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第96話 キャピキャピ調理部

結局お嬢様は連れて行かれた。あいつが接客するとか面白過ぎる。後で見に行ってみよーっと。大声上げて笑ってやるぜ。今からSNS始めようかな。投稿して晒したい。


「さて暇になったし、寝るか」


お嬢様とある程度回って一通り楽しめた。俺の高校一年生の文化祭はこれにて終了だ。どこか人のいないところで昼寝でもしようかね~。

ふと自分がどこにいるのか分からなくなり頭上を見上げてみると、そこには調理室の文字が。


「あら、てことは」


少し興味あるのでそのまま調理室へと入る。意外とごった返している室内ではエプロンを着た女子達がお菓子を販売していた。その中に一人、友達を発見。


「木下さんうぃーす」


「ひ、火村君っ?」


ズババッと勢いよくこちらを振り向いた時の顔はニッコリ笑顔、けど次の瞬間にはいつもの赤い顔で口をはわわ~と震わせた女子生徒、木下ゆずちゃんだ。

エプロン姿が可愛いね。最高だね。手作りかな。最高だね。


「ど、どうしてここに?」


「木下さんいるかなーと思って」


一度来たことあるし遠慮せず木下さんの下へ。

調理部は手作りお菓子を売っているみたいで、次々と人が出入りしてかなり繁盛している。これは売り上げが楽しみですな。木下さんが作るお菓子かー……あ、すいません十個程包んでいただけます?


「ちょっとゆずちゃん~」


「火村君来てくれたよー!」


突然の俺登場!に戸惑っていた木下さんは両サイドを女子に挟まれて調理場の奥へと連れて行かれた。あれなんか既視感、さっき同じような光景を見た気がする。


「か、彼氏じゃないよっ」


「何言ってんの。火村君の為に特別にクッキー作ったくせに」


「彼氏が来てくれるだなんて……この幸せ者め~!」


「う、うぅ……」


奥の方に行ったので何を話しているのか聞こえない。ヤバイ変態来たよどうしてくれんのよ、とか言っているのかな?

やだそれ……興奮する~! 可愛い子に引かれてこそ俺らしいと思うんだわ。俺を蔑むがいい、それが俺の糧となる。


「お店は私達に任せて火村君と回ってきなさいよっ」


「そうだそうだ、ほらクッキー持ってレッツゴー!」


どうやら向こうの内緒話は終わったみたいで木下さんが戻ってきた。後ろで女子達がニヤニヤしているのが気になる。私気になりますっ、みたいな。えるたそ~、股から足の指先までしゃぶり尽くしたいよ~。


「話は終わったのか。さあ俺をいくらでも罵倒するがいいっ」


「え、そ、そんなことしないよ」


そうかそれは残念だ。実は俺、可愛い子から罵られるとパワーアップする能力者なんだけど。嘘である。

ん、何やら木下さんの様子がおかしい。お腹の下ら辺でもじもじさせる手にはピンク色の袋。何持ってんの?


「あのっ、火村君……よ、良かったら一緒に回らにゃい?」


「にゃい?」


さらに赤くなった木下さんの顔から湯気が出てきた。噛んだことが恥ずかしいのか、両手で顔を覆って悶えている。

その後ろで女子達が「噛んだ」「噛んでもうた!」「でも可愛いから寧ろ良い!」等と叫んでいる。あいつら元気か。調理部の人達って面白いな。


「えーと、文化祭を見て回るってことでオッケー?」


「う、うんっ」


「俺なんかと回らず部活の奴らと行けば? 俺と回ってもつまらないと思うぜ」


クソな俺と一緒にいるところを見られたら木下さんの評判が下がると思う。火村と仲良くしているとかマジありえないんですけどー、と言われたら可哀想だよ。

火村陽登、基本的に人の嫌がることをする癖がありますが木下さんは例外だ。可愛くて俺なんかと仲良くしてくれる女子に酷い真似はしません。


「別に俺のことは気にしなくてええんやで。さっさと他の奴らと一緒に、げぼっ!?」


木下さんの両脇を抜けて女子二人が俺にタックルしてきた。ここ調理部だよね、ラグビー部の間違いじゃない?

意外と激しいタックルに対するは帰宅部の俺、当然吹き飛ばされた。俺は女子二人に拘束されて木下さんから離れたところへ連れて行かれる。


「ちょっと火村君! なんで断っているのよ」


「せっかくゆずちゃんが勇気出して誘ったのに……アホアホアホ~!」


女子二人から耳打ちで罵倒される。腹部へのダメージは今の罵倒で回復しました。マジか俺すげぇ。

つーか……状況が分からん。確かにクラス可愛い子上位の木下さんから誘われるのは嬉しいことだけどさ、木下さんの評判の為にも俺と一緒に回るのはやめた方がいいだろ。といったことを女子二人に言ってみると、


「はぁ……火村君はアホだな」


「アホだな~」


そうだよアホだよ、と返せばいいのかおい。なんでこいつらは呆れた顔しているんだ。ため息をつかれて胸を叩かれる。

え、俺が間違っているの? やはり俺の青春は間違っていた? まともに進学せず一年間ニートしていた時点で大間違いなんだろうけどさ。


「ほらほらぁ、ゆずちゃん待ってるよ」


「早く行ってあげて~」


「いや俺は、わっ、ちょ?」


反論する暇もなく背中を押されて木下さんのところへ。

後ろからすっごいプレッシャーを感じる……。断ったらどうなることやら。しゃーない、腹くくるか。


「あー、じゃあ一緒に見て回らない?」


「う、うんっ」


頬を赤らめたまま木下さんはふにゃふにゃの笑顔で答えてくれた。相変わらず可愛い笑顔しやがって、これが天然だからタチが悪い。

俺じゃなかったら即惚れているところだぞ。そして後ろの女共ぉ、キャーキャー騒ぐのやめい。


「行こうぜ」


「うん。……あ、えっと、みんなごめんね。お店の方お願いします」


木下さんがメンバー達に断りを入れているのを待ち、二人揃って調理室から出て行く。さてと、どこに行こうかな。


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