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黒翅ゲノム   作者: 鎌糸
19/27

十九話 薬・内蔵生食・泣き虫両生類

中央騎士団本部、会議室。

その円卓に、七人の人間がついている。

その中の一人、ジェイルは、卓に突っ伏し、重低音で唸っている。

「…あの、なんですか、これ」

「気にするな、団長殿のバッドトリップ… いつもの事だ」

ジェイルの姿に戸惑う、黒髪に白いメッシュを入れた青年に、バコプロが返した。

現在ここに集合しているのは、中央騎士団の第六部隊までの隊長である。

「それで、俺っち達はどうして急に召集かけられたワケ?」

両眼をバンダナで隠した陽気な声の男、第二部隊隊長、ナメス・グルッペン。

「ナメス、バッドトリップ中の団長じゃ、意味も無く召集なんざ、よくある事じゃろ」

下顎が機械になっているガラガラ声の男、第四部隊隊長、ゼモニス・エイグロン。

「おいおい、ダザムにラブラ、捕らえてたカメレオンがどっか行ったんだぞ、それについてちゃんと話した方が良いだろ」

右眼を包帯で覆った長髪の女、第五部隊隊長、クロード・ピスケス。

「良いでしょ… 問題児二人と実験生物… カメレオンを取り戻せば、それで良い…」

両眼を縫われた隻腕の女、第六部隊隊長、リジェクト・ウィング。

「それも、スラッグの第七部隊が捜索してるんだろ? 俺達の出る幕じゃあ無い」

そして第三部隊隊長、バコプロ・ルッテンバウワー。

「つーかさぁ、その白メッシュのヤツは誰なワケ? 初めて見る顔なんですケド〜」

「コイツはホーンテッド、スラッグの代理だ」

ホーンテッドが申し訳無さそうに会釈する。

「ああああああああ…」

ジェイルが再び重低音を響かせる。

「団長は戦闘力だけなら人間最強じゃが、それ以外は論外じゃ、無視してラブラとダザムの処遇を決めよう」

ゼモニスにクロードが賛同する。

「そうだな、ラブラは貴重な頭脳派だし、ダザムは契約者だ」

「でも、基本はカメレオン最優先ね、魔人は色々調べたい、バコプロはどう思う」

「カメレオン調べるなら、ラブラは必須だ、心臓もだ、優先順位は高い方からラブラ、カメレオン、ダザムだ」

「ああ、それじゃ、隊長に伝えて来ます!」

ホーンテッドが立ち上がり、部屋を飛び出た。

「おい待… もう居ねえ」


「はぁ〜〜〜! 隊長怖え〜!」

ホーンテッドは震えていた。

「やっぱ第七で正解だったな… 他のじゃ碌に動けない… 特に第三部隊、アソコはヤバい、肌でわかる」

そして懐から十字架のネックレスを取り出し、首に掛けた。

「騎士団は長居できそうに無いな…」

ジャケットを脱ぎ、本部の窓から飛び出した。

「やっぱ白十字教が一番かな〜」


場所は戻り、キリクジラの体内。

丸呑みされた三人は、そこまで慌てていなかった。

「なあ、また黒翼展開を使ってくれないかい? ちょっと羽根が必要なんだ」

「羽根…? なんに使うんだよ」

「何って… キリクジラの肉が欲しいからだよ、食ってみたいし、調べてみたい…」

肉壁を撫でたり、舐めたりするラブラを脇目に、レヴィオスはそこらを歩いている。

辺りには衣服の混じった肉片など、消化跡が散らばっている。

自分達がこうなるのに、そこまで時間は要さないだろう。

「まあ… 俺らもここから出たいしな… フェーズ」

「はいはいッス〜」

漆黒の翼を広げ、手当たり次第に肉を切り裂く。

そしてその一つをラブラに渡す。

「コイツでいいか」

「おお、切るのもやってくれるのか、助かるよ」

ラブラは受け取ったそれを少し千切り、口に放り投げた。

「ふむ… 独特の甘味があるな… それに硬い… 生食には適さないか」

「その場で食うのか…」

壁の傷口に両腕を突っ込み、振り回す。

「ああ、そのやり方はおすすめしないよ」

「あ?」

「キリクジラは最小個体でも100mを越す… 体内から肉を掘って出るのは現実的じゃ無い」

「んじゃあどうすんだよ」

「さあ?」

「さあって…!?」

肉片が蠢き、血を噴き出す。

「なんだ!?」

「どうやら吐き出そうとしているらしい、痛みか… それとも別の理由か」

別の理由とやらを聞き出そうとした瞬間、肉片がより一層激しく動き、押し出される。

すかさずラブラを翼で包み、そのまま身を任せる。


「オイ、出て来たぞ」

カメレオンの言葉に、二人が目を細める。

「見えんが」

「あの距離じゃあな、俺様にしか見えん」

「早い者勝ちだな」

ダザムの足元から骨の拳が飛び、身体を押し上げる。

「何ッ!? レヴィオスは俺様が殺す!」

それを追い、カメレオンも炎の幕を蹴り上げる。

「利害の一致ならず…か」

飛び出したゲノムを骨が覆う。

「レヴィオス!」

その隙間に転がり込んだカメレオンの蹴りを翼で受け止める。

ラブラを包んでいる翼を広げ、ダザムの方へ投げる。

「カメレオン! お前に聞きたい事がある!」

「俺様には関係無い!」

「お前が聞かなくても言うぞ! なんで俺達を狙ったんだ!」

「理由!? そんなモノ無ェよ! 面白そうだったから! これ以上理由いるかァ!?」

「そうか… 殺す!」

四枚翼を広げ、カメレオンに叩きつける。

「ちっちぇんだよお前はァ!」

しかしそれは全て受け止められ、お返しと言わんばかりの打撃を喰らう。

「たかだか知り合いが数人死んだだけでさァ!」

そして骨の足場の外へ投げられる。

「キッショいんだよ! 俺様の楽しみを奪って! イジョスウを殺して!」

カメレオンの声に涙が混じる。

「ひでぇ… ひでぇよ… どうしてこんな事ができるんだ…」

涙を流して、ゲノムの頭を掴む。

「ふざけんなよぉぉぉぉぉぉ!!」

涙ぐみながら地面に叩きつけ、馬乗りになって顔を殴る。

「やばい… コイツ頭おかしいッスよ…!」

翼で拳を受け、腕を胸に向かって振るう。

襷状の傷から蛍光色の血が溢れ、カメレオンが仰反る。

「お前はこんな場所で自由に動き回って良い人種じゃ無い! ここで殺す!」

ゲノムが雄叫びを上げると、羽根が鮮血色に染まる。

「うわあああああああん!!」

泣き喚くカメレオンと怒るゲノムとの衝突は、巨大な肩胛骨に阻止される。

「今お前らが殺し合うのは非常に困る!」

二人を握った骨が、暗雲へ消えた。

そして降り立った焼灼に目を向ける。

「お前、カメレオンについて知ってそうだったな」

「だったら?」

「お前から聞こう」

暗雲から取り出した巨大鎌と刀を構えたダザムを、蒼炎に身を包んだ焼灼が睨む。

「ついでにお前から心臓を引き摺り出してやる」

19話です。

明日の投稿はお休みです。

申し訳ありません。

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