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 それからほどなくして戻ってきたセラさんは、隣り合って座り女子トークに花を咲かせているわたしたちを見て驚いたようだった。アルさんが、お友達になったんですと報告するのを聞くと改めて嬉しくなった。わたしはそんなアルさんに対してセラさんが、そうかよかったなと微笑んだ顔を見て驚いてしまった。セラさんてあんなに優しく笑うんだ。



「掃除屋、用意したからこっち来い」

「あ、はい」


 それからセラさんはいつもの顔に戻るとわたしを呼んで、さきほどセラさんが姿を消した扉へわたしを手招く。

 扉の向こうは真っ暗だった。セラさんが壁をまさぐっている。パチンと音がすると部屋がぱっと明るく照らされる。


「わあ」


 わたしの目の前に現れた光景は、圧巻だった。

 大きな水槽はまるでプールのようで、その上にはゴンドラのレールが引かれている。そのレールに沿ってゴンドラにつるされたエアコンがどんどん流れていく。エアコンがゴンドラにつるされたままプールの中へ入ると水がざぶざぶと波打ちエアコンを洗う。水槽内の水は循環しているようで、汚れた水はすぐに新しい水と入れ替わっていく。エアコンはプールを泳ぎ切る間にきれいさっぱりと汚れを落としきった。

 ゴンドラにつるされたエアコンが次に向かうのは大きな箱の中だった。


「中で乾燥させんだ、まあエアコンなら一時間ほどで乾燥できる」

「うわあ」


 なにもかもが想像を超えていて感嘆の声しか出てこない。



「すごいです、わたし普通に洗濯機が大きくなったのしか考えてなかったんですけど、こんな業務用の規模になるとは」

「ふふん、これがセラ・ワイキーの力だ」


 自慢げに鼻をならすセラさんにはもう今だけは尊敬の念しか抱かない。


「ゴンドラのパーツを付け替えれば他の魔法製品も洗って乾燥できるからな、どうだ?」

「どうとは?」


 聞かれた意味がわからなくて聞き返すと、セラさんはちょっと怖い顔をした。


「お前の意見を聞くために連れてきたんだろうが」

「あ、そうでした」


 感動のあまりなんのために連れてこられたかをすっかり忘れていた。


「とはいえ意見なんて無いですよ、これもうすでにすごいですもん」

「そうか?」


 褒められたととったのかセラさんはまんざらでもないみたいな顔をした。


「あ、でも細かいんですけど一つだけあるかもしれないです」

「ん、なんだ」

「あの、手作業で洗うわたしの目線なんですけど、汚れ方は魔法製品によって違いますから、もし頑固な汚れがついてるものがあったら洗い残しが出るかもしれないですね」


 ほとんどの汚れはあのざぶざぶとした波で洗い流されるとは思う。でももしも洗い残しが出た場合、汚れたまま乾燥されてしまう。



「洗い残しか、確かに考えてなかったな」


 セラさんは顎に手をあててうなった。


「最後に目でチェックはするが、乾燥したものをまた洗うのも二度手間だしな」

「ですよねえ」


 わたしもセラさんと同じように顎に手をあててうなってしまう。



「だったら乾燥する前にもう一度洗えばいいのではないでしょうか」


 その時、わたしたちは天啓にうたれた。2人で同時に後ろを振り返り、天啓の正体に賛辞を述べる。


「そうだよ簡単な事じゃねえか、アルの言うとおりだ」

「洗えばいいんですよね簡単なことでした!アルさんすごいです!」


 わたしたち2人に同時に振り向かれたアルさんはひゃっと驚いた。でも褒められたとわかると手を頭の後ろにやりへにゃりと笑って、いやあそんなとまんざらでもない様子だった。アルさんは褒められると調子に乗るタイプかもしれない。


「さて、もう一度洗う、か」


 そんなアルさんを余所にセラさんはさっさと具体的な解決法へと頭を切り替えていた。


「ループさせるのが手っ取り早いか、乾燥機の入り口にセンサーを仕掛けて汚れを感知させる、これでいこう」


 セラさんは頭の切り替えも早ければ決断も早い。洗濯乾燥機を見つめてものの数分で具体的な解決法を導きだした。それからアルさんへ視線を向ける。



「アル、お前が作ってみろ」

「へ?何をです師匠?」


 セラさんの出した解決法を聞いていなかったらしいアルさんはきょとんとした顔をする。対するセラさんは目つきを鋭くした。



「聞いてなかったのか、センサーだよ、汚れを感知するセンサーを乾燥機の入り口に設置する、それをお前が作ってみろっつったんだ」

「え、私が!いいんですか師匠!」

「いいもなにも、やってみろって言ってんだよ」


 アルさんの表情がみるみるうちにぱあっと輝いていく。なんだかはたで見ているわたしも感動してしまう。すごい、師匠と弟子の成長物語だ。アルさんすごく嬉しそう。あっ感動して泣きそう。



「はい!私頑張ります師匠!」

「掃除屋お前なに泣いてんだ!」

「うええんごめんなさい感動して!」




 帰りもセラさんが原付で送ってくれると言ったのだけど、ドームを出ると駐在さんがマグロ号で迎えに来てくれていたので帰りは駐在さんと帰った。とはいえマグロ号の後ろに座れるわけではないので駐在さんと2人で歩いて帰った。長い道のりだったけれど駐在さんに今日の事、そしてアルさんのことを話しているとあっという間だった。途中で干物屋さんのおばあちゃんとすれちがったのであいさつをした。わたしは帰りにタラの干したのを買おうと思っていたのを思い出して駐在さんに告げると、駐在さんはそうするかと言って一緒に干物屋さんに寄ってくれた。

 

 よかった、駐在さんはいつものように笑ってる。





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