Deviance World Online エピソード7 『我が極光』
試験的に冒頭に誰視点かを書いてみました
三人称[騎士王]アルトリウス
空中に転輪が浮かんでいた、巨大な円環。
『超越思考加速』による超越的加速、プラズマによって光り輝く円環は眩いばかりの光を纏っている。
流星、まさしくメテオール。
理屈自体は比較的簡単だろう、端的に言えば粒子加速器だ。
粒子加速器は磁場を用いて荷電粒子に円形の軌道を描かせて加速する加速器であり、粒子を光速の99.9999991%まで加速させることが可能な装置である。
そこまでの圧倒的な加速を達成できる理由は、内部に存在する粒子が限りなく周囲の空間から干渉を受けないため。
抵抗がゼロに等しく、与えられる力をほぼ100%で出力できるが為にそこまでの圧倒的な速度を発生させる。
ましゅまろも、また同じだ。
外部より力を得ているわけでないからこそ、先に語ったほどの圧倒的な加速は達成できていないが自らが生み出すエネルギーを『超越思考加速』による物理干渉が限りなく低い疑似領域でそのまま速度に転用している。
それも、10倍の時間の最中で。
有するエネルギーは核爆弾数百か、数千か。
ファンタジーにおいて現実による指標を持ち出すのはナンセンスであるというモノの、分かりやすい言葉で陳腐な絶望感を演出するにはそう語るのが正しいだろう。
人型に圧縮されているだけの高密度エネルギー体、自然災害に等しい力を持つ人型生物。
ソレを言葉にするのならば、こういうべきなのだろうか。
『神』
認めたくない、認めざるを得ない。
稲妻のように巡る刹那の問いかけは答えではない正しさを訴える、そんなものなど聞きたくないというのに。
背けるべきではない視線を背け続けた罰か、或いは背けていたからこそ救われていた心への責か。
苦渋のように染み入る痛みはアルトリウスの活力を奪い、戦う理由を失墜させて。
けれども正義のためにと、奮い立たせてくる。
この魔術は、アルトリウスの弱さを証明する魔術だ。
自らでは至れなかった道の果て、権能に何れたどり着く深淵の力。
完成しているが故に術理を理解できず、魔法陣を完全に模倣する以外で再現できない魔術。
黒狼が用いた、偽りの月光。
ソレを真なる聖剣で、完全なる月光を翳す。
「『我が道に、ソレは非ず』」
仇敵、宿命、悪意、敵。
日出るところに日が没するように、月が満ち欠けることさながらに超常的な必然。
宿命の敵である男が翳した月光を垣間見る、僅か一瞬をともにした戦いを思い返す。
初めてのレイドバトル、思いのほかに自らの心中燻る感情を奮い立たせた戦いを。
抱いてはいけないと戒めたはずの思いを、ソレを抱く時点で罪であったはずの感情が。
それでもなお、思わず抱いてしまった愉悦快楽を。
最大の汚点である戦いを、思い返す。
我が道に、ソレは在ってはならない。
楽しいという感情は捨て去るべきだ、この世界に栄える人々を。
彼らを思いこうして騎士王を名乗るのならば、楽しさを感じてはいけない。
淡々と粛々と、生きているという実感だけをたっとび死んでいないという事実を喜んで。
誰よりも本気で、この世界に挑んでいるのだから。
「『我が胸に、ソレは非ず』」
すべての時代、すべての世界、すべての人間により定義され答えが異なる『正義』など。
もとよりこの胸に抱き、戦うことは許されない。
他者によって規定され他者によって意義形を変えるモノなど、『正しさ』であるわけがなく憧憬すれども抱くことはあってならず。
騎士王は、正義の代弁者であれども正義の執行者であってはならない。
自らに抱く正義ではなく、誰かが掲げる正義を。
滅私により自らの顔を潰して、人ならざる生き方で奉仕する。
世界に自らを捧げ、人々に自らを捧げ、そうあり続けなければならない。
