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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『終わらぬ夜の暗月』

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Deviance World Online エピソード7『白銀』

 状況は、まさしく最悪だ。

 ワイルドハント、否。


 海賊、ドレイクは自嘲する。


 海は時化っている、船は揺れに揺れており雨まで降り始めた。

 元気のない毛先を雑に弄りながら、もう一撃と狙いを定める。

 もっともその攻撃が叶いそうにないのは重々承知の上だ、運がないとはこの事か。


「あのスケルトンめ、全く運がいいらしい」


 そもそも、追い詰められているのはこちら側。

 この戦いでフラッグを回収せねば、イベント戦に負ける。

 黒狼らはすでに二つのフラッグを持っていて、戦う必要性は本来ないに等しい。


 もっとも、そこで引き下がる性分ならば渡してはいない。

 建前だけでも渡すわけない、奇跡的な脱出をされるだなんて思ってもいなかったがそれでも。

 みすみす戻ってくる性分だとわかりきって、否。

 完全勝利を望む性分であるとわかりきっているのだから、渡したのだ。


「来るね、覚悟は良いかい!!」


 聞くまでもない、船員は鬨の声を上げ叫ぶ。

 戦いを望まないのならそもそもこの血盟に混じるわけがない、海を覇するという盟約のもとに集った益荒男どもしかいないのだから。

 船が揺れた、五人が飛び降りたのだ。

 『混沌たる白亜』を名乗る、『キャメロット』に挑まんとする馬鹿どもが。


「不死の王、嵐の海、『ワイルドハント』の戦いを見せつけてやるねェッ!!!!」

「来いよ、ドレイクッッツツ!! さぁ戦いを始めようぜ、最高に楽しい戦いをな!!!」


 次の瞬間、一層船が揺れた。


* * *


 次の瞬間、黒狼らは海に吹き飛ばされていた。

 さすがに青ざめる、ウソだろというように顔をゆがめながら手段を模索し。

 けれども黒狼は耐えられない、それほどに多彩な手段を有していない。


「初手、場外に飛ばすとは」

「全く予想外ね、酷くないかしら」

「うむ、奇想天外であるな!! これぞ、青天の霹靂というわけか!!」

「雨天だがな」


 最も、飛ばされたのは黒狼だけ。

 モルガンはネロを抱きかかえながら空中を踏みしめ、ロッソは箒に座っている。

 村正はワイヤー付きの刀を船に突き刺し、速攻で船に戻った。


 コイツらと怒りを半分露にしながら、黒狼は式装捌式『パイルバンカー』を取り出し瞬間的に装備。

 なにもセットせずに発動することで衝撃を発射、本来は武器に行くはずの反動を腕で受け止めながら空中に再び舞い上がれば。

 そのまま足装備を起動し、極薄の結界を蹴りつけ空を跳ぶ。

 あとはステータスの暴力で一気に戻るだけ、ではあるが……。


「イッ、テぇ!! よくそんな揺れ動いてる甲板で狙撃なんてできるな、バカが!!」


 結界を撃ち抜かれ、真っ逆さまになる。

 なるほど、さすが単一クランによるレイドボス級討伐経験を持っている強さだ。

 生半可な力で挑めば一瞬でお終い、どころの騒ぎじゃない。

 攻撃速度、頻度、精度、火力。

 どれを取っても超一流、黒狼らと比較しても遜色がないどころか普通に上だ。

 けれども絶対的な弱点もある、それはすなわち。


「テメェのワンマンチームじゃ、俺たちを攻略するのは不可能だぞ?」


 右腕を撃ち抜かれながらも前進する黒狼は不敵な笑みを浮かべて加速する、宛ら弾丸のように甲板に向かって飛べば突き刺さるようんび着地をし。

 瞬間、その首を狙われた。


 一撃目を回避できたのは奇跡だろう、認識は出来ていたというのにも関わらず着地に意識を向けなければならなかった。

 だが続く二撃目は違う、剣を携え黒狼はその一撃を確かにはじいた。

 目の前に立っている、彼女の姿を見る。


