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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第5章

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第4話 結太、龍生の前で自主的に土下座する

 結太は今、龍生の部屋で正座し、深々と頭を下げている。


 ……まあ、要するに、土下座しているワケなのだが。


 べつに、龍生に強要されてのことではない。

 部屋に入ったと同時に、(すみ)やかに、自主的に土下座したのだ。



「……何の真似だ?」


 龍生は腕組みして結太を見下ろし、およそ感情のこもっていない声で訊ねる。


「すまんッ!! (わり)ぃ!! ごめんなさいッ!! 昨夜、『ヤッた』かどーか訊きに来たのは、イーリスと賭けをしてたからでしたッ!――オレはッ!……オレはこんな野次馬みてーなこと、ホントはしたくなかったんだけどっ! イーリスが『秋月くんだって男よ?』とか、『初体験の自慢話をしたいって思ってるかもしれない』とかゆーもんだから、ついムカッとして、『龍生をそこら辺の男と同等に考えんな』ってやり返しちまってっ! そしたらイーリスが、『秋月くんにも普通の男性と同じような願望や欲望はあるに決まってる』とか、オレが龍生のこと、『完璧人間だと決めつけてる』とかって言って来て……。その後、『そんなことない』『そんなことある』の応酬(おうしゅう)になって、しまいにゃイーリスのヤツ、『じゃあ賭けをしましょう』って言い出して……。で……その……なんかわかんねーうちに……龍生と保科さんが、〝キス以上のことをしたか〟どーか……オレが訊いて来る……って流れに、なっちまっ……て……」


 話が後半に行くに従い、結太の声はだんだん小さく、途切れ途切れになって行った。

 龍生はわざと大きなため息をつき、デスクの椅子を引いて腰を下ろすと、両手両足を組み、


「……で? その賭けは、誰がどうしたら勝ちになるんだ? おまえは勝ったのか? 負けたのか?」


 さして興味はなかったが、賭けのネタにされただけでは気分が悪いと、勝敗の結果を訊ねた。

 結太はそろそろと頭を上げると、


「いや……それがさ。ハッキリしねーっつーか……。うやむやになっちまった……ってことで、いーと思うんだけど……」


 龍生と同じく腕を組み、首をかしげたり遠くへ目をやったりした後、『う~ん』と唸って考え込む。


「うやむやとは、どういう意味だ? 賭けは成立しなかったのか?」

「うん……。だからさ。二人が『キス以上のことをした』ってことと、それ以上の情報をオレが訊き出せたら、イーリスの勝ち。訊き出せなかったら、オレの勝ち。……で、『キス以上のことをした』ってことだけ訊き出せたら、伊吹さんの勝ち……ってことに、なってたんだけど……」


「伊吹さん? 彼女も、賭けに加担していたのか?……意外だな。そんなことをするような人だとは、思っていなかったが――」


 龍生はピクリと眉を上げ、言葉通り、意外そうに目を見張った。

 結太は慌てて、


「ちっ、ちげーって!! 伊吹さんは、イーリスにムリヤリ引き入れられたよーなもんで! 本人は絶対、賭けなんかに加わる気なかったんだって! イーリスに自分の名前出された時も、すっげービックリしたよーな顔してたし、驚いたよーな声も上げてたし! だからっ、オレとイーリスはともかく、伊吹さんだけは! 頼むから、誤解しねーでやってくれっ!!」


 好きな人の無実の罪を晴らそうと、必死に言い(つの)る。


 自分よりも、好きな人が誤解されることの方が辛いのだろう。

 結太らしいなと、龍生はフッと笑みをこぼした。


「……つまり、『キス以上のことを()()』かどうかを訊き出せたら……というのが、賭けだったのだから、訊き出せたのが、『キス以上のことを()()()()()』では、賭けにならない。無効だ……と、おまえは考えたわけだな?」


「う……、ああ……まあ、そーゆーこと……です」



 それは少々、詭弁(きべん)――こじつけのような気もするが。

 結太がそう思い、イーリスもそれで納得したというのであれば、〝賭けは無効〟でいいのではないだろうか。



(俺が賭けに加わっていたとしたら……その説明では、絶対に納得してやらんがな)



 心の内でつぶやくと、龍生はニヤリと口の端を上げた。


「……龍生?」


 何を笑っているのだ? と問いたげな顔で、結太は龍生をじっと見つめる。

 龍生は『何でもない。気にするな』と言いながら、ひらひらと片手を振ってはぐらかした。



(……しかし、本当に困ったものだな。藤島さんをこのまま放って置くと、好き放題やられて、俺達の関係にだって、ヒビが入ってしまう恐れもあるんじゃないのか?……ただでさえ、昨日のキスのことで、咲耶は〝キス以上の関係〟になることに(おび)え、異様に俺を警戒している。俺と、距離を置こうとしている(ふし)すらある。その上、藤島さんが咲耶に余計なことを吹き込んだりしたら……)



 チッと舌打ちする龍生を目にし、結太はギョッとして息をのんだ。

 舌打ちなどという下品なことを、彼がするところを見るのは、生まれて初めてだったからだ。



 だが、そんなことで、結太が軽いショックを受けていることなど、気付いてもいないのだろう。

 龍生はふいっと視線を戻し、


「なあ、結太。俺と咲耶の進展具合を、賭けのネタにしたことを……悪いと思っているんだよな?」


 (こぶし)(あご)に当て、探るような目つきで訊ねる。

 結太は『も、もちろん!』と答えながら、ブンブン首を縦に振った。


「そうか。それなら……当然、俺の頼みを聞いてくれるな?」


 再び訊ねた後。

 彼はニィィ……っと、今まで見たこともないタイプの笑みを浮かべた。

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