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完結編第15話 マヨネーズとスイーツの匂い

ヒカリを結ぶー完結編ー

第2章 


「あんたが、黒瀬蓮?」

第一声が、それだった。

日課である朝のランニングを終えたばかりの

蓮は、視線だけを向けた。

「……そうだが」

「ふーん」

奏は、つまらなそうに鼻を鳴らした。

「なんか、つまんなそうな奴」

「……そうか」


視線を外し、蓮が呟くと奏は眉を歪めた。

「……は?」

「もっとなんかあんだろ普通」

「無いな」


奏は蓮の2期下の訓練生だ。

今日から奏の指導係に蓮は橘から任命されていた。

正直、後輩の面倒などを見るよりも

自分の訓練をしたいところではあるが…。

3年目で通らざるを得ない必修科目となっている。


蓮は小さく息を吐くと奏へ向き直った。

「…訓練、ちゃんと来いよ」

それだけ告げると部屋へと戻っていく。

奏は立ち去る蓮の背中に

「…真面目かよ」

と吐き捨てた。




「あ~指導係、めんどくせぇ…」

部屋に戻るとまだベッドの上で横たわる蒼真が呟いた。

「やれよ」

蓮は一言だけ返した。

「……教えるとか、分かんねぇ」

確かに、と蓮もその意見には同意だった。

「俺は自分の訓練したいよ」

「真面目すぎんだろ…」

欠伸をしながら、蒼真は呆れた顔をしていた。

「お前がだらしないだけだ」


―あれから…。

蒼真はしばらくの間、サボりもせず講義を受け、

訓練も鬼気迫るものがあった。

教官たちも蒼真、任務で変わったな。と認めてくれていたが…

蒼真の性格だ。

1か月経つ頃にはサボりが目立つようになった。

一度だけ、聞いたことがある。

“どうしてサボる”んだと。

蒼真は少しだけ悲しそうな顔を見せたが

「…ただ、つまらないだけ」と言っていた。

ーつまらない。

その言葉の意味が俺には分かっていた。

だから、何も言わなかった。


「ところでさーこの真面目そうな藤堂くんの担当、蓮のが良くね?」

受け持ちの後輩の資料を眺め蒼真が言う。

「橘教官の決めたことだからな…沖田とは俺も相性悪そうだよ」

あの、ふてぶてしそうな態度…。

育ちのよさそうな雰囲気はあるのに引っかかる。

「いや、お前と相性いい奴なんて居ねぇと思う」

「お前な…」

じゃあ、なんでお前は俺といるんだよ。と喉まで出かかった言葉を

蓮は飲み込んだ。


その日の午後ー


「負かしてやるよ」

奏は拳を鳴らしながら笑った。

訓練場で組み手の指導中だ。

相変わらずふてぶてしい態度の奏。


「……そうか」

蓮は構える。

力みのない姿勢だ。

開始の合図と同時に、奏が踏み込んだ。


速い。

若さゆえの爆発力がある。

右。左。フェイント。

連打。


だが——当たらない。

「……チッ!」

奏の拳は、空を切る。

蓮は最小限の動きで躱していた。

「なんで!」

さらに突っ込む。

その瞬間——蓮の手が、奏の腕を流した。

重心が崩れる。

「え——」

「遅い」


次の瞬間、視界が回った。

ドサッ。

奏の背中が床に叩きつけられる。

蓮は息一つ乱れていない。

「力みすぎだ」

「うるさい!」

このじゃじゃ馬…どうやって指導すればいいんだよ。

と、蓮は溜息をついた。

そのすぐ隣では——


「はい誠、もっと肩の力抜けー」

蒼真が片手でひらひらと合図していた。

「は、はい!」

誠は額に汗を浮かべながら構え直す。

すでに蒼真に数回投げられているが

諦めずにくらいついてくる。


「真面目すぎんだよ、お前」

蒼真は笑いながら、誠の額を軽く小突いた。

「いてっ」

「考えすぎて遅れてんだよ。感じろ、感じろ」

「む、無茶言わないでください!」

「……次はこう来るとか、そんなのねぇんだ。ただその時の空気を、感じるしかねぇんだよ」

「…はぁ…」

