第8話 結太と桃花、今後の相談をしにイーリスを訪ねる
咲耶が龍生から、〝関係を進めることへの有無〟の決断を請われていた頃。
結太と桃花は、イーリスと今後の予定を話し合うため、彼女の部屋に向かっていた。
龍生からは、
「俺と咲耶は、向こうの島に渡ったら、三日ほどは帰らない予定だ。咲耶がそうすることを受け入れてくれたら、だが……。受け入れてくれなかった時は、俺だけ島に残り、咲耶はこちらに帰す。――そういうことだ。俺達が帰らなかったら、そちらはそちらで、三日間のことを話し合って決めてくれ」
と聞かされている。
結太も桃花も、『三日ほど』という言葉には、かなり動揺したのだが。
『二人は婚約者同士なのだから』と、己に強く言い聞かせることで、どうにか気持ちを静めることが出来た。
しかし、このことを伝えたら、イーリスは一人で大騒ぎするだろう。
東雲に『アタシも連れて行って!』と、無茶なお願いをする可能性だって、ないとは言えない。
そういう流れに持って行かないためにも、まずはしっかりと話し合い、イーリスの気持ちを、〝二人の恋の進展具合を探る〟ことから、別のことへ向ける必要があるのだ。
(まあ、いくらイーリスが頼んだところで、トラさんは、龍生の命令以外聞くワケねーんだけどさ。でも……三日間だもんなぁ。そんなに長ぇーこと、イーリスから〝二人の進展具合〟がどーのこーのって話、聞き続けんのは正直キッツイし……。やっぱ、イーリスの気を他にそらせるか、考える余裕なくなるくれーに、三日間のスケジュールを楽しい予定でいっぱいにするかしか、ねーと思うんだよな。……けど、三人で楽しめることって、何なんだろーな? シュノーケリングは、泳げない伊吹さんには出来ないし、ビーチバレーは一対二じゃ不公平だし、かと言って、三人で打ち合うだけ……ってのも、すぐ飽きちまいそーだし。オレと伊吹さんだけなら、昨日みてーに貝殻拾ったりとか、岩場で磯遊びとかでも、ジューブン楽しめると思うんだけど……イーリスはそーゆーの、好きそーには見えねーしなぁ?……う~ん……。ヤベーぞ。三人で三日間楽しく過ごす方法なんて、全っ然浮かんで来ねー。あーーーッ、どーしたらいーんだぁああーーーーーッ!?)
そこまで考えると、結太は自分の頭をグシャグシャと掻きむしった。
結太の斜め後ろを歩いていた桃花は、それに気付くとビクッと肩を揺らし、
「どっ、どーかしたの楠木くんっ?……もしかして、頭痛くなっちゃった?」
ためらいつつも、心配そうに訊ねる。
結太はハッとなって振り返り、
「あ、いやっ、ごめん! 考え事してたら、一瞬『うわー!』ってなっちまって……」
苦笑などしながら、慌てて謝った。
「『うわー』……?」
不思議そうに小首をかしげる桃花に、結太は『可愛いなー』と心でつぶやき、デレっと顔を緩ませたが、どうにか顔を引き締めると。
「いや、その……。三日間、どーやって三人で過ごせばいーのかなーって考えてたんだけどさ。全然、面白そーなこと浮かばなくて、『うわー!』ってなっちまったんだ。……伊吹さんは、三人で、何かやってみたいこととかある?」
「え?……う、うぅ~ん……。ごめんなさい。すぐには浮かばない、かも……」
申し訳なさそうに言った後、桃花はしょんぼりと肩を落とす。
結太は焦って、『謝ることねーって! オレも浮かんでねーんだし』と大きく首を横に振った。
そうやって、話しながら歩いているうちに、二人はイーリスの部屋の前までやって来た。
結太がドアをノックすると、すぐに『はーい』と返事があり、数秒と経たずに、イーリスがドアの隙間から顔を出す。
「どーしたの、二人揃って?……あ。まさか……『オレ達、付き合うことになった』なーんてゆー、報告だったり?」
探るような目で二人を交互に見つめ、イーリスはニヤリと笑う。
結太も桃花も真っ赤になって、
「バッ、バカかッ!? んなワケねーだろッ!?」
「そっ、そーですよっ! そんなことあるわけないですっ!」
それぞれが、思いきり首を振りつつ否定する。
そして内心で、『あるわけない……か……』『〝んなワケない〟。……即答されちゃった……』と、互いの言葉に傷付いたりしていた。
「えー? じゃあ何? これから何かするの?」
廊下に出て来たイーリスに、腕組みして訊ねられ、我に返った二人は、
「あ……。いや? そーゆーんじゃねーんだけど。えーっと……これからの予定を立てたくてさ。イーリスの希望とかあったら、聞ーとこーと思って」
「うっ、うん。イーリスさんは、何して遊びたいですか?」
気持ちを立て直し、どうにか愛想笑いを浮かべた。
イーリスは『遊びたいことねぇ……』とつぶやくと、腕を組んで考え込む。
しばらくの後。
何か思いついたかのように、パンと両手を打ち合わせ、
「そーだわ! アタシ、みんなと撮影会がしたい!」
瞳を輝かせて、そんなことを言い出した。
「……は?」
「……撮影……会?」
撮影会とは、どのようなもののことを言うのだろう?
聞いたことはある気がするのだが……詳しいことは、二人にはわからなかった。
たぶん、写真を撮り合ったりする遊び(?)のことだと思うのだが……。
思いも寄らなかったイーリスの希望に、結太と桃花は戸惑いつつ顔を見合わせ、ほぼ同時に首をかしげた。




