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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第3章

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第9話 従者ら、水着に着替えて回帰する

 国吉から『お嬢のご命令です』と声を掛けられた東雲と鵲は、水着に着替えるため、数百メートルほど先にある、鬱蒼(うっそう)とした森に消えた。



 それから数分後。

 森から姿を現した三人は、結太らのいる場所へと、ゆっくりと戻って来ていた。


 女性二人の元へ行く勇気もなく、一人ポツンと、彼らが戻って来るのを待っていた結太は、いち早くそれに気付くと、


「あっ。おーーーいっ!! トラさんサギさーーーんっ!! 早く早くーーーっ!! さっさと、さっきの続き始めよーぜーーーーーっ!!」


 両手に持ったビーチボールを頭の上に掲げ、大声で呼び掛ける。

 すぐさま、東雲の『おーーーうっ!』と返す声が聞こえて来たが、鵲からの返答はなかった。


 鵲ならば、返事はしなかったとしても、手くらいは振ってくれそうなものなのだが。


 不思議に思い、結太はじーーーっと、歩いて来る彼らを注視していた。

 すると、普通の姿勢で、普通のペースで歩いて来る東雲と国吉に比べ、鵲の様子が、少しおかしいことに気付く。


 鵲は、大きな体を丸め、前屈(まえかが)みになって歩いて来ていた。

 その上、両手を体の前で重ね、モジモジとしていて、妙に恥ずかしそうだ。歩くペースも、いつもよりかなり遅い。

 その証拠に、前を歩く東雲と国吉との距離が、十メートル以上は離れてしまっている。



(んん?……どーしたんだろ、サギさん? 具合でも悪くなっちまったのかな?……けど、だったらトラさんが、放っとくはずないしな。トラさん……は、なんか、めっちゃ楽しそーに、ニヤニヤ笑いながら歩いてくっけど……。何なんだ、この二人の差は?)



 ビーチボールを胸の前で持ち、じーっと鵲の様子を見守っていた結太の頭に、『ていっ』という掛け声と共に、手刀が振り下ろされた。


(いて)ッ!!」


 その拍子に、両手から離れたビーチボールが、砂上へポトリと落下する。

 結太は片手で頭をさすりながら、いつの間にか隣までやって来ていた東雲を振り仰いだ。


「ひっでーなー。いきなり何すんだよ、トラさんっ?」


 (うら)めしげに睨み付けると、東雲はハハッと笑って、


(わり)ぃー悪ぃー。結太がボーっと突っ立てるもんだから、つい手が出ちまった。……で、どーしたんだよ? まさか、熱中症とかじゃねーだろーな?」


 結太の頭をガシガシと撫で回した後、ひょいっと顔を覗き込む。

 頭を振りつつ、『いーや。ちげーよ』と答えてから、結太は鵲のいる方へ視線を投げた。


「それよりさ。サギさん、どーかしたのか? 一人だけ、すっげーノロノロと歩いてくっけど……。前屈みになってるし、腹でも(いて)ぇーのかな?」


 鵲は、百メートルほど先で立ち止まり、ひたすらモジモジしている。

 東雲はニヤリと笑い、結太同様、鵲に視線を向けると、


「いや。腹痛じゃねーよ。……けど、まあ……さすがにありゃー、恥ずかしーだろーなぁ。俺も、断固拒否したし?」

「へっ?……『恥ずかしー』? トラさんも、『断固拒否した』……?」


 意味がわからず、結太は目をぱちくりさせた。

 東雲は、まだニヤニヤ笑いながら、両手を腰に当てつつ、鵲を眺めている。



(トラさんが、『断固拒否した』……って、何のことだ? おまけに、『恥ずかしー』……って……)



 そこで結太は、あることに思い至り、東雲が着替えて来た水着――海パンへと目をやった。

 東雲が穿()いているのは、ハーフスパッツタイプ。体にぴったりとフィットする、水の抵抗を受けにくい、膝上丈の水着だ。


 ついでに国吉へと目をやると、彼はボックスタイプの海パンを穿いている。

 ハーフスパッツタイプよりも丈の短い、男性用下着のボクサーパンツに近いデザインの水着だ。やはり、体にフィットするタイプなので、水の抵抗を受けにくいとされている。


 そして再び、鵲へと視線を戻す。

 まだ遠くにいるせいで、あまりハッキリとは見えないが……どうやら、あれは……。


「…………トラさん」

「ん? 何だー、結太ー?」


「もしかして……サギさんが穿いてるのって……」

「……フッ。やーっぱ気付いちまったかー?……そう。あれは――」


 東雲は、腰に手を当てたまま仁王立ちし、わざと大声で。


「あれはなーーーっ? サギの穿いてるのはなーーーっ! プールや海で穿いてるヤツは滅多(めった)に見掛けねーーーっ、ローライズのぉーーーっ、肌の露出のめーーっちゃ(たけ)ぇーーーっ、逆三角形のぉーーーっ、〝ブーメランパンツ〟、って呼ばれてるものなんだぜぇええええーーーーーッ!! 恥っずかしーよなぁあああーーーーーっ!? ボディビルダーじゃあるめーしっ、あんなん穿いてるヤツ、そーはいねーよなぁああーーーーーッ!?」



 東雲が言い終えた後、海岸には、数秒ほどの沈黙が横たわった。



 ……が、次の瞬間。


 シンとした場面を切り裂くように。



「うぉおおおおおーーーーーーッ!! トラッ、よくもあんな大声でぇええええええーーーーーーーーッ!!」


 周囲に響き渡るほどの声を張り上げながら、鵲がまっすぐに駆けて来た。優しい人柄の鵲からは、ついぞ聞いたことがないような、ドスの()いた声だ。

 ただでさえ強面(こわもて)の顔が、赤鬼かと錯覚してしまうほどに、恐ろしく変貌(へんぼう)してしまっている。


 その場にいる者全てが、呆然として固まっている中。

 もの凄い勢いで、東雲目指して突進して来た鵲は、『酷いッ!! 酷いよトラぁああ~~~ッ!!』と、情けない声を上げながら、東雲に飛び掛かった。

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