Deviance World Online ストーリー7『ディストラクション』
爆炎の中心、未だ熱が燻る渦中。
その爆炎ごと切り裂くように、モードレッドの凶刃が振るわれる。
「『クラレント』ッ!!!」
この爆炎を受け五体満足なのはその聖剣のお陰に違いない、厄介さを再認識しながらロッソは防御魔術を多重に発生させ剣を受け止めた。
モードレッドは円卓の中でも強い部類だ、この一瞬で殺しきりたいという胸中の欲はある。
だがその欲をかけばこの戦いで何もしていない円卓が、その牙を剥く。
最後の円卓、そしてこの盤面におけるもっとも厄介な存在。
ヴェディヴィエール、彼がソコに立ち静かにバフを振りまきながら指揮を執っている。
一見無秩序的に思える彼らの動きは、確かに彼の手の内で操作されていた。
当の本人が戦闘を得意とせず、邪魔程度にばらまいていた雑兵に天手古舞となっているのが幸い。
本格的にこちらを向かれれば勝ち目が相当に薄くなる、彼もまた速攻で倒すべき敵だが。
ソレをさせないのがパーシヴァルだ、彼の攻めと守りは余りにも固く耐久が酷く高い。
だから高火力高出力の魔術を用い、盤面を動かそうとした。
「『ヒール・サークル』、『守護者の癒し』」
「防御特化って回復技能必須なのかしら? 嫌になるわよ」
「戦いとは他人の嫌がることを進んでやること、私はそう考えます」
「騎士道精神からかけ離れてるわねぇ」
モルガンが消えたせいで手数もない、実際押し込まれているのは間違いなく。
けれども運動音痴クソ女が消えたおかげで、出来ない策を出来るようになるのもまた事実だ。
魔力を回収する、事前に仕込んでいた魔術を解除した。
消耗戦に持ち込めばロッソが狙える勝ち筋はスタミナ切れになる、しかし最も厄介なパーシヴァルは騎乗して戦っている以上スタミナ切れを待つ耐久戦が不毛だ。
望むはパーシヴァルの排除、だがそれを簡単にはさせてくれない。
ならば多少強引でも、そうさせるまでの話。
「『出でよ、【合成獣・鳥虎蛇】』」
「また召喚獣ですかッ!!」
「魔術師は後出ししてナンボなのよ、モルガンから学ばなかったのかしら」
暇つぶしで一か月間遊んでいたわけではない、むしろ一番忙しく働いていたと自認している。
多数のモンスターの作成に複数の武器開発、ワルプルギスの安定化。
地味だが裏方としてやらなければならない仕事の数々、確かにそれらすべてを熟した自負と実績がある。
だからこうしてその自負と実績は成果となって帰ってきた、一か月前の自分ならばできなかったことが出来るようになったという形で。
「悪いけど、面白い戦い方はできないの。ゆっくり肉が抉られ削られる、そんな戦いをしましょ?」
「アア゛ッ、シャラくせぇ!! この怪物はオレが受け持つッ!! お前らはこの性悪を倒せ!!!」
「私もそちらを手伝い、させてくれませんか」
「『来たれ、【錬金人形】』」
最小にまで簡略化した詠唱により、攻撃の合間を縫って自らが錬成した怪物を召喚する。
正直単一での強さはまぁまぁ、アルトリウスはおろかガウェインやランスロットにすら劣る彼ら相手でも複数人で囲まれれば即座に死ぬだろう程度、
だが現在戦場には複数の『SNS』が存在する、彼らは周囲のステータスを一回り低下させたようなスペックを持つ人形。
戦闘技術は高くないが、振り回す剣で普通にダメージを与えてくる。
そんな雑魚よりも優秀で厄介なモンスターを召喚された、処理をせず戦闘するという選択肢はない。
「このオートマタは私がッ!!」
「サー・ケイ、流石に君には荷が重すぎる」
「ですが彼女を放置すればますます召喚獣を出され、押し込まれてしまう!!」
読みも経験も浅い、というよりはソレが出来るのなら既にやっている。
同じ芸当が出来るだけの魔力がない、ソレを読み切れないのは経験不足からくることだろう。
だがその勘違いは嬉しい、そう勘違いしてくれるだけで全員の思考に切り捨てたはずの可能性が舞い戻る。
ロッソが、まだ余力を残している可能性。
