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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『終わらぬ夜の暗月』

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Deviance World Online エピソード7『トップを狙え』

 ロッソが最も得意とするのは爆炎だ、爆発こそがロッソが得意とする魔術である。

 だがこと殺傷能力や阻害能力に秀でているのは、間違いなく凍結に類する魔術だろう。

 理由は複数ある、だが最もらしい理由を述べれば。


「範囲魔術も多岐にわたる、けれども環境汚染魔術は中々ないわ。水の上位属性、つまり人間が正当な手段で支配下における魔術属性たる氷属性は利便性に富んでるの。さて、何でコレを解説したか分かるかしら?」

「『ファング』」

「『対価魔術』彼女の知識の程度に応じ、私の魔力出力の向上を求める。黒狼から聞いたけど制約と誓約だっけかしら? 昔の人は面白いモノを作るわねぇ、スキルの認識の拡張でこんな事も出来るんだから」


 氷の壁を即座に形成し、『白銀』のクラリスは総てを破壊し突き進む。

 だからどうしたと言わんばかりのパワープレイ、「嘘っ?」と言葉を漏らしながらロッソは杖を構えた。


 黒狼の鑑定スキルレベルでは怪しいモノの、だ。

 鑑定すれば分かるはずだ、彼女の強さの根源。

 ステータスと言うこの世界における絶対的な指標が、ソレを確認しなかったのは間違いなく黒狼の落ち度である。


 彼女のHPはおよそ2400、MPは4200の魔法戦士型。

 凡そではあるがSTRは470、VITは360、DEXは120、AGIは290、INTは310の完全タンク型でありながら決して遅くないという万能タンク。

 半端な特化でない分、付け入る隙は少なく十分な弱みもない。

 そのうえで厄介なのは、魔術も決して使えないわけではないという点。


「『エンチャント:フレイム』『円月虎・杓火吐来』」

「魔術も十分強いって、『ダークシールド』『カウンター』……!! ミスった!!」

「『エリアヒール』、ダメ。ジリ貧ね、『ショックウェーブ』『ドーン・ドライ』、随分と魔法耐性値が高いわね」

「『大切断』改めッ、『老狼の強襲』!!」


 黒狼が大盾を出し防ぐ、がダメージは発生する。

 盾のダメージカット量よりもクラリスの攻撃力が上回ったという訳だ、しかも耐久の低下もあり何度も受けきれるわけではないだろう。

 だがまだ耐えられる、そう踏んだ黒狼は盾を握り一歩踏み出し。


「『武芸斧術』『渾身の一撃』」

「マッ!? 捲くられ、クソッ!!」

「大丈夫!? って心配してる余裕もないわね、『アイスランスバレッド』!!」


 予想外にも程がある、インベントリを実践レベルで戦闘に組み込んでいるプレイヤーがいるなんて予想していない。

 だが出来なかった、と言うのは言い訳だ。

 黒狼の技量ですら出来るのだ、出来ないわけがない。


「チッ、『鉄壁』ッ!! 『シールドバッシュ』ぅ?!?」

「『フリーズ』、『クリエイト:ウォーター』!! 何やってるの!!!!」

「『猪突猛進』『ソードランス』!!」


 汎用スキルの応酬だが、それでも積み上げられた手段だ。

 無意味と断じるにはあまりに重く、けれどもやはり。


(見劣る、さすがに最強と比べりゃな)


