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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第3章

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第10話 東雲と鵲、勢い余って砂浜に倒れ込む

 鵲に飛び掛かられ、バランスを(くず)した東雲は、鵲もろとも砂浜に倒れ込んだ。

 東雲は『――っ、ギャッ!』と短い悲鳴を上げた後、


「サギッ!! てめー……っ、いきなり何してくれてんだッ!? んな、裸同然のカッコで飛び掛かって来んじゃねーよっ、気色悪(きしょくわり)ぃーなッ!!」


 これでもかと言うくらいのしかめっ面で、自分の上に(おお)(かぶ)さっている鵲の体を、ありったけの力でもって押しのける。

 鵲は、目にうっすらと涙を滲ませながら、


「酷いッ!! 酷いよトラッ!! いくらなんでも、『気色悪い』はないだろッ!? 俺達、小学校上がる前からずーーーーーっと一緒の、幼馴染なのにぃいいいッ!!」


 傷付いたような顔で、押しやろうとする東雲の両手首を掴んで訴える。


「幼馴染だろーがなんだろーが、気色悪ぃーことは気色悪ぃーんだから、しょーがねーだろーがッ!? 裸同然の男に抱きつかれて喜ぶ趣味なんざ、俺にはねーんだよッ!!」


「わーーーーーッ!! 〝裸同然〟〝裸同然〟って、そんな何度も言わなくたっていーだろッ!? 俺だって、好きでこんな恥ずかしい格好してるわけじゃないんだッ!! ジャンケンで負けちまったから、仕方なく穿()いてるだけなんだからなぁああッ!?」


「わーかってるよッ!! おめーがジャンケン弱くて助かったって、こっちは心底ホッとしてるよッ!! お陰で、そんな恥ずかしー海パン穿かずに済んだんだからなぁッ!!」


「うわぁあああああッ!! 酷いよトラぁあああああッ!! 俺だって、俺だってこんなの穿きたくなかったのにぃいいいいいいッ!! これじゃただの罰ゲームだよッ!! 酷いよ酷いよあんまりだぁああああああッ!!」


「ダーーーーーッ!! だっからうっせーって!! いー加減どけよサギッ!! おめーの汗と涙がポタポタポタポタ落ちて来て、気色悪さ倍増してんだろーっ――がッ!!」


 最後のひと声を掛け声にして、ようやく東雲は、鵲の体を押しのけることに成功した。

 苦々(にがにが)しい顔で起き上がり、手や、体中についた砂粒を、両手で払い落とす。


 幼馴染に『気色悪い』と言われたあげく、押しのけられたショックから、すぐには立ち直れずにいるのか、鵲はまだ、砂浜に倒れたままだ。

 そんな彼を見下ろして、東雲は、うんざりした調子でつぶやく。


「ハァ――。ったく。(ひで)ぇめに()ったぜ。……けど、まー……兎羽(とわ)がこの場にいねーのが、せめてもの救いだったな。あいつがいたら、『キャーッ! 男同士が裸同然の姿で抱き合ってるぅ~っ! ヤダもうっ。恥ずかしいけど、ス、テ、キ~~~ッ!』……とかって、大騒ぎしてたとこだ」


 彼らの様子を、側でオロオロしつつ眺めていることしか出来なかった結太は、聞き捨てならない東雲の台詞に、思わず『へっ?』と間の抜けた声を上げた。



(トラさん、今……『兎羽がこの場にいないのが、せめてもの救い』とか……『あいつがいたら、大騒ぎしてしてるところ』……とかって、言ってなかったか?……うん。言ってたよな?)



 結太は東雲をまじまじと見つめ、首を(ひね)る。



 〝兎羽〟とは、東雲が溺愛(できあい)している、彼のたった一人の妹の名だ。

 現在(いま)は結婚し、苗字は〝堤〟に変わっているが――。


 実は東雲は、内心『早く離婚しねーかな』と願ってしまっているほど、筋金入りのシスコンなのだった。



「なー。トラさんトラさん」

「――ん? なんだぁー結太?」


「え……っと。今、トラさん……『兎羽がこの場にいたら大変だった』――みたいなこと、言ってなかったか?」

「あ?……あー……、まー…………言ったけど?」


 たちまち、東雲の表情が曇る。

 その顔を見て、訊いちゃいけないことだったのだろうかと、結太はしばし逡巡(しゅんじゅん)した。


 ……が、口から出てしまったことは取り消せない。芽生(めば)えてしまった疑問の種も、すぐに()み取ることは出来ない。

 結太はゴクリと(つば)を飲み込んでから、


「なんで? どーして兎羽さんがここにいたら、大騒ぎしてたんだ?」


 思い切って、ストレートに訊ねてみた。


 東雲は、『マズいこと言っちまったな』とでも思っているかのような困り顔で、結太から目をそらす。

 腕を組み、しばらくの間、首をあちこち傾けたり、眉を寄せたり、目をつむったりして、落ち着かない様子で考え込んでいたのだが。


 仕舞いには覚悟を決めたのか、まっすぐ結太の目を見つめ、


「これ、兎羽にはぜってーゆーなよ? 結太に知られたのがバレたら、兎羽に縁切られちまうかもしんねーからな……」


 なんとも頼りない顔つきで、ため息をつく。

 結太は、『絶対誰にも言わない』と約束し、東雲の答えを待った。


 東雲は大きな体を丸め、結太の耳元に口を寄せると、


「……実はな、兎羽……昔っから、〝BL(ボーイズラブ)〟ってもんが好きらしくてな? 男同士がすっげー仲良さそーにしてっと、それだけで興奮して、イロイロ想像っつーか、妄想したりとか、しちまうらしーんだよな」


「……うぇえッ!? 兎羽さんがBL好――っ、うっ、ムグッ!!」


 思わず大声を上げてしまい、結太は、焦った東雲に両手で口をふさがれた。

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