわかるの?

 本には……っと、なになに……陣に描かれた展開式は、本人のみが解読できる? まあそれは当たり前だね。自分で創ったものなのにわからないってないし。……というか陣を見れるのは自分だけなんだから本人もへったくれもないんじゃ?

 話を戻そう。つまりこれは書いてあるのを見て、私の頭の中で解釈したものってこと?

 変なところで便利機能。

 まあさて置き、実際に書き換えてみるかな。どうやるんだろう……っとと、その前にベースの状態だとどうなるのかなーっと。

「…………【発動】?」

 適当に言ってみた。そうしたら陣がポワッと光って、半透明の丸い塊が、宙にふよふよと浮かんでいた。

「………………」

 つんつんとつついてみた。おお、意外と弾力がある。さらにつつくと、パチンと軽い破裂音がして割れてしまった。シャボン玉みたい。

 陣に書いてあった内容からすると、無は分からないけど球は形状、透は……色かな?

「うーん……」

 もう一度陣を展開する。慣れてきたのか、スムーズにできた。

「えーと【色は赤 発動】」

 なんとなく声に出した方が理解しやすい、と思ったのでやってみたら、言い終わると同時に『透』となっていた部分の模様が変わり、私にはそれが『赤』に変わったことが認識出来た。

 浮かび上がった塊は、形状はさっきと変わらないまま、色だけが炎のような色に変わっていた。

「……熱くない」

 見た目が炎みたいになったから触ってみたけど、熱は全く感じない。本当に着色されただけみたい。しかしこれは困った。形と色だけ変えられても意味がない。なんかこう、本質的な部分を変えないと…………そうだ、困ったときはおさらいをっと……あれ? 本はどこいった?

「…………」

「……クレス?」

 いつの間にかクレスが『魔術の基礎知識』を読んでた。……いつの間に。

「……」

 =読む?

「いや、クレスが読みたいなら、いい。……魔術に興味、あるの?」

「……(コクン)」

 クレスの右手から、私がやったみたいに陣が現れる。クレスのは髪の色に似た水色だ。

「……へぇ、ほんとにわからない」

 クレスの陣は、色と、形が円だということはわかる。けれど、模様を見ようとすると、見ることはできる。できるけど、どういう模様なのかが、記憶に残らない。陣から眼を離すと、瞬く間に描かれていた模様がどんなだったか、思い出せなくなる。なるほど、これが認識できないってことね。

「……」

 =これ

「?」

 クレスが指差したページを見させてもらう。何々……魔術を行うには、明確なイメージと、どのような現象を起こしたいかの意志が必要。……初めてじゃない? こんなまともなアドバイス。

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