 これはレオトールを比較に出しているのではない、アルトリウスと見比べても。

 ファーザー・ガスコンロと見比べても、一段階は劣る。

 されど高揚する意識が囁いていた、それでもまだ自分はそこに立てていないと。

 黒狼というトッププレイヤーは、それでもまだまだ弱い。


「戦えている、と。強いってのは違うんだぜ、ベイベー」


 自嘲、常に主張のない黒狼の言葉は同時に自分への叱咤や叱責を兼ねることもある。

 一気に展開される攻撃を回避し切ることなど不可能、さすがの黒狼にも限界は存在するわけだ。

 だが別段、回避し切る必要などないわけで。


 今度は右足を切断された、それこそ黒狼の狙い。

 『復讐法典:悪』は状態の共有と、ダメージの共有。

 その双方で用いることができる、即死さえしなければ最上級に匹敵するカウンタースキル。

 神の呪い、原初の法、新たな人類の原罪さえも織り込んだその概念的攻撃に贖うすべなどない。

 その効力は神々の栄光すらも、否定できなかった。


「『復讐法典:悪(アヴェスター)』」

「なッ、私の足が!!」

「あら、騒いでる場合かしら? 『コキュートス・千年牢獄(アポカリプス)』」


 もちろん、そんな場合ではない。

 小さく圧縮された氷結晶が一瞬で広がり、砕け散る。

 その攻撃は黒狼をも飲み込みながら周囲を飲み込み凍結させ、空間内の一切が移動することを拒む。

 重ねるは爆炎、最も得意な炎の術式。

 青ざめる『白銀』は魔法耐性を底上げするように武器を持ち替え、無意味と知る。


「『綴るは炎、熱、すなわち砂鉄に劣化銀たるアルミニウム(火種)【エクスプロージョン・テルミット】』」

「錬金術ッ!! 味方事巻き込む気!?」

「その程度で死ぬのなら、私はこんな魔術を使わないわよ」

「大正解ッ、『いあいあ、ニャルラトテップ。いあいあ、クトゥグア』」


 周囲を埋め尽くすように赤錆色の蹉跌が現れ、またもう一つの粉塵と混じれば燃え始める。

 目を焼くほどの炎、全身に浴びる熱気は数百数千度の熱源。

 炭化する端からステータスによる回復効果が生まれるとはいえ、熱量があまりにも高すぎる。

 装備品として完成されていなければ鎧すらも溶かしかねない超高温、余熱ですら人を焼くに余りある中で。

 黒狼は全身を焼かれながら、二ヤリを笑う。


 ニャルラトテップ、神の遺志の代弁者にして代行者。

 顔のない神、形のない神。

 開かれることのない空想世界の四柱、ドリームワールドの公王たる君主。

 あるいは、これ以上なく混沌を望むもの。


 願うは炎、爆炎に包まれた深淵の神たるクトゥグアの権能。

 生ける炎たるソレ、27光年先より祝福を与えたまえ。

 敵であるニャルラトテップを焼きながら、この身に力を降ろしたまえ。


「『ーーー(我、すなわち【神殺し】なれば)』」


 宣誓魔術、誓いを立て己に力を降ろす魔術。

 ニャルラトテップを招来し、その権能を焼かせる宣誓によりクトゥグアをその身に招来する。

 狂気の沙汰、地雷原でタップダンスを行う蛮行にして蛮勇の所業。

 されど、成功してしまっては仕方がない。

 そして招来出来てしまえば、あとは何時かの様に。


「『ーーー(この魂が【神殺し】なれば、身の座にクトゥグア(【生ける炎】)を代入すれば。俺はつまり、神に至る)』」


 神を殺せるのは神だけだ、そして仮にでも神を手に掛けたのであれば。

 その穢れ切った罪深き魂は亜神にいたる、至極真っ当な道理。

 魂が神であり、肉体が一時ばかりの幻想に等しいとはいえ神の力によって包まれているのならば。

 この一瞬だけは、黒狼は神に至る。

 亜神、へと。


「汚染しないで頂戴、というわけでその力を徴収するわね」

「『ーー、っておいおい!? 今の流れは超パワーで圧倒するところだろ!!」

「『老狼の急襲』、『立体軌道X(クロス)』ッッツツ!! 倒すべきは、ソッチ!?」

「逆、なんていっても聞かないわね? 『深淵:クトゥグア』『エクスプロージョン・アフーム=ザー』」


 熱が弾け、凍結する。

 半径10メートル以内の熱という熱が停止し、行動が許されなくなった。


 旧支配者アフーム=ザー、神の名は『ほかなるもの』であり『つめたきもの』の主。

 クトゥグアの子でありネクロノミコンに記載がある顕現した神の名称、冥王星に居座るモノ。

 親たるクトゥグアの力を対価とし、その権能たる概念を一時的に降臨させ魔術に仕込む。

 たったそれだけの攻撃で、さながら時間凍結と誤認するほどの惨状が現れた。


「悪いわね、ここからしばらく私の時間よ」


 動けるのはロッソだけ、ロッソ以外はすべてが止まっている。

 ただその空気の流れすらも、そのすべてが。

 僅か10メートル四方の空間だけではあるが、けれどもロッソが掌握していた。

 一瞬の停滞、時間にしては10秒もない程度の時間だろう。

 けれども魔術師にとっての10秒はやはり、決定的に致命的で。


 つまりは、必殺が訪れる。

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