奏はその様子を見て、顔をしかめた。

「……なんなんだよ、あっちは」

「よそ見するな」

蓮は淡々と告げると

「っ!」

奏をまた転がした。

「この野郎!!」

根性は、ある。

いや、俺が嫌いで歯向かってきてるだけなのか…。

戦闘センスはあるようだが、攻撃が雑だ。

ひたすらに蓮に攻撃を繰り出す奏を見ながら

そんなことを考えていた。


「…これでっ!!」

奏が回し蹴りを繰り出す。

だが、ドサッという音と共に奏の背中は床に叩きつけられていた。


「……くそっ」

奏は負かしてやると息まいたのに

一方的に投げられ、やけになって蓮に突っ込んでいった。

「この…クソ真面目!一般人のクセにっ!!!……っ!」」

瞬間、蒼真が蓮より先に動き、奏を止めていた。


「……蒼真さん…」

名前を呼んだ瞬間、奏の体は一回転し、床に叩きつけられていた。

投げられた事の意味を奏は理解できなかったが

蒼真も何も言わなかった。


その様子を見ていた訓練生がざわついていた。

「蓮さんも凄いけど…蒼真さんすごくないか?今、動いたの見えたか?」

「いや…なあ2人の組み手、見たくないか?」

誰ともなくそんな声が上がる。

「お願いします!」

「お2人の組み手を見せてください!」

後輩たちのキラキラとした視線の先には、蒼真と蓮。

「……めんどくせぇ」

蒼真が頭をかく。

「断ればいいだろ」

蓮は冷たく言い放つ。

蒼真は少し考えると

「えー、でも面白そうじゃん」

とニヤニヤしている。

その時だった。

「蒼真さん、黒瀬さんのことやっちゃってください!」

奏が満面の笑みで叫んでいた。

「……」

蓮の空気が変わったのを感じた誠が一歩下がった。

蒼真はまだニヤニヤと楽しそうだ。

「おい蓮、お前まさか嫉妬してんの?」

「してない」

即答。

「じゃあ手加減してくれんの?」

「……しない」


そして自然と2人の一番近くにいた誠が開始の合図を叫ぶ。


「は…始めっ!」


次の瞬間——

ドォンッ!!

床が鳴った。

「え!?速っ!!」

後輩たち騒然。

蒼真の拳を、蓮が紙一重で躱す。

蓮の蹴りを、蒼真が笑って受け流す。


「おいこれ組み手!?」

「動き早すぎるだろ!!」

「いや…つーか、なんか…」

「喧嘩してない!?」


後輩たちが言うのもそのはず。

蒼真は

お前のマヨネーズが部屋の冷蔵庫占拠してて邪魔!!

部屋がマヨネーズくせぇ!!と叫び。

てめぇのスイーツも邪魔だ!

夜寝る前に食うせいで、甘ったるい匂いで寝れねぇんだよ!!と蓮も叫ぶ。


この人達、何の喧嘩してるんだ?と後輩たちは困惑するが

奏だけは「蒼真さんやれぇぇ!!」と叫んでいる。

奏の叫びが聞こえた瞬間、蓮の目が鋭くなり完全に無言になった。

正確な動きで蒼真に攻撃するもまだ、笑っている。

(楽しそうだな、おい)

なんとかなる。でいつも笑っていた蒼真の顔だ。


「お前ら何してる」

訓練場にドスの聞いた低い声が響いた。

その場の全員が静止した。

橘教官だ。


「いや、これは…その…」

蒼真が焦って視線が泳いでいる。

「く、組み手の手本を!」

蓮も必死に説明を試みたが

「先輩たち、喧嘩してましたー」

ーゴンッ。

奏の一言で橘のげんこつが蒼真と蓮の頭に落ちた。

「ぐっ…」

「いってぇ!!」

「腕立て100」

溜息をつきながら、橘はペナルティを告げると

その場から立ち去った。

2人は素直にそのまま腕立てを始めた。

後輩たちは緊張が解けたのか、笑ってくれていた。


問題児、奏くんの登場です\( ´・ω・`)┐しゅたっ


先輩となった蒼真と蓮。

昔からうるさくて、やらかしてる奏。

みんなのバランス役な誠。


新たな4人の成長を見守ってくださいm(_ _)m

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