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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第4章

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第11話 イーリス、『桃花に話がある』と呼び止める

 一番最初に席を立ったのは、咲耶だった。


 彼女は隣の席の桃花に向かい、『行こう、桃花』と手を差し出す。

 桃花も素直にうなずいて、差し出された手を取り、席を立った。


 部屋から下りて来た時と同じように、再び手を繋ぎ、ダイニングルームから出て行こうとした二人に、


「ちょっと待って! 桃花に話があるの。部屋には、咲耶一人で戻ってくれない?」


 すかさず、イーリスが声を掛ける。


「はあ!? 話だと? 話とは何だッ!?」


 くるりと振り返った咲耶は、イラ立ちを隠そうともせず、イーリスを睨み付けた。

 イーリスは両手を腰に当て、ムッとしたように睨み返すと。


「話は話よ! 咲耶には関係のない話!――いーでしょ、話くらいしたって? それとも、桃花に話がある時は、いちいちあなたの許可をもらわなきゃいけないの? そんなわけないわよね?」


 強気に言い返され、さすがの咲耶もぐっと詰まった。

 険悪な雰囲気に焦った桃花は、


「あっ、あの、咲耶ちゃん。わたしも、イーリスさんと話したいことがあるの。悪いんだけど、先に部屋に戻っててくれるかな?」


 咲耶の袖を、手を繋いでいる手とは違う、もう片方の手でつまみ、上目遣いでお願いする。


 桃花に頼まれると、咲耶も弱い。

 渋々といった感じで『わかった』とうなずくと、一人でダイニングルームを後にした。



 少し離れた場所で、三人のやりとりを見守っていた結太は、


「おい、イーリス! 伊吹さんに話って、どんな話なんだ?」


 何となく気になって、思いきって訊ねると。


「結太にも話があるの! ちょっとこっち来て!」


 イーリスは顔だけ後ろに向け、結太を軽く手招きした。

 結太は『えっ、俺にも?』と目を丸くしてつぶやいたが、しつこく手招きされ、(いぶか)しく感じつつも、のろのろと近付いて行った。


 イーリスは、桃花と結太、三人が揃ったところで、今度は一人で出て行こうとしていた龍生の背に、


「待って、秋月くん! アタシ達、ちょっと三人で話したいことがあるんだけど……ダイニングルームを出たところの右側に、リビングルームみたいな部屋があったわよね? 窓際に、アンティーク調のソファとテーブルが置いてある部屋。あそこ、使わせてもらってもいいかしら?」


 龍生は彼女に顔を向け、


「ああ、別に構わない。好きに使ってくれ」


 それだけ告げると、さっさと部屋に戻って行ってしまった。


 結太は眉間にしわを寄せ、イーリスをじっと見つめる。

 自分と桃花に、何の話があるのか不安だったし、ろくな話ではないような、そんな予感がしたからだ。


 イーリスはパン! と両手を打ち合わせると、


「よし! じゃあ、移動しましょうか。秋月くんにはOKもらったし、問題ないわよね?――ねえ、そうでしょ東雲さん、鵲さん?」


 そう言って、皿を片付けたり、テーブルを拭いたりと、(せわ)しなく働いている二人に顔を向けた。


「へっ?……あ、ああ――。坊ちゃんがよろしいってんなら、いいんじゃないですか? なあ、サギ?」

「あ……う、うん。坊に了解をいただいたんですから、大丈夫ですよ」


 イーリスは満足げにうなずいて、


「じゃあ、行きましょう!」


 ニコリと笑い、二人を先導するようにダイニングルームを出ると、リビングルームに向かった。




「――で、結太と桃花はどう思う? 二人の考えを聞かせて?」


 リビングルームの一人掛けのソファに座ると同時に、イーリスから意見を求められ、結太と桃花はきょとんとした。

 いきなり『考えを聞かせて』と言われても、何のことやらさっぱりだ。


「考えって、何についてだよ? 肝心な部分抜かして話すなよな。意味わかんねーだろーが」


 イーリスの向かい側の、やはり一人掛けのソファに座り、結太は不満げに腕を組む。

 桃花は一人で二人掛けのソファに腰を下ろすと、結太に同意するようにうなずいた。


「うん……。わたしも、何についての考えかわからないから……話しようがないんだけど……」

「ええっ、わからないの? ニッブいわねー、二人とも! 訊きたいことって言ったら、ひとつしかないでしょ? 秋月くんと咲耶のことについてよ!」


 イーリスは、さも当然とでも言うように主張し、ソファにふんぞり返って、腕と足を組んだ。

 更に続けて、


「もーっ! あれだけ派手に、目の前で意味深な展開見せられて、少しも気にならなかったの? まったく、信じられないわー!」


 などと、ブツブツ言っている。


「意味深な展開って……。まあ、気になるっちゃあ気になるけど……」

「うん……。気にはなるけど、ムリヤリ聞き出すわけにも行かないし……。咲耶ちゃん、真っ赤になってたし、すごく緊張してる感じだったから……」


 結太と桃花が目配せし合い、控えめな意見を述べると、イーリスは組んでいた手と足を(ほど)き、両手をテーブルについて|身を乗り出す。


「そーよ、そこよ! 真っ赤になってたり緊張してたり、秋月くんが近寄ろうとすると『来るな』とか『今はまだダメ』とかって……どー考えても怪しいでしょ?」


「……怪しい?」

「怪しい……って?」


 察しの悪い二人に、イーリスは呆れ顔で、深々とため息をついた。

 再びソファにふんぞり返って、両手両足を組み、


「怪しいったら、決まってるじゃない! 秋月くんと咲耶は、アタシ達が海でいろいろあった時に、この別荘で……その、二人っきりの時に……とうとう……」


「とうとう……?」


 ここまで言えば、さすがにピンと来るものがあるだろうと思っていた、イーリスの当ては外れた。

 無垢(むく)な顔でオウム返して来る結太と桃花を、珍しい生き物でも眺めるような目つきで見返す。


「だ、か、らッ!! あの二人、アタシ達が別荘にいない間に、とうとう一線を越えちゃったに違いない――って言ってるのよッ!!」


 部屋中に響き渡ったイーリスの主張に、結太と桃花は大きく目を見開き、数秒の間静止した。

 それから互いの脳内で、イーリスの言ったことを反芻(はんすう)し、〝一線〟の意味に思い至ると。


「え…………ええええええーーーーーーーッ⁉」


 部屋中どころか、廊下にまで響き渡ってしまうのではないかと思われるほどの音量で、二人同時に絶叫した。

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