表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/156

第19話 イーリス、結太と桃花に真実を告げる

 突如(とつじょ)として、イーリスの口からこぼれた言葉に、結太は耳を疑った。

 いつも、はつらつとしている彼女からは、とうてい想像出来ないような言葉だったからだ。



 イーリスは、『死にたくない』と言った。


 ――聞き間違いなどではない。

 ハッキリとそう言った。


 だが……『死にたくない』とは、いったい……?



 普通に考えれば、彼女に〝死が近付いている〟――ということだろうか。

 だから、『死にたくない』と。そういう言葉に繋がるのか?



(イーリスが死ぬ……? まさか。ジョーダンだろ? あんだけ元気なヤツが?……さっきだって、サンドウィッチやらおにぎりやら、呆れるほど食ってたじゃねーか。あれが、もうすぐ死ぬかもしんねーってヤツの食欲か? あり得ねーだろ)



 そうやって、笑い飛ばそうとしたのだが。


 心臓が、うるさいくらいに大暴れしていて、そのせいで、吐き気までして来て……。

 とてもじゃないが、笑えるような状態ではなかった。



(……嘘だろ? 『死にたくない』って……それ、どーゆー意味なんだよイーリス? 死ぬなんて……おまえから、一番遠いとこにある言葉じゃねーか。なのに――……)



「――楠木くん?」


 ふいに。

 呼び掛けられた結太は、ハッとして顔を上げた。


 視線の先には、小首をかしげ、心配そうにこちらを窺っている、桃花の姿があった。


「あ……」


 『マズい』と思った瞬間、部屋からイーリスが走り出て来て、結太と目が合うと、


「結太。……いつから、そこにいたの?」


 探るような目つきで訊ねられ、息が詰まった。

 慌ててごまかそうとしたのだが、『あ――』と言ったきり、言葉が出て来ない。


 その様子を見て、彼女は全て覚ったのか、一度、辛そうに目をそらし、


「どーせ、聞いてたんでしょ?……でなきゃ、そんな顔しないわよね……」


 弱々しい声で漏らすと、フッと笑った。


「あ……。イーリス、オレ……」


 立ち聞きしてしまった後ろめたさと、知ってしまったことの重大さに、胸が詰まる。

 結太は何を言っていいかわからず、沈黙してうつむいた。


 様子のおかしい2人に、桃花は戸惑い、どう声を掛けていいのか、わからずにいたのだが。


「こうなったら、しょーがないわね。嘘をついてることにも、疲れちゃったし……。結太、桃花。あなた達にだけ、本当のことを話すわ。――聞いてくれる?」


 今まで見たことがないほどの穏やかな笑みを浮かべ、イーリスが口を開いた。

 結太と桃花は、複雑な表情で顔を見合わせた後、彼女に向き直り――どちらからともなく、こくりとうなずいた。




 イーリスの部屋へと移動した三人の間には、しばらく、重い沈黙が横たわっていた。


 イーリスは窓辺で外を眺め、結太達に背を向けて立っている。

 結太と桃花は、ベッドに並んで腰掛けていた。


 いつもであれば、並んで座っているだけでも、お互い緊張してしまい、ソワソワと落ち着かない気持ちになってしまうのだが……。


 二人共に、今は、照れている場合ではないと承知している。

 イーリスが再び話し始めるのを、ひたすらに待っていた。



「……アタシね、もうすぐ死んじゃうみたいなの」


 重苦しい沈黙を破り、イーリスがポツリと漏らす。

 既に、その言葉を聞いていた結太は、深くうつむくのみだったが、初耳である桃花は、『えっ!?』と短い声を発した後、呆然とイーリスを見つめた。


 窓から外を見ていたイーリスは、くるりと半回転し、


「ねえ、結太。病院で、初めて会った時のこと、覚えてる?」


 簡単なクイズでも出すように、結太に向かって問い掛ける。

 結太は顔を上げ、まっすぐイーリスを見返してうなずいた。


「ああ。もちろん、覚えてるよ。……病院の屋上で、おまえは手すりの上に立って、大笑いしてたよな」

「ええっ?」


 桃花が驚きの声を上げる。

 イーリスはクスクス笑って。


「そうそう。――アタシね、一年に一度、あの病院で健康診断するのが、恒例(こうれい)になってるの。母が亡くなってから、義父(ちち)が、そーゆーのに神経質になっちゃってね。そこでちょっとでも微妙な結果が出ると、大騒ぎしちゃって、精密検査を受けさせられるのよ。毎年、特に問題なしって結果が出てたんだけど、今年は、ほんのちょっとだけ、良くない数値が出ちゃったらしくて。泊まり掛けで、あちこち精密検査受けさせられて……結太と出会ったあの日、その結果が出たの。〝全て異常なし〟って」


「……えっ!?」



 〝全て異常なし〟――?



 それでは、さっきのイーリスの告白は何だったのだ?


 ……まさか、からかっていただけ?

 それとも、(たち)の悪いドッキリ?


 様々な想いが胸の内でぐるぐると回り、結太と桃花は、複雑な表情をイーリスに向けた。

 だが、彼女は真剣な顔に戻ると、


「その結果を知らされて、アタシ、ホッとしちゃって。……だって、そーでしょう? いつも異常なかった健康診断で、ちょっととは言え、正常値じゃない結果が出て……義父(ちち)から、真剣な顔で『精密検査を受けろ』だなんて言われたら、誰だって心配になるじゃない。……だから、結果が出るまでは、気が気じゃなかったわ。もしかして、悪い病気なのかしら? アタシ、死んじゃうのかな?……って、何日もろくに眠れなかった。なのに、結果は〝異常なし〟でしょ? なんだか、拍子抜(ひょうしぬ)けしちゃって。その解放感もあって、屋上に出て、思いっきり大笑いしちゃったの。『アタシは生きてる!』『まだまだ、死んだりしないわーーー!』って、心の中で叫びながら……ね。そこを結太に見られてたなんて、思いもしなかったから……かなりビックリしちゃったけど」


 フフフと、悪戯(いたずら)っ子のような笑みを浮かべ、イーリスは結太に視線を移した。

 結太は彼女の本心がつかめず、戸惑いの表情を向ける。


 イーリスは、再び結太から視線を外すと、抑揚(よくよう)のない声で。


「これでもう、何の心配もないって、思ってたんだけどなー。……楽しい日常が、これからも続いてくんだって……そう思ってたのに」


 つぶやいた後、イーリスの両目から、大粒の涙がポロリとこぼれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