「さすがに初手でドレイクはないってわけね、なぁ『白銀』」

「クラリス、私の名前。この前の仇討と行かせてもらう、拒否権は」

「同じ気持ちだよ、半端な決着は俺も嫌いだ」


 高速の連撃、着実な打撃。

 折々に発生するエフェクトは暗黒色に白を織りなし、瞬きのように生まれれば消える。

 『白銀』のクラリス、重装備に身を包んだ彼女は一瞬ならばキャメロットの騎士を連想するかもしれない。

 だが完全に顔を覆う兜に、通常では考えられない大きな鎧がソレを否定する。


「『構え』『突き刺し』」

「『カウンター』、無理かマジか!? 『パリィ』ッ!!」

「『転式:白打』、『大切断』」

「無理無理っての!? 『狼牙・牙突』!!」


 紙一重の回避、連続攻撃の応酬。

 頬が切り裂かれた、ダメージを負っている。

 不味いと理解しながらも十分な回避が出来る状況ではない、互いにカウンターを運用しながらも大技を当てる隙を狙い。

 けれどもそう上手くは話が通らない、只でさえ黒狼不利なフィールドである現状だ。

 カウンターどころか、通常攻撃すら十分に通用するかどうか。


「いや、させるだろうが。甘ったれんなよ、俺? 『復讐法典:悪(アヴェスター)』」

「なッ!?」


 その魔法の攻撃にクラリスは驚いたのではない、黒狼の胸に突き刺さった己の刃に驚いたのだ。

 回避されると確信していた、だというのに食らった。

 一瞬だけ思考が加速し、目の前の現実を否定するかのように焦りを隠せない。

 もしも本当に食らったとしたら、一体どんな理由で……。


「ガㇵっ、まさかダメージの共有……!!」

「へぇ、理解が早いな。大正解だよ畜生が、というわけで死ね!! 『串刺し(カズクィル)』」

「『緊急回避』、うぐ……。バカ、そんな安易に出せていい技じゃないはず……。何か明確なデメリット、ダメージ量? なるほど理解。なら、恐れるに足らない」

「早い早いっての!!?」


 トッププレイヤーの理解力には恐れが出る、状況適応能力も酷く高い。

 流れるような操作によりポーションで回復処置を済ませれば、カウンターを想定した攻撃へと動きが切り替わる。

 さすがに発動条件や効果の詳細までは看破し切れて居ないようだが、時間の問題か。

 額から流れる汗をぬぐう暇もなく、黒狼はより一層目を険しくし。

 ただ静かに持っている武器を、握り替える。


 認めよう、あるいは認めざるを得ない。

 彼女もまたプレイヤーの中で頂点に位置する一角、トッププレイヤーが一人。

 『白銀』という二つ名を持つ最強核、野良のトッププレイヤーという性質からその強さもまた半端なものではないはずだ。

 舐めていたわけなどないが、舐めた態度を改める。

 殺すのだ、確実に。

 そして徹底的に、そうしなければ勝利など夢のまた夢。


「苦戦してるわね、妥当ってところかしら」

「いう暇あるなら、『パリィ』!!」

「もちろん、分かっているわよ。『コキュートス・出力上限撤廃』」


 一気に周囲の温度が下がり、周囲に満ちていた水属性が凍結効果によって氷属性へと変貌する。

 環境への干渉、および自分の有利なフィールドへと属性性質を変化。

 黒騎士と戦っていたころの彼ら彼女らとはもはや違う、短くも切磋琢磨した時間があり鍛え抜かれた技量があり。

 目を細め、吐く息が白く変化したことにより状況が変化したと悟る『白銀』は数歩下がった。


「あら、いいの? そうして下がっても」

「欺瞞、だな」


 断定、魔力視など近接職にとっても必須技能だ。

 もはや魔力的なトラップの看破など容易い、そう告げるように一歩踏み出して。

 その足が凍結する、直後に黒狼の一撃が迫っては。

 回避はやはり、ギリギリだ。


「欺瞞? 馬鹿をいいなさい、貴方相手に嘘を吐くほど私は弱くないのよ」


 『ウィッチクラフト』が杖を振るい術式を用いた、その時点で決まっている。

 無数のトラップが敷かれている、その事実は。

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