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成仏


【『カスタマーセンター』につながる電話ボックス】


 暗く狭い部屋で20分毎に『タイムリセット』を注文するという、拷問のような仕事を請け負っているスタンウェイ。

そして、そんなスタンウェイの暇つぶしを任されている猫。


 猫は、全く似てない木村拓●のモノマネや、小池百●子都知事のモノマネを披露したが、そもそも二人とも知らないスタンウェイにはなんのことかわからなかった。

でも、なんとか自分も役に立とうとしている猫が、なんか可愛らしいなあ。と感じていた。


 ある瞬間である。


「あ」


「しゃ?」


 忘れがちだが本来魔術師のスタンウェイは、この時直感で『あること』を察した。


「…… ……たった今、誰かの冒険が終わりました」


「しゃ?」


「わかりません……。でも、そう感じたんです。

 冒険が終わったというより……魂が成仏した……の方が近いのでしょうか」





【くだらない螺旋階段】



 建成が不安な気持ちでエレベーターを待つこと実に20分。

それはついにやってきた。


 エレベーターガールは相変わらず無表情ではあるが、過去のような……例えば空港にいる空港税関職員のような『感じ悪さ』

はなく、プロとして何か吹っ切れた……

そんな顔に建成には見えた。


「上に行きますか? 下に行きますか?」


 その一言を聞いて、これ以上何かを問うのは野暮だと感じた建成は、


「おすすめで」


 とだけ答えた。エレベーターはゆっくり動き出した。



【世界最後の喫煙所】


 予定が変わってしまった。ベーゼンドルファーがいなくなった分、自分が一人で全て回らないといけなくなってしまった。

予期せぬスケジュール変更に不安を覚えながら、建成を乗せたいったん木綿は、喫煙所の突き当たりまで走っていった。





【『カスタマーセンター』につながる電話ボックス】



「スタン……ウェイさん!!」


「建成『さん』!! 首尾はどうですか?」


「問題発生……といえばいいのか、なんなのかわからんが、……

 イレギュラーな事態だが起きた。

 『ユーレイ』が成仏した」


「……裏切った……のとは違うのですか?」


「そうではないのだ。あいつは冒険をやめた」


「やめた? 冒険……がいつ始まってましたか?」


 現場にいない人間に起きたことを正確に伝えるという行為が、こんなに難しいのかと感じた建成であった。


「うむ……とにかく、やつとはもう会うことはないだろう。

 俺が一人で、全部回ることになってしまった。スケジュールの変更が必要になる」


「よくわかりませんが、そういうことなのですね。

 ところで建成」


「何」


 スタンウェイは、左手の薬指を見せた。銀色に輝くリングが見える。


「……うん。何」


「ええ。『一応』、『一応』ですけど、私は婚約中の身です。

 婚約中の身の女性に対してタメ口はちょっと……」


「あーすんませんでした!!」




 前途多難。

デスカッションの結果、【箱根】に行ってしまうと建成は元に戻れなくなるので、

先に【国家を永遠と聞かされる部屋】から『石畳の鍵』を使って、【ガラスの水族館】で、『鯨の模型』を置いてみる。


 ……懸念点としては、前回のように『森』に強制移動させられるのではないか、まだわからないことと、

仮にそうだとしたら、鍵が一個手に入らない状態で『森』に行くことになる。いわゆる詰みの状態に陥ってしまう。


 なので、連絡係として、猫についてきてもらい、【ガラスの水族館】に建成が入って20分たっても戻らなかったら強制終了を頼むという作戦を立てた。


「婚約中の女性を暗い部屋に一人置いていくというのは云々……」などと小言を言われた。

 いつの間にスタンはこんなに面倒な人物になったのだ! これが結婚か! 

 

 しかし、現状これ以上の手段が思い浮かばないのだ。

だので飲み込んでいただいた。なんなら『コールセンター』から【王の間】につながる番号がないのか聞いてみるのはどうだろう?

という建成にしては気の利いた案を飲み込み、猫を随伴する権利を得るに至ったのだ。

もう建成はいっぱいいっぱいだった。


「じゃあいってきます……『いってきます』も婚約中の身の女性に言ったらまずいのですか?」


「……審査中です。 そうですね。でも意図はわかったので今回は許します。次回から違う言葉でお願いします」


 面倒臭え! 城の攻略とは関係ないところでストレスが溜まるのだけは勘弁してほしい!!

何はともあれ、建成は猫を随伴させ、【世界最後の喫煙所】に出た。


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