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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第5章

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第18話 結太ら、イーリスの行動に首をかしげる

 イーリスが別荘の方へ歩いて行ってしまうと、残された者達は、それぞれ顔を見合わせ、首をかしげた。


「なんだぁ、イーリスのヤツ? 午後からの撮影は国吉さんに任せるって……頼まれたのは自分だろ? ずいぶん無責任だな」


 結太が呆れて顔をしかめれば、


「まあまあ、そうおっしゃらずに。お嬢も、何か、思うことあっての行動でしょうし」


 フォローするように、国吉が結太をなだめる。

 それでもまだ、彼は納得が行かないのか、


「思うことあって、って……いったい何ですか? 国吉さん、あいつがどーして、あんなに自分勝手なことばっかすんのか、理由がわかってるんですか?」


 ムッとした顔つきで、責めるような口調で訊ねた。

 国吉は片手を頭に置き、


「いや……。理由は、私もわかりませんが……」


 数回頭を掻いた後、ごまかすように薄く笑う。

 東雲は、結太の肩にポンと手を置き、


「結太、落ち着けって。藤島様は必要に迫られて、別荘に戻るしかなかったんだと思うぜ?」


 親指と人差し指で顎を挟むと、訳知り顔でうなずいた。


「は? 『必要に迫られて』……って、何のことだよトラさん?」


 顔をしかめて問う結太に、東雲はうんうんとうなずきつつ、


「そんなん、決まってんだろ? 結太ももう少し、女性の気持ち、ってもんを考えてやらにゃいかんぜ。いいか、結太? 藤島様はなぁ……(もよお)しちまったんだよ! 便意か尿意かまではわからんが、催しちまったから、急いで別荘に戻る必要があったんだ!――なっ? そんなら納得出来んだろ?」


 自慢げに言い切ると、東雲はニヤリと笑う。

 側で彼の話を聞いていた桃花は、たちまち真っ赤になって、



(しっ、東雲さんったら――! そんなこと、大声で言い切らないでーーーっ! イーリスさんが可哀想だよっ。もし、ホントにそーだったとしても、そんなことそんな大声で……デリカシーなさ過ぎるよぉおおおっ!)



 同じ女性の立場として、心の中で抗議していた。

 しかし、そんな桃花の思いも知らず、結太は『ああ』とうなずいて。


「なるほどな! トイレに行ったってことか!……そっかー。そんじゃー、急がなきゃいけねーよなー。あっはっは!」


 理由がわかって(まだ、そうと決まったわけではないのだが)スッキリしたのか、結太は大声で笑い飛ばした。

 結太までもがと、桃花は少々ガッカリして、



(うぅ……。男の人って、ホント……デリカシーないんだから……)



 やはり心でつぶやくと、非難するような視線を、そっと結太に送る。

 知らぬうちに、桃花の自分に対する評価が、僅かにマイナスされたことにも気付かず、結太はすっくと立ち上がって、


「やっべー! オレも、トイレ行きたくなって来ちまった! ちょっくら行って来る!」


 慌ててビーチサンダルを履き、別荘目指して駆け出した。


「あっ、おい! 結太っ!」


 東雲が声を掛けたが、聞こえなかったらしい。あっという間に、後姿が小さくなった。


「……ったく。どーせ、重箱やらなんやらを片しに行くついでに、一度は別荘に戻るつもりだったのによ。あいつもなかなか、そそっかしーよなぁ」


 呆れたようにつぶやいて、東雲はやれやれと腕を組む。

 鵲はニコニコ笑いながら、


「トイレ行きたくなっちゃったんなら、仕方ないだろ。生理現象は、待っちゃあくれないからね。早め早めに行動するのは、むしろ常識だよ。――ってことだから、みんなで、一度戻るとしようか。伊吹様も、午後に備えて日焼け止めを塗り直したりとか、しなければいけないでしょう? 女性の肌は、男よりデリケートなんでしょうから」


 そう言うと、重箱を素早く重ね、風呂敷に包み始めた。

 桃花はハッと我に返ると、


「わ、わたしもお手伝いしますっ」


 慌てて、使用済みの紙皿を集め、ゴミ入れ代わりのポリ袋に、ポイポイっと放り込む。

 それを見た東雲と国吉も、割り箸を集めたり、レジャーシートの上を、ウェットティッシュで拭いたりと、後片付けを開始した。





 別荘に着いた結太は、猛スピードで、一階にある共用トイレに駆け込んだ。

 それぞれの部屋にも、風呂トイレはあるのだが、二階に行くより、一階にあるトイレの方が、当然、用は早く済ませられるからだ。


 結太は用を足して出て来ると、『ふぅ~。セーフセーフ』などとつぶやいて、二階の部屋に向かった。

 午後はまた、長く外にいることになる。日焼け止めを塗り直しておこうと思ったのだ。



 部屋で念入りに日焼け止めを塗り、さあ、また海に行かなきゃなと、廊下に出ると。

 どこからか、微かに……人の泣き声のようなものが聞こえ、結太はビクッとして立ち止まった。



(え……? この泣き声、まさか――?)



 すすり泣くような声は、隣の部屋――イーリスが利用している部屋から、漏れて来ているようだった。

 見ると、ドアが少しだけ開いている。


 結太はゴクリと唾を飲み込むと、足音を立てないように、そうっと隣の部屋へと近付いた。

 いけないことだと思いつつ、壁に背中をくっつけ、そろりそろりと、部屋の中を窺う。


 イーリスは、ベッドにうつぶせになり、両手で顔を隠すようにして泣いていた。



(……なんなんだ、いったい? どーして、泣いたりなんか……?)



 イーリスの泣いている理由が思い当たらず、結太は困惑した。


 彼女が泣かなければいけないようなことが、昼にあっただろうか?

 確かに、少し言い合いはしたが、泣くほどのことなど、何もなかったはずだが……。



 しばらくの間、どうしていいかわからず、結太が立ち尽くしていると。

 泣きながら、イーリスが何やらつぶやいた。


 瞬間、結太の心臓は凍り付く。

 あまりにも、思い掛けない言葉だったからだ。



 イーリスは、すすり泣きながら、こうつぶやいていた。


 『いや……。アタシ、まだ死にたくない』――。

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