表裏比興の裏切り者
建成は、王の間に強制転生するや否や、小刀を、いぶし銀の兵士に投げつけた。
いぶし銀の兵士は流石に反応できずに、小刀を弾いてしまったが、
ここで彼はまたもやファインプレーを見せる。
建成の投げた小刀を弾いて、捕球できないとみるとすかさず、宙にある小刀を脇の兵士詰所にボレーシュートよろしく蹴ったのだ。
建成は思わず「おお!」と声を漏らした。
そして建成は見逃していなかった。王の周りの兵士がいつもより一人少ない。
彼はどこに行ったのだ……?と思うやいや、
王の間の脇の、兵士詰所から兵士二人が、拘束の解かれた魔術師スタンウェイを左右から肩に背負い、
建成の前までやってきたのだ。
これには建成も感動した。
「俺たちは……俺たちは明らかに進化している!! お前たちの努力を俺は無駄にはしないぞ!!
吉報を期待せよ! 戦友よ!!」
「「行ってらっしゃいませ!! 勇者様!!」」
建成とスタンウェイは兵士たちに見送られ、王の間を後にした。
……さて、もはや空気となった国王、デイヴドゥングリムックリは、今回もまた一言も喋れず、
一連の出来事をただ眺めるだけだった。
【無限回廊】
「スタン! 俺の背中に!」
「え?」
建成は、この時点でスタンウェイを背中に背負い込み、
回廊をダッシュした。
「扉がきたら肩を叩いて合図を送ってくれ! そこを開く!」
「どうしてそんなに急いでいるのですか!?」
「今日のこの速度なら……追いつけるかもしれない!」
「何に……?」
建成とスタンウェイは、王の間から69番目の右の扉を開けた。
【『モウ』と鳴く馬小屋】
「建成! 先は長いのです! これでは私が荷物のようではありませんか!」
「そうではない! この先の螺旋階段までの時間が勝負なんだ!」
「なぜ? なぜです!?」
建成と、スタンウェイは、馬小屋を突っ切った。
【くだらない螺旋階段】
建成たちは、自分より少し前に階段を登っていく足音を聞いた。
盗賊ベーゼンドルファーである。
「待て!! 『ユーレイ』」
後ろから声をかけられ、足音の主は明らかに焦りが見えた。
そして走る速度を上げたが、
それを上回る脚力で建成は盗賊の足に追いついた。……スタンウェイを背負ってである。
必死で逃げるベーゼンドルファーの襟首を、建成の背中にいるスタンウェイが掴み、とうとう『ユーレイ』を捕らえたのだ。
「ええいくそ! はなせ!」
「観念しろ! 表裏比興の裏切り者め!! 」
背中のスタンウェイごと、ベーゼンドルファーに馬乗りになった。
「『みんなが大事にしているものを弄ぶことがどんなに卑怯か、思いしれ!』
これは水木先生が鬼太郎に言わせたセリフだ!!」
建成はベーゼンドルに鉄拳制裁を与えた。
「ぐへ!
わかった……わかったから退いてくれないか……胃が潰れる」
「そうはいかないわ! 教えてもらいます。『タイムリセット』のやり方を!」
背中にいるスタンウェイが、建成と同じ熱量でベーゼンドルファーを詰めた。
ベーゼンドルファーからしてみても、油断したつもりはなかった。
最速で牢を抜け出し、抜け道を通り、螺旋階段を駆け上がったつもりだった。
……それに、勇者たちが追いついてきたのだ。
どうやらこの建成という男を甘くみていたのかもしれない。
ベーゼンドルファーは殴られた頬をさすった。
「…… ……いいぜ。悪かったよ。ついてきな」
ベーゼンドルファーがそう言うと、ようやく建成は立ち上がり、
ベーゼンドルファーを起こした。