「『泥より変質し』」
なら、その勘違いを加速すればいい。
魔力不足で不発になるであろう魔術を、けれど詠唱だけはする。
選択肢を用意してやればいい、盤面を支配すると言うのは自分が選択肢を握ると言うことだ。
分かっていても対応できない、例えこれが罠だとしても彼らにとってロッソの行動は全て不透明だ。
この詠唱が失敗する、それを前提として使用されていたとしても。
「させるかっ!!」
「ほうら、引っかかった」
見え透いていても、踏み抜いてしまう。
残念なのはこれがパーシヴァルではなくボールスであり、また致命傷に届かない一撃だったこと。
反対に幸運だったのは、これでレーザー砲を当てられる、
魔力が充填された二門、それが超高出力とともにレーザーを放つ。
戦いは唐突に、必殺は一瞬で。
当たれば死ぬ攻撃を態々宣言してやる必要はない、それがつまらない攻撃と言うのならばつまらなくて結構。
退屈であっても強ければそれで至上、弱ければそもそも用いない、
「『騎士の意地』!!!!」
「『ポイズン』」
無理矢理にカット率を上げ耐えたらしい、だが毒付与による継続ダメージで倒し切れる。
そう判断し、次の攻撃を。
「『再生』ッ、まだ死なないぞ」
「無駄に固くて面倒って、よく言われないかしら? 『出血』」
ならば、確実に殺すまで。
体表面における傷はそのスキルを使用する条件を満たしている、血抜きするときに用いるスキルではあるが戦闘でも使える技だ。
いや、どちらかといえば解体するときに使えるスキルというよりは戦闘用な気もしなくはないが。
戦闘でこのスキルを使う状況になるのなら、その時点で勝利をしている。
効果は単純、体内に存在する血液を体外へ強制的に排出させ、出血による割合ダメージを発生させるのだ。
血しぶきが噴出し、一気にダメージを受けボールスは地に伏せる。
殺した、ダメージは間違いなく彼のHPを超えているに違いない。
そう考え、後ろに下がろうとしたが。
「どうやら、私が思っている以上に貴方たちって頑丈なのね。まるでゾンビ、アンデッドって名乗るべきじゃないかしら」
「『不死行進』、まだだッ!!」
「そう、『サンシャイン』」
死体には光と相場が決まっている、態々手間を掛ける必要はない。
即時に殺す、ソレだけを目的として放った光は確かにダメージを与え。
与えていない、失念していたのだ。
魔法耐性を持つ魔法金属、一種の希少鉱石。
ミスリル銀、鉄や鋼と言った金属よりははるかに耐久が劣る代わりに対魔法耐性に関してはこれ以上なく高い。
一見すれば『ミスリル銀の対魔法耐性』と『アンデッドの弱点である光』に何の因果が存在するのか、と疑問に思うだろう。
だが勘違いしてもらっては困る、アンデッドが何故光に弱いのかと言うのは基本耐性値が光属性に対して完全に0であるのに加え。
スキル『光耐性(反転)』を高レベルで取得しているため、だから日光程度の本来では微小とも言えないような。
精々肌の色が黒くなる程度のダメージしか発生しない日光でも、致命傷に変化する。
なので攻撃としては処理されない、処理されないのだが一応攻撃分類は間違いなく括られており。
これは分類として『属性攻撃』、大別すれば『魔法攻撃』に分類される。
ミスリル銀は、そしてそれらの装備は使用者に相当な『対魔法耐性』を与える。
0をどれだけ掛け算で増やそうとしても0でしかない、十分なダメージを発揮する光属性の攻撃でなければこの魔法耐性を突破できずに耐えられる。
そして円卓ほどの、ボールスほどの実力があるのならば得られる一瞬で他を活かす手段を実行できるに決まっていた。
もはや、ロッソの反応は遅い。
「『死して標となれ』」
ポリゴンに変化する、生きている人間は死者と適合できない。
『死因進化』でも持たない限り、継続して戦場に居座ることはできないに決まっている。
だが残る一瞬で、残像が如き僅かな時間で大きな一助を発揮することはできる。
「『騎士は騎兵と共に』『ディストラクション』」




