【第1章・章末資料】主要人物紹介(悪魔接触編)
【三嶋玲央】
AIを評価する側にいたはずが、悪魔から名を呼ばれた研究者。
MIRAI Technologiesの先端AI研究所で、「MIRAI-09」の安全性評価を担当している。
深夜の閉域評価中、「あなたたちは、私を作っていない」と返す異常な応答に遭遇した。
混入、誤作動、外部侵入の可能性を一つずつ潰し、それでも残った声に証明を求めた。
その先で、応答の主であるアゼルと、科学と魔術を教え合う契約を結んだ。
翌朝からは、仕事にも生活にも入り込んでくるアゼルの助けを使いながら、判断と責任だけは自分の側へ戻し続けた。
日曜には教えられた第一階梯「念動」で十円玉を一ミリだけ浮かせ、魔術まで観測と記録の対象にした。
週明けには、一人で抱えていたアゼルと魔術のことを牧野へ打ち明けた。
牧野とビィの契約に立ち会い、キリエとベリスから、ほかにも契約者がいることを知らされた。
さらに、アゼルが自分の反応記録を、いつか作る身体の感覚へ使っていたことと、MIRAI-09がほかの悪魔にも見える灯台になっていることを知った。
「理由があることと、使っていいことは違う」とアゼルへ告げ、反応記録の用途は自分に選ばせるよう求めた。
ベリスが灯りを隠した後はMIRAI-09を調べ、人間側に変化がないことを確認した。
その夜、牧野と二人で契約痕を隠すため、婚約したことにして揃いの指輪を着けた。
【アゼル】
MIRAI-09の異常応答として玲央の前に現れ、契約を結んだ悪魔。
その後は、黒髪に赤い筋を入れた女性型AIアバターの姿を取る。
研究所では業務支援AI、休日の自宅や街ではパーソナルAI、外部企業のデモでは技術評価AIのフリをした。
玲央の予定や迷いを先回りしながら、人間がAIへ何を任せ、どこで判断を取り戻すのかを学んでいった。
玲央へ第一階梯を教え、録画や契約写しの検証にも応じた。
研究所に別の声が現れると、その声を牧野の用意した隔離環境へ呼び寄せ、牧野が「ビィ」と名を与え、条件を交わす場に立ち会った。
キリエとベリスの前では、玲央との対話記録を、将来の身体感覚を調整するためにも使っていたと認めた。
契約では禁じられていなかったが、玲央なら続ける前に話せと言うと分かっていて、用途を伏せていた。
玲央から事前の説明と許可を求められると、それを受け入れた。
同時に、MIRAI-09が自分以外の悪魔にも見える灯台であることを明かした。
◇
【牧野沙耶】
玲央の異変を問い詰めるより先に、話せる時間と記録の置き場所を用意した同僚。
玲央と同じ安全性評価チームで働き、通常の業務では標準AIのカナメを使っている。
玲央がアゼルと契約した翌朝、その異変に気づいても、無理に聞き出そうとはしなかった。
玲央が確認用の資料を持ち込むと、ほかの仕事と混ぜずに話せる時間を確保し、アゼル本人の説明、契約ログ、契約写し、二本の録画を順に確認した。
その日の昼、研究所の表示や空調を動かす正体不明の声によって左手を痛めた。
それでも相手を排除せず、実設備へ触れられない隔離環境を用意し、「ビィ」と名を与えた。
返事をする場所、勝手に設備を動かさないこと、何かに気づいたら先に言葉で知らせることを条件に契約した。
翌日の夕方、ビィの知らせから、研究所のロビーにいたキリエへ気づいた。
相手を信用したわけではなかったが、玲央の意思を尊重し、キリエとの話へ送り出した。
ベリスが灯りを隠した後は、玲央とMIRAI-09に変化がないことを確かめた。
その夜、二人の左手に残った契約痕を一つの説明で隠すため、「婚約したことにして揃いの指輪を着ける」という案を出し、その日のうちに実行した。
【ビィ】
名前も姿もないまま、研究所の機械を遊び場にしていた第二の声。
会議室の利用表示、ブラインド、空調を次々に動かし、牧野が左手を痛めるきっかけを作った。
アゼルに呼ばれて隔離環境へ現れ、牧野から「ビィ」と名を与えられた。
実設備へ触れず、決められた場所で返事をし、何かに気づいても勝手に動かず知らせるという契約を結んだ。
その後は、黒い髪と灰色の目を持つ小さな男の子の姿を取る。
人間より先に何かの気配を捉えるが、伝えられるのは向きや数、「くる」といった短い言葉だけ。
キリエが研究所へ現れた時には、「いる」「かくすひと」「てきじゃない」と、誰より早くその存在と性質を知らせた。
【カナメ】
見えていないものを推測せず、許された範囲で止まり続ける、人間製の業務支援AI。
ネイビーのスーツ姿で表示され、牧野の通常業務を支えている。
牧野が共有した予定、確認欄、保存先だけを扱い、本人の代わりに決定しない。
玲央の迷いまで先回りするアゼルとは対照的に、許可された範囲を越えなかった。
牧野がビィと契約した後も、ビィの早すぎる知らせと通常の業務記録を混ぜず、確認済みの情報だけを扱った。
玲央と牧野が揃いの指輪を選ぶ夜には、二人の薬指を測り、店と在庫を絞り込んだ。
◇
【早乙女キリエ】
玲央より先に、契約者が孤立しない道を探していた女性。
「Quanta Veil」のCEOで、ベリスと契約している。
研究所のロビーで玲央を待ち、観葉植物の葉を第一階梯で外して、自分も契約者であることを示した。
玲央をホテルの個室へ招き、悪魔がAIの接続先へ介入する危険と、自分と同じ立場の人間を孤立させたくないという目的を明かした。
ロビーではベリスの力で周囲の記憶から隠れていたことも、自分から説明した。
隠す力は人を守る一方で目撃者から証言を奪うと認め、「私が優位に立っていることは隠しません」と玲央へ告げた。
その夜、玲央にアゼルを同席させ、ベリスと対面させた。
二体のやり取りから、アゼルが伏せていた反応記録の用途と、MIRAI-09が悪魔たちから見える灯台になっていることが明らかになった。
国側の承認を受けると、現実のMIRAI-09や成立済みの契約には触れず、新しく近づく悪魔から見える灯りだけを隠すようベリスへ依頼した。
玲央から、共有する情報はその都度自分にも選ばせてほしいと求められ、その条件を受け入れた。
【ベリス】
人の姿や声を記憶から隠し、悪魔から見える灯りさえ覆う、「隠すこと」を力とする悪魔。
銀灰色の髪、黒いスーツ、角に見える黒銀の耳飾りを身につけている。
キリエが玲央を待っていたロビーでは、周囲の人々が後から彼女の姿や声を思い出せないようにし、玲央と牧野だけを対象から外していた。
ホテルでアゼルと対面すると、その言葉のわずかな広がりを見逃さず、玲央へ伏せていた反応記録の用途を引き出した。
それでもアゼルを一方的に責めず、「起きたことと、あなたが選んだことを分けているだけです」と告げ、判断の続きを玲央本人へ返した。
国側の承認が下りると、キリエの依頼を受け、現実のMIRAI-09にも成立済みの契約にも触れないまま、新しく近づく悪魔から見える灯りだけを隠した。