覆面の正義、あるいは顔の無い代弁者であるといえばいいのか。
あるいは人間として欠落した自我を持つよう、自らを定義した完全無欠の存在か。
「『ゆえに我が極光を翳さん』」
術式が大きく展開される、彼もまたビルドとしては前衛職万能型。
黒狼と同じく器用貧乏、あるいは器用万能を究極まで突き詰めた存在。
逆光によって顔が照らされる、その背にすら影が生まれないほどの光の中で剣を構えていた。
人は信じられるから強くなれる、誰かに望まれるからあと一歩を踏み出す。
その光は期待の証明、望まれたからこそ答える騎士の証左。
人型の願望器に等しいだろうか、その生き方は。
果てしなく詰まらないその生き方は、顔も名前も知らない絶望を歩む誰かを掬うための。
どこまでも甘露で温く、傷ついた心をぐじゅぐじゅに腐らせる善意だろう。
音が、一瞬だけ響いた。
気がした。
「……ッ、貴方!!」
「星が落ちますか」
「流石、だな。異邦人も、舐めたモノではないらしい」
「手前……」
「アンタ、なのかい?」「おかーさん? お星さまが」
「ふむ、興味深い」「なんだアレ!!?」「あの輪は何のレイドボスだ!?」
「何が起こっているでありんす!?」「ふむ、筋肉の成すがままに」「ワシはこの国の貴族だぞ!!」
「神様、ああ神様」「ひっひっ、もう死ぬしかないんだー」「逃げろッ!! 逃げるんだ命懸けで!!」「ああ!! 死にたくない!!」
「人間技じゃねぇだろッ!! そんな攻撃」「えー? 迎撃魔術組めないんですけど!?」「『グランド・シールド』、隠れろ!!」「ありゃ、ヤベェの」「私に、切れるさね?」
誰もが直感していた、新たな神の降臨を。
新たな神の一撃を、彼女が求める超越の先。
神と王の遊戯による、王都の崩壊を。
時が止まった一瞬のような刹那、刹那に等しい一瞬。
瞬きもしない瞬間における死を予感し、どうしようもない『死』を垣間見る。
地震や竜巻に出会ったような理不尽による殺戮、レイドボスによる本当の脅威。
そして、そんな怪物に匹敵する騎士王へ無意識の期待とともに。
二人だけの時間、INTではない本能による引き延ばされた一瞬。
認識が出来ない交差、まともな迎撃が放てるわけもない。
この星の中で存在するすべての生物を超克したましゅまろは、正しく『流星』だろう。
流星が降るというのは、人間が抵抗できるモノではないのだ。
「まさか」
声に出ていたのか、ソレすら定かではない。
いや声に出ていたとしても音に放っていないだろう、それほどの刹那の瞬間を二人は生きている。
誰も介在できない時間の隙間を、空間と時空の狭間で。
聖剣の光がより一層輝いた、グランド・アルビオンすべての人々の願いを乗せ聖剣はアルトリウスに再び問う。
この戦いは正義なのかこの戦いは正しいのか、或いはこの戦いの果てに正義はあるのか。
答えのない問いかけに断言する、もはや決まりきった答えを。
「正しいに決まってる」
エクスカリバーは、アルトリウスの言葉に応えた。
空間が歪み世界という境界を一時崩壊させかねないほどの魔力出力を誇る、ソレだけの魔力が先に述べられた詠唱と相乗効果を起こし僅かばかりに権能の領域へ到達する。
まだだ、それでも足りない。
星降る権能、超越の女神を倒し超えるには権能の領域ではまだ不足する。
もっとだ、もっと遥か高みへ。
「『今ここに、王たる力を証明しろ』」
ほんの刹那、拮抗していた天秤が僅かに傾いた。
表面張力で保たれていた水が零れる様に、僅かな均衡が崩れ去る。
音も世界も認識できなかった一瞬は、その詠唱が完了することにより現実へと回帰した。
王たるアルトリウスの、詠唱を以て。
「『【光り輝け、我が極光】』」
更新が遅れて申し訳ありません。
どこかのタイミングで遅れた分は書いておきます